0話(一) 過去編
ある日の真昼間の出来事。
二人の兄弟はどこかの路地裏にいた。
そこはとてもキレイといえる場所ではないく。
ぐちゃぐちゃになった虫の死骸、茶色く枯れているコケなどがあった。
路地裏は誰一人なく、兄弟だけがそこにいた。
それもそのはず。
この路地裏にたどり着くにはかなりの苦戦をもちいる。
まず、幅が三十センチほどしかないビルとビルの間を通り。
そして次に間違えることなく迷路のような複雑な道を通らなくてはいけないからだ。
兄弟達は運良くここに来れたというわけでない。
兄が路地裏の通路を知って来れたのだ。
一方弟は何も知らず、兄に連いてこいとだけ言われてここへ着いた。
たどり着いた時は何もないと弟は思っていたが、路地裏の少し奥に行くと怪しさ全開なドアがあった。
ドアはビルにはめ込むかのような形で設置されている。金属製で作られているドアはとても頑丈そうだ。
何のためのドアなんだろう?と弟が考えていると隣にいた兄がドアの付近に近づいた。
ドアの少しサビてるところに気づくと兄はそこを擦り始めた。
なぜ兄はサビを擦っているのだろうと弟は考えて約10秒——
サビていたところから手のひらサイズの暗証番号が出現した。
(は?いや、え?意味がわからない...)
色々とツッコミたい弟だが、わけわからずただ真剣に擦っていた兄に対して何も言えない。いや、何も言いたくない...
出現した暗証番号に驚きもしない兄は番号を入力しはじめた。
決定ボタンを押すとドアにかかっていたロックが外れた。
(ん〜......?え〜...ちょっと....入る気前提ですか...?)
弟はツッコミたいとかそういうレベルを通り越して、すでに理解が追いつかないでいた。
暗証番号のこともそうだが、なぜ兄が《《能力》》を使用してまで侵入しようとしているのか.....?
弟が考えていると兄は後ろを振り向き。
「解除しといたから中、入ろうぜ」
「......へっ?何しに?」
「俺たちが探していたものを見つけるんだよ」
探していた物とは...?何がなんだかわからないまま、弟は兄にドアの前まで引っ張られる。
「いやだよ、入りたくないよ!」
「何でだよ、早く入ろうぜ!」
「侵入とか絶対まずいって」
兄の想像以上のしつこさに弟は息を切らす。
そして兄も弟の想像以上の抵抗に息を切らす。
「はぁ、はぁ、何でそんなに...嫌がるんだよ...」
先程も言ったのにまだ兄はわかっていない。もしやわざとやっているのか...
「あのねぇ、僕は侵入するのが嫌だって言ってるの。ここは確かに不気味でスリル満点で面白そうだけど、犯罪行為を犯してまで入りたくはないの」
「そこを、どうか一生のお願い!」
頭を下げてまで言うことか?
普段と違う兄の執念。
戸惑いながら弟は仕方なく。
「今回だけね...」
「よっしゃ!!!!!」
兄は手を天に掲げで喜んだ。そんなに弟に見せたいものなのだろう。
「ねぇ、一応だから聞いとくけど中に人いるの...」
これは聞いとかないといけない。なぜなら、もし中に人がいた場合、兄弟達は犯罪として捕まってしまうことになるのだから。
「いや〜いないよー(多分)」
「えっ...いや...怪しすぎるだろ...」
「そ、そんな!って、それより早く!」
「えっ!ちょっと!」
兄は弟が抵抗するよりも速く手を引っ張る。
兄の急な行動に間に合うことのできなかった弟は耐えることができずに、無理矢理入らされた。
この後でとんでもない悲劇が待ち受けてるとは知らずに———