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初めての仕事

私達に最初に課せられた訓練内容は

走り込みという、ただ走るだけの訓練。

10時になるまでの間だ走るだけ。

時間は8時、2時間走るだけで良い。


「ほっほっほっほ」

「はぁ、はぁ、はぁ」


私は全く疲れを感じること無く走るけど

ナナちゃんはちょっと辛そうになってる。


「無理しなくても良いんだよ? ナナちゃん」

「む、無理じゃ無い……から!」


ナナちゃんは付かれてるような表情を見せるけど

それでも走ることを諦める事は無い。


「私だって……つ、強くなるの!

 リンちゃんと、い、一緒に居るために!」


それが、ナナちゃんが頑張ってる理由……なんだ。

私と一緒に居るために頑張るって…

うん、少し、いや、凄く嬉しい言葉だった。

私と一緒に居たいから頑張る。


「大丈夫、ナナちゃんが強くなくても私は」

「知ってる、うん、り、リンちゃんは

 私が弱くても、い、一緒に居てくれる、はぁ、はぁ。

 で、でも! あ、足を引っ張るのは嫌なの!

 ここで諦めたら、私が、リンちゃんと

 はぁ、はぁ、い、一緒に居るのが、嫌に、な、る!」


必死に顔を上げて、前を見据えて走る。

汗が滝の様に溢れてるし、息も異常に荒いし

限界なのはよく分かるけど、諦めてない。


「私は……はぁ、はぁ、あ、諦めない」

「いーや、ここはゆっくり休んでね」

「え、エディーお姉さん…」


軽く周囲を回ってきたエディーさんが

全く疲れてない様子で声を掛けて来た。

私達と同じ位に走ってるはずなのに

体力が全然残ってるみたいだ。


「良いかな? 努力は1日にしてならず。

 1日で無理しても良い事は無いよ?

 僕達騎士に重要なのは1日に詰め込むことじゃなくて

 毎日やり続けること、体力なんかは特にね。

 1日無理して頑張ったって、次の日筋肉痛とかで

 頑張れなくなっちゃったら意味ないでしょ?

 万全な状態でやる努力が1番効果的だしね。

 だから、少し自分に甘くなっちゃっても良いんだよ」

「で、でも、こ、このままだと私、リンちゃんの邪魔に」

「邪魔にはならないよ、君が一緒に居てくれるだけで

 リンちゃんにはきっと、凄い助けになるんだ。

 それより、君が無茶してしんどい思いをしちゃう方が

 リンちゃんを心配させて困らせちゃうんじゃ無いかな?」

「うん、無茶しないで、ナナちゃん」

「で、でもぉ」

「それに、ただ少し休むだけだよ?

 何も今日1日中、もう動くなって訳じゃ無い。

 しっかり休んだ後、もう一度頑張ろ?」

「う、うん…」


エディーの説得でなんとかナナちゃんが休んでくれた。

その姿を見て、私も少し安心出来た。

その後、私は2時間休まずに走る。


「凄い体力だね、リンちゃん」

「ん、体力には自信があるの」


2時間ずっと走り続けても私は対して疲れなかった。

と言うか、少し走るのを遅くすれば

逆に体力の方が回復するからお腹が空くまで走れる。


「いやぁ、2時間ぶっ通しで走れるのは本当に凄いよ」

「お、お前もだろ、え、エディー」


当たり前の様にエディーもずっと走ってた。

他の騎士さん達は何度か休憩してたけどね。

つまりずっと走ってたのは私とエディーだけだ。

ジャッキーさんも限界で1時間30分でリタイアだ。


逆に私とエディーは2時間ぶっ通しで走っても

まだ体力が残ってる程度には余裕がある。

やっぱりエディーは凄いんだって分かる。


「そりゃ、これでも僕は女騎士最強の女だからね。

 そりゃ、ソールティアス様には劣るけどさ」

「ソールティアス様の強さは別次元だからな」


そして、そんなエディーでも勝てないという

ソールティアスさんは本当に強いんだと分かる。

あまりそんな雰囲気は感じ無かったけどね。

むしろ優しそうな雰囲気さえ感じた。


「よし、10時だ、皆、鍛錬は終わったかな」

「は、はい!」

「よし、では次は交代で見張りを始めてくれ」

「は!」

「エディーはリンとナナを連れて

 いつも通りの見張りを行ない

 民衆への対応などを教えてあげて欲しい」

「はい! 了解です!」

「では、精進するように!」

「は!」


その言葉の後、再びソールティアスさんは館へ帰る。

きっと書類のお仕事をするんだろう。


「じゃ、行こうか」

「うん」

「エディー、しっかりと教えるんだぞ?」

「勿論さ、僕は仕事の時はしっかりするから」

「普段からしっかりしろと思うが

 まぁ、仕事の時にしっかりするならまだマシか」


その会話の後、私達はエディーと街へ向った。

街へ到着すると、街の人達がやってくる。


「エディーさん、今日は見張りなんだね」

「はい、いつも通り何かありましたら

 僕にお伝えください」

「頼りになるね、じゃあ早速だけど

 その小さな子達は?」

「えへへ、最近出来た僕の妹達です」

「妹!?」

「違う、騎士見習い」

「う、うん、騎士見習いです。

 最近お世話になることになったの」

「騎士見習い? 小さいのに偉いねぇ」


お団子ヘアーのおばさんが私達の頭を撫でてくれた。

やっぱり大人に触られると抵抗がでる。

あまり慣れてないからなのかも知れない。


「でも、どうしてだい?」

「実は彼女達、元奴隷らしくて」

「ど、奴隷!? バナージに奴隷を買うような奴が!」

「いえ、ジャッキー達が依頼で向った先で

 偶然出会ったんですよ」

「あ、外かい、ならまだ安心かしら」

「でも、こんな小さな子達を奴隷扱いするような

 そんな残忍な人達が外に居るなんてね」


色々な街の人達は私達の心配をしてくれた。

大変だったねと労いの言葉を掛けてくれる人も居るし

バナナとかの果物をくれる人も居た。

ちょっと荷物が多くなってきて

何度かエディーの部屋へ戻ったりもした。


「頑張ってね! 騎士見習いさん!」

「うん、頑張る」

「すごく強くなって見せるよ!」


そんな会話を何度かしてる最中にある大声が聞えた。


「山賊だぁ!」

「山賊? 舐められた物だね、行こう!」

「うん!」


その声を聞いて、私達は山賊がでたという場所へ向う。

そこには30人位の男の人達が居て

1人が女の子を人質にしてた。


「分かってんだろうな、金をよこせ!」

「た、助けて! 助けてぇー!」

「イツカちゃん!」

「……うん」


そんな光景を見たエディーが弓矢を取り出す。

そして、人混みに紛れながら近付いていき

最前列近くへ身を隠して接近した後

一気に体を出して、矢を放った。


「あぎ!」


エディーが放った矢は人質を取ってる男の腕を穿ち

痛みで女の子が解放される。

同時にエディーは動き出して、彼女を確保した。


「な! 騎士!? ソールティアス家の!」

「バナージの平和を乱そうなんて身の程を知れ!」

「あが!」


女の子を私達の近くに連れてくると同時に

即座に近付いてきた男を投げ飛ばし、制圧する。


「クソ! このアマが!」

「ふん!」

「ぎぁ!」


凄い、10人同時に飛びかかってきた山賊を

全て無傷で捌いて撃退してる。

背後から飛んで来た矢もあっさりと弾き落としてる。

周りの人達に被害を出さないように

最大限の立ち回りをしてる。


「クソ! ならこのガキを!」

「こっちに!」


1人、山賊が私達の方へ向ってくる。

多分、わざとだ、わざと1人抜かした。

私の実力を見て見たいと思ったんだろう。

仮に私が失敗しても即座に対処出来るように

きっとすでに準備はしてるんだと思う。

でも、私は負けるつもりはない。


「ふ!」

「な! あぎ!」


捕まえようと伸ばしてきた手を避けて

私はあの山賊の顔面を殴って吹き飛ばした。


「なんだあのガキ! 大人1人吹き飛ばしやがった!」

「へぇ、デュラハン倒したのはやっぱり本当だね」

「く、クソ! なんだこれ!」

「なる程、これがバナージの騎士か」

「ボス!」


山賊達が道を空けて、かなり屈強な人が出て来た。

体中傷だらけで、凄いムキムキだ。

身長もかなり高い。でも、髪の毛は無い。


「ボスね、山賊の頭目かい?

 なら話が早い、拘束して終わらせよう」

「くく、女が、雑魚を屠った程度で粋がるなよ」


そう言って、あのムキムキの人が剣を抜いた。

その動きを見て、エディーも剣を引き抜く。


「この秩序正しいバナージで血飛沫は似合わない。

 だから、殺しはしないよ」

「貴様の血飛沫で、その秩序正しいバナージを

 汚らしく飾ってやろう」


2人が構えると同時に一気に動き出した。

勝負はまさに一瞬だった。


「ば、かな……」


エディーがあの筋肉の人が反応出来ない速度で攻撃し

一撃で意識を奪った。

あまりにも鋭い一撃であり、対処も反応も何も出来ない。

ジャッキーさんも強かったのはそうだ。

私が必死に挑んでも攻撃を当てる事が出来なかった。


「君達とは鍛え方が違うんだよ、鍛え方がね。

 僕が目指すのはソールティアス様だ。

 君程度に苦戦しちゃ、夢のまた夢だしね」


だけど、エディーには勝てる気がしないと感じた。

家のだらしない姿とは全然違う。

とても気さくで、私達に対して常に笑顔を向けてた

エディーだったけど、倒した山賊に向けた視線は違った。


まるで偶然目に入った、道ばたで死んでる

少し大きな虫を見る視線の様だ。

視界に入ったから見たが、大して興味が無い。

そんな視線で、その奥底はとても冷たい。


「そ、そんな……ぼ、ボスが一瞬で!」

「さて、後は君達だね」

「に、にげ、あぐ!」

「1人も逃がさない、

 バナージの平和を乱した悪党を

 僕は決して逃がす事はしない」

「ひ、がふぁ!」


そのまま、一瞬の間で山賊達を撃退する。


「クソ、クソ! このガキさえ!」

「私は大人は嫌いだ」

「あが!」

「特にお前達みたいな奴は大嫌いだ」

「なんだよ、なんだよこの、ぎあ!」

「殺すのは良くないみたいだから殺さない。

 本当なら殺したいけど、仕方ないから殺さない。

 だから、剣は抜かない。でも、殴り倒す」

「ひ! あぅ!」

「やり過ぎは駄目だよ、リンちゃん」

「ん、手加減してるから」

「目付き、かなり恐いんだけど……」

「私、大人は嫌いなの。

 特にこう言う大人は殺したくなる位嫌い」

「殺すのは駄目だよ?」

「ん、分かってる。だから、剣は抜いてない」

「クソ、にげ!」

「逃がさないって言ってるでしょ?」


逃げようとした山賊の足をエディーは撃ち抜く。


「うがぁぁあ!」

「ば、化け物だ! 強すぎる!」

「何言ってるのさ、失礼しちゃうね。

 良いかい? 僕らが強いんじゃない。

 君達が弱すぎるだけだよ」

「が……は……」


その言葉と同時に私とエディーが山賊を倒した。

私達が倒した2人が、最後の山賊であり

周囲には意識を失った山賊達が倒れてる。


「さ、急いで拘束しようか」

「ん、でもその前に」


ナナちゃんがあの子をどうしたのか気になって

私は視線を移動させる。


「あ、ありがとうございます!」

「私は何もしてないからお礼は良いよ。

 良かったね、イツカちゃん、怪我が無くて!」

「う、うん! 本当にありがとう!」

「気を付けてね!」

「うん! ナナも気を付けてね!」

「ありがとー!」


ナナちゃんは親の所に

人質にされてた女の子を連れて行ってたんだ。

もうすでにそのイツカちゃんとも仲良くなってそうだ。


「っと、拘束完了」

「山賊が暴れてると聞いたんだが」

「あぁ、遅かったねジャッキー」


10人程の騎士達がやってきた。

リーダーはジャッキーさんみたいだ。


「なんだ、エディーが居たのか。

 なら来る必要は無かったな」

「いやいや、来てくれて嬉しいよ。

 数が多くてね、運ぶのが面倒だったんだ。

 ほら、パワーある君達が運んでよ」

「この数か……相変わらずの手際だな。

 しかし、何人か小さな拳で殴られてるような痣があるが。

 これは、もしかしなくてもリンちゃんがやったのか?」

「そうだよ、1人なら大丈夫だと思って

 強さを測る為に戦わせたんだけど

 まぁ強いのなんの、だから、何人か担当して貰ってね

 本当に強かったよ、こりゃ本当に将来有望だね」

「なる程な」

「で、こいつが山賊のリーダーね。

 筋肉しか無かったけど」


山賊のリーダーを指差して馬鹿にしたような言葉を告げた。


「やれやれ、そんなのが出て来てたのか。

 もっと警備を増やした方が良いかも知れないな」

「まぁ、都市の外を探る人員も欲しいかもね。

 ま、それは後にして後よろしくー

 僕はこれから2人の研修を再開するから」

「あぁ、分かったよ、後は任せろ」

「そう来なきゃね、まぁ当然か、遅かったし」

「それは言ってくれるな」


そんな会話を最後に私達は再び見回りを再開した。

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