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第二十話 学園生活今後のお話、あくまでも予定だからな

 学園生活三日目、魔術研究開発学科、通称アイラ研の教室には既にファルモア達、チームの五人が登校していた。


 始業を告げるベルが鳴るまでまだ時間がある。


 ファルモア達は昨日の話題で話が盛り上がっていた。


「それにしても浮遊魔術とか、未だに信じられないんだけど」


 ティアナが俺を突っつきながらそう言う。


「確かに。これが表に出たら、とんでもない騒ぎになるな。空を飛ぶ悲願まであと一歩ってところだし、ギルドも黙っちゃいないだろう。俺の親父なんかは大将をギルドに監禁して研究させかねない」


 ブルーは笑いながらとんでもない事を言う。


「止めてくれ。新しい魔術は、タイミングを見て学園が発表する事になってるんだ。誰にも言うなよ、言ったら俺がお前を切るぞ」


 そう言って鯉口を切る。


「わかった、冗談だよ。ったくおっかねーな」


 ブルーがそう言ってチカの後ろに隠れた。


「ハハっ、わかればよろしい」


 そう言って刀を納める。


「まあ、そういう事だからみんなも秘密厳守で。あ、命の危険がある場合は言っても良いから、その代わり誰に言ったか教えてね」


「ったく、物騒ね。私達は魔術しか使えないんだから、やめてよねそういうの」


 ティアナがそう言う、他のみんなも同意したのか頷いている。


「俺とチカは魔術も得意じゃないしな」


 ブルーの意見にチカが同意する。


「この魔術...いや、これから研究する魔法と魔術は、それくらい危険なものでもあるって事だ」


 みんなのテンションが下がるのがわかる。


「でも、それくらいの価値はある。それに、護身術なんかは俺がみっちり教えるから。自分の身を守れるくらいはね」


「それは良いわね」


 俺の提案にみんな肯定的だ。


「それより、浮遊魔術を見てみたいんだけど」


 ミサキがそう言う。それにみんなが同意する。


「わかったよ」


 俺はそう言って立ち上がると、魔力可視化の魔法をかける。


 すると、俺の胸の辺りがまぶしく光る。


「おお!」


 それを見てみんなが驚く。


 そのまま全身に魔力を纏うイメージをすると、全身が光りだした。


 その光景にみんながまた驚いていたが、それを横目に浮遊するイメージをすると、体が若干浮き上がる。


「おおおおおぉぉぉぉぉ!!」


 目を見開いたり、口をあんぐりさせたり、忙しそうだ。


 俺は浮いたまま移動をする。それに合わせて、「ああ」だとか「おお」だとかいちいち驚いている。


 そうこうしていると、始業のベルが鳴ると同時に、アイラ先生と学園長が教室に入ってきた。


「こらー、席に座れー」


 アイラ先生がそう言う。学園長はこちらを見ながらニコニコしていた。


 俺達は急いで着席する。


「あー、ここにはお前達しかいない。前の方の席に座るように」


 そう言われたので、みんな立ち上がり、ぞろぞろ最前列に着席する。


「では、今後のカリキュラムを説明する」


 アイラ先生はそう言って、紙のプリントを配る。


「基本的にはそこに書いてある通りだ。午前中は座学、午後からは実技、これはどの学科も変わらない。ただし、魔術系の場合は、午後も座学の場合もあるし、冒険者学科などは朝から実技の場合もある。そしてここは特別編成となる」


 特別編成とな?


「座学については一般教養のみとし、他は実技となる。詳しくはそこにもあるが、週七日の内、座学は一日目の午前中だけだ。他は実技の時間に割り振られるが、実技と言っても私は魔術を教えるつもりはない。実技の時間の半分は私が受け持つ魔術研究開発に充てる。もう半分は学園長が顧問をしてくださる魔法・魔力研究の時間だ」


 学園長が頷いてニコッと微笑む。


 おお、学園長自ら教壇に立つのか...あ、いや、教壇じゃなく研究の顧問か。


 ふと疑問に思ったことを質問してみる。


「あの~、質問良いですか?」


「どうぞ」


 学園長が返事をしてくれた。


「面接のときに言った条件には、自由行動の許可をお入れていたのですが、すべてのカリキュラムに適用されますか?」


「ええ、基本的にはそのつもりです」


 学園長がニコニコしながら答える。その答えにアイラ先生が少し焦っている。


「が、学園長、それでは...」


 アイラ先生の発言を、手を上げて制すると、にっこりしながら、


「しかし、すべての時間を自由にしてしまえば、この学園に通う意味がないでしょう。最低、アイラ先生の受け持つ時間はそこに集中してもらいたいですね。私の受け持つところは自由で構いません。私自身も毎回顔を出せるわけではありませんから」


「わかりました。でも、アイラ先生の魔術研究の時間もある程度自由にさせてもらいます。俺にも考えがあるので」


「そこはアイラ先生と相談して決めてください」


 よし、学園長の言質は取った。あとはアイラ先生との交渉次第だな。


「それから...」


 学園長の発言が続く。


「魔力研究に外部講師を招く予定です。ま、先方の都合もあるので、いつになるかはわかりませんが、その時はみなさん出席をお願いしますよ。事前に告知はしますので」


 お?外部講師?そんな事をして大丈夫なのか?


 俺がそんな事を思っていると、ミサキが学園長に質問する。


「外部講師は魔力についての知識があるのでしょうか?」


 ナイス質問。


「それはわかりません。ただ、彼女はとてもユニークな考えの人で、魔力の概念も受け入れられるはずです。その上でこの未知の分野を一緒に発展させていけるのではないかと考えています」


「ユニークな考えとはどんな考えでしょうか?」


 ミサキは突っ込んで聞いている。


「例えばですが、魔術には人によって向き不向きがあるとか、一日に使える魔術の回数はその使用する魔術によって変化するとかですね。これについては、魔術士ギルドでもそうではないかと疑っていた所ですので、この考えはその内主流になるでしょう。まあ、彼女はさらにその事を数値化できると言っているのですが、それについては今もギルドで検証しています」


「なるほど、学園長はその考えに賛同されていると?」


「概ねは。何故そうなるのかはわかりませんがね。昨日のファルモア君との話し合いでピンと来ましたが、魔術の使用回数が、個人の魔力によるのならあり得る話です。魔力の行使が精霊に由来するのなら、回数制限はおかしいでしょ?」


 おお、学園長、顔に似合わず柔軟な考えだ。


 思わず感心してします。


 その答えに、ミサキも頷いて肯定する。


 アイラ先生は憮然としている。


「他にも面白い話がありますよ。聞きますか?」


 学園長は、その外部講師のおもしろエピソードを知っているようだ。


「はい、お願いします」


「彼女は精霊が見えるらしいです。ギルドでは上位魔術の講師をお願いしていますが、教え方が独特なのです。例えば、ある魔術を行使するには、空の彼方の精霊を呼び寄せること。別の魔術の場合は地の底の精霊を呼ぶ事など、具体的に精霊の居場所を指定してみたり、『今あなたの肩にとまっています、一緒に力を合わせて魔術を行使しましょう』などと言ったり。更には、『この五本の指にはそれぞれの別の精霊が今今す』と言って、それぞれの指から別系統の魔術を発現させたりと、まあ、実際お呼びしたときに話を聞くと良いと思いますよ」


 学園長の話を聞く限り、もの凄い人のようだ。あと、女の人のようだ。


 何となく何か引っかかるが、まあ良い。


「あの、私は魔術があまり得意ではありません。魔術基礎などの座学が省略されると研究についていけなくなると思います」


 チカがそう発言する。


 確かにそれはそうだ。俺も母さんから聞いている程度だし、ティアナも直感型に見える。ブルーはギルドで師事したって言うし、ミサキもしっかりしていそうだが。


 五人中三人は座学がもっと必要なのでは?と思う。


「いや、大丈夫だ。私の魔術研究の時間である程度講義する。通常大勢に向けてやるものをこの人数だ。別途時間を割く必要もあるまい」


 なるほどそういう事か。


「わかりました」


 チカも納得したようだ。


「他に質問は?なければ続きを説明する」


 アイラ先生はこちらを見るが、特に質問は上がらなかった。


「座学は基本この教室で行う、週初めは必ずここに登校するように。他の時間は別棟に行くように。別棟には研究室が九室あるが、今は全部埋まっている。本当は一年かけて何室か空ける予定だったが、この事態は急遽決まった事だ。お前たちを面接した部屋がお前たちの研究室となる。これは暫定措置だ。正規の研究室が空けばそこに移る。ここまで良いか?」


 全員頷く。


「魔術研究は午前、魔力研究は午後という事になった。これは、学園長の予定を加味してだ。これに異存はないな?」


 俺以外のみんなは頷いて肯定している。


「先生さっそく相談ですが」


 俺はそう言って手を上げる。


「何だ?」


「まず一つ確認です。魔術研究は必ず別棟でしなければなりませんか?」


 アイラは怪訝な顔をする。


「そうだ、本棟での魔術研究は禁止されている」


「じゃあ、学園の外、例えば、城壁の外とかは?」


「それじゃあ私が見ていられない。上級生の研究開発も私が受け持っているからな」


「そうですか。では、相談ですが、魔術研究でフィールドワークを取り入れてほしいです。あの謎の幕に向かって魔術を使っても、実際の効果がわかりずらい。街中で使用する魔術は街中で、外で冒険や、戦闘するときに使う魔術はそれに近い環境で実験しないと効果がわかりずらいと思います」


 アイラは難しい顔をして、


「私がついていけないと言っている。上級生を見ている人間がいなくなるからな」


「...上級生を見る必要がありますか?」


「当たり前だ、私が見てアドバイスしたり、指摘してやらないと、研究が進まなくなる」


「別に毎日外に出るわけじゃありませんよ?偶にです。それくらい上級生も大丈夫でしょう?何なら俺達だけで外に行っても良いですが」


「それは駄目だ。機密流出の可能性が有る場合は私か学園長が同行する」


「それは困りましたね。じゃあ、上級生に頑張ってもらいましょう、こっちの都合優先で。その代わり、我々は成果を出しますから」


 そう言ってウインクしてみる。


 アイラ先生は眉間に手をやって、大きくため息を吐く。


「まあ、アイラ先生。一先ずファルモア君の提案を受け入れようじゃありませんか。成果が上がれば良し、もし成果が上がらなければこちらの提案に従ってもらいと言う事で。それでいいですね?」


 学園長が聞いてくる。


「はい、必ず成果を上げて御覧に入れます」


 俺は元気よくそう返事をする。


「...わかった。上級生には私から伝えておく。くれぐれも勝手に外に出ないように」


 よし、これで結構融通が効くようになる。


「はい、勿論です」


「では次の説明に移る。ファルモアが言っていた他の学科への見学や体験だが、事前申告で調整して行うように。飛び入り参加は認めない他の生徒の手前もあるからな」


 まあしょうがないな。


「それと、別棟の研究室使用はいつでも自由に使える。休日でも夜間でもだ。その場合は別棟入口から入るように。本棟へは立ち入らないようにする事」


 へー、だからあの壁が有るのか。


 でも、俺はあまり関係無いな。夜は城壁の外にいるし、休日は家の手伝いだしな。


「ここまで良いな?それでは、説明は以上となる。それと今日の予定だが、この後一般教養の座学を行う。その後は上級生の研究を見学して終わりとなる」


 ほう、この後は座学か。どんな授業内容か楽しみだな。


 その後の、研究室で上級生が何を研究しているか楽しみでもある。

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