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第1話 メイ=キャロテル

 世界は狭い───そんな詩が何処かにあったような気がしなくもない。普段私達が暮らす世界というのは、狭く見えても実は広いものなのだ。狭いと思えてしまうのは、今の世界にはインターネットなるものが普及され、世界中の何処かにいる人とも交流ができてしまうからだ。しかし私達がそう感じてしまうのはそれだけではない。私達が暮らす大陸、仮に『第三大陸』と名付けるとしよう。今現在、小林和真という少年が夢に向かって走り続けているのがそこに当てはまる。今の私達の世界と言えば『第三大陸』だけを指しているのだが、かつての世界は『第二大陸』、そして『第一大陸』とまで広がっていたのだ。広大ながらも、どの大陸でも平和な暮らしで溢れていた。しかし今となっては第二、第一の大陸から人は居なくなってしまったのだ。これは、まだ第一大陸に人が存在し、三英雄、勝利の剣士が幼かった頃のお話───




 時は進行中のお話から約10年前に遡る。その頃まではまだ、第一大陸にも平和な暮らしがあった。そこにとある貴族の幼なくも元気な女の子がいた。

「お母様!!お庭に白鳥がいます!!」

「あらあら、あれは白鳥ではなく、アヒルですわ」

「でも、童話に出てきたアヒルは白ではなく黄色だと表記されていました!!白鳥はその名の通り白い鳥なのではないのですか?」

「アヒルの中には白い羽を持つものもいるのですよ。白い鳥というのは白鳥だけではないのです。それによく見てください?あの鳥、思ったより大きいですよ?」

「...本当ですね。私、もっと鳥さんのこと知りたいです!!」

「あら、そういうことなら、書斎に鳥さんについて書いてある本が沢山ありますわ。読みにいきましょうか」

「はい!!...と言いたいのですが、これから剣術の稽古を受けて参りますので、帰宅してから読ませていただきます」

「あらそうなの?分かったわ、探して貴方の部屋に置いておくわね」

「ありがとうございます!!」

彼女の名前は、メイ=キャロテル。貴族の親から産まれた子で、好奇心旺盛だ。そんな彼女は、まだ5歳でありながら騎士を目指していた。始めは貴族として産まれた子だから、騎士を目指すと聞いて両親も驚いていたが、彼女の強い気持ちに押され、今では騎士になる夢を応援している。そして、反対する者もいたのだが、彼女は街の民と同じように自由に過ごしていた。貴族の娘を街に野放しにするなんて有り得ない、と声を上げる者もいたが、そこには大きな理由があった。

「今日こそあの剣術をものにしてやりたいところですが...まだまだ課題が多いですね...」

いつも通り剣の扱いについて考えながら街を歩いている。彼女の住んでいる街は平和だ。その証拠として、無防備である貴族の娘がのこのこと街を歩いていても、悪い輩は近寄らない。他の地域に比べ、事件の件数が圧倒的に少ないのだ。そういうことで、特に護衛もなく、街の中を自由に歩いているのだ。しかしながら、そんな平和な街でも事件が起こる時は起こる。

「だからよぉ、あんたがぶつかったせいで服が破れちゃったの、分かる?修理費払えよ、高かったんだぞこの服、なぁ?」

「も、元から破れてたし、大体ぶつかってきたのはそっちからで───」

「あぁ?!こっちが悪いとでも言うんか?」

「ひぃっ!!」

大男がひ弱そうな男を脅している。そう、こういったことが無いこともない。脅されて金を取られたり、暴行が起こることもある。この手の事件はどの世界でもどこの地域でも絶えることなく起こる。例えどれだけ平和だとしても...だ。

「おやめください!!貴方の方からぶつかっていたのは私も見ています!!今回は貴方の不注意でしょう!!」

「...なんだこのガキが」

「お金を脅して取る行為は許されません!!大体、ぶつかった程度では服は破れませんし、ぶつかる程度で破れるような服は高級でもありません!!貴方に非があるはずです!!」

「言ってくれるじゃねぇか...なんだ、よく見たらこのガキ、貴族の娘じゃねぇか。こいつ拐ったら金になりそうだな」

「お、お嬢さん、僕なんかに構わず逃げて...」

「逃げることはできません!!私は貴方のような悪い人は許せないのです!!」

「まぁ黙って言う通りにしな貴族の娘さんよぉ。痛い様にはしねぇ、ちょいとばかし金稼いで貰うからよ───」

彼女は近くにあった木の棒を手に取ると、大男の顔面目掛けて渾身の一撃をぶつけた。

「貴族の娘だと思って舐めないでください!!」

「...んのガキがぁぁ!!」

大男が彼女目掛けて襲いかかる。──が、彼女はその攻撃をひらりと躱した。大男が彼女の方に向き直ろうと顔をこちらに向けたところで、彼女は大男の顔を目掛けて横薙ぎを放つ。その攻撃は、大男の下顎に命中しただけであったが、大男は白目を向いて倒れてしまった。

「す、凄い...あんな大きな男を一人で倒してしまうなんて...」

「下顎を強く叩くことで、頭部を大きく揺らして脳震盪を起こしました。大きい人でしたので通用するかは分かりませんでしたが、上手くいって良かったです」

「そ、そんな芸当を狙ってやったって言うのかい...?」

「いつこの人が起きるか分かりません。力の強そうな人を呼んで来てくださいませんか?」

「あ、えっと、分かりました!!」

彼女が自由に過ごしていたもう一つの理由は、知識とセンスから繰り出される彼女の戦闘技術だった。まだ5歳という年齢でありながら、純粋な剣術であれば大人でも勝てる者が少ないほど彼女は強かったのだ。たまに起こる事件をこうして彼女が解決してしまう、なんてことも少なくはない。

「───って、もうすぐ稽古の時間じゃないですか!!...あぁどうしましょう、遅刻してしまいます...」

そんなことを思いながらも、また一つ、この街の為になれたと考えて嬉しい気持ちとなった。こうして彼女の力も借りながら、この街は平和な街であり続けていた。そしていつまでもこの街の平和は続くであろう、と、誰もがそう考えていたのだ。

中々本編の続きを書いていない癖にいよいよ外伝を書き始めてしまいました。しかし外伝とはいえ、本編に一切関係が無いと言うわけではありませんので、こんなお話があるんだぁ程度に読んでいってください。

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