第五話 俊足の鎌妖怪現る
話を投稿したあと、何回か修正を加える事があります。何度も修正を加えたり、直したりすると思うので、ご了承下さい。
第二話の美沙視点の所を修正したしました。早半年の所を、「2年」と修正致しました。ご確認ください。
鬼獄「今からお前達に、俺と小雪の事情を説明する……が。」
とそこで、動かしていた口が数秒の間止まり、再度また口を動かし始める。
鬼獄「ここで話してると、もしかしたらアイツらに見つかるかもしれねぇ。だから、ちょっと場所を変えて話そう…、ついて来い。」
そう言ってソイツは、雪女の小雪を抱えて、建物の壁を左右交互に蹴って昇っていく。俺も続いて後を追おうとしたその瞬間、幽華に手を掴まれて止められた。
幽華「貴方、バカですか?」
と呆れ混じりに罵倒される。
幽華「敵か味方かも疑わしい者に、何一つ疑いもせずついて行くとか、馬鹿正直にも程がありますよ!」
考心「いや……、でも俺普通に嘘つけるよ?」
幽華「……いや、そういう意味じゃなくてですね…。」
呆れてものが言えないと言わんばかりに、彼女は口を閉じた。
考心「……とりあえず、行こうか。」
そう一声掛けると、彼女がゆっくりと頷くのを確認する。そして共に上へと昇るのだった。
□□□
考心「やっと、ゼェ…ゼェ…、着いた。」
空が綺麗に見える建物の屋上で、俺は息を荒くしながら情けない声を漏らす。何故こんなに疲れているのかと言うと、鬼獄がやったように俺たちも壁キックをして建物の屋上へと昇ったからである。だが、こういう体験は初めてなもので、昇り切るのには随分と時間を有してしまったが、幽華の助けもあって、数十分程度で済んだ。
鬼獄「随分と来るのが遅かったな。つい、見放されたのかと思ったぜ。」
その言葉に俺は、途切れ途切れに応える。
考心「…ゼェ…、すまない……ゼェ…、ちょっと…はぁ…苦戦しちゃって…はぁ…はぁ……。」
幽華「これぐらいの事で、屁張ってどうするんですか。こんなんじゃ、この先やっていけませんよ。」
考心「そんな事言われたって……はぁ…壁キックするの初めてなんだから仕方ないだろ!」
考心「すうぅ〜……、はぁ〜……。」
俺は呼吸を整えるために、一度深く深呼吸をする。俺は、それに、と一拍を置いてから口を再度動かし始める。
考心「これでも筋トレとか、武道とか剣術とかの修行は、しているほうだぞ?」
幽華「つまり……、経験不足という事ですか。」
考心「まぁ、簡単に言えばそういう事になるな…。」
そう言って、姿勢を整えて立つ。そして、鬼獄達に再度尋ねる。
考心「それじゃあ、君たちの事情を話してもらうよ。」
鬼獄「あぁ…。」
首を縦に振って応えた後、その事情を事細かく話し始めるのだった。
鬼獄「アイツらが俺達の前に現れたのは、ちょうど一週間前の事だ。」
□□□回想(鬼獄視点)
暗くて静かな路地裏の中、一つの声が高らかに木霊する。
???「やあやあ、はじめまして〜…。」
鬼獄「なんだ、お前?」
そう言って俺は、やってきたそいつの方へと体を向ける。
???「俺様が誰かって?強いて言うなら……、地獄落としの頭…かな?」
そう言ってソイツは、指をパチンッと鳴らした。その瞬間、ぞろぞろと後ろから地獄落としが、三人現れた。小雪は怯えて俺の後ろへと隠れる。
地獄落としの頭「随分と小さくて可愛い娘を連れてるじゃねえか〜…。良いご身分だなぁ〜、ギャハハハ!!」
そう言ってソイツらは俺を嘲笑する。俺はソイツらにうざったらしく返す。
鬼獄「うるせえなぁ……。要がないなら帰ってくれないか?」
地獄落としの頭「あっ??」
すると、後ろに居た部下らしき者が声を荒げる。
部下1「おい、てめぇ!誰に口聞いてんだ?」
部下2「このお方をどなたと心得る!恐れ多くも最強の地獄将軍!」
部下3「妖界の天下に轟くお方の御前であるぞ。」
部下共「このお方こそ、天下の先の大将軍!地呉鎌崎公であらせられるぞ!」
鎌崎「そんなに褒めるでない、なんせ俺様は最強だからな…。」
鬼獄「……ふーーん…。(鼻声)」
俺は鼻をほじりながら適当に返す。
部下2「どこまでも生意気な野郎めぇ〜!」
鎌崎「おい、頭冷やせ馬鹿者。イラついていてはソイツのペースに飲み込まれるだけだ。」
部下にそう告げた鎌崎とかいう男は、前に出た部下を下がらせて、俺に向けて話し掛ける。
鎌崎「鎌倉鬼獄よ。」
鬼獄「…!!?お前、なんで俺の名を!?」
俺は名前を言われて一瞬の間取り乱してしまう。だがソイツは、構わず言葉を続ける。
鎌崎「俺様の組織に加入しないか?」
そう問われた俺は、頭の中が混乱しながらも、質問を投げかけた。
鬼獄「お前らの組織は、何をしているんだ…?」
鎌崎「……平気そうに人生を謳歌している人間共の魂を、地獄の底まで突き落とし、俺様の力の糧とする事だ!」
高らかにそう叫ぶソイツに、俺は怒りを覚えて…。
鬼獄「平気そうに生きてる人達を殺して力にするだぁー……。ふざけんな!この様様やろぉーー!!」
思いっきりソイツらに怒号を浴びせる。そしてその瞬間、俺の体は勝手に飛び出していた。鎌を大きく構えて、真ん中にいるソイツに叩き込もうとして……。
鎌崎「ふんっ!」
ソイツは姿勢を低くして、手に持った大鎌で俺の腹を突く。
鬼獄「ゴホッ!?」
その瞬間、俺の口から嘔吐物が吹き出す。
鎌崎「フフフ…。考えなしに突っ込むその勇気に免じて、今日はお暇するとしよう。だが、」
と、ソイツは一拍を置いてこう告げる。
鎌崎「一週間後、お前の答えしだいではその小娘の命は無いと思え……。フハハハハハハハー!」
ソイツは高らかに笑って、その場去った。
□□□(考心視点)
鬼獄「という訳だ。これが一連の経緯だ。」
考心「なるほどな……。お前達の事情には、地獄落としが関係してたのか。と、なるとだ……。」
俺は幽華にさりげなく視線を送った後、こう告げる。
考心「俺たちの目的とちょうど一致するな。」
幽華「……確かにそうですね。」
俺が言った言葉に相づちを打つ。
鬼獄「あっ?お前らの目的って……。」
と、鬼獄が何か言いかけたその時だった。
グシャ!!と、背筋が凍りつく様な鈍い音が響き渡る。その瞬間だった。
鬼獄「ごふぉ!?」
考心「…!?」
幽華「…!?」
鬼獄の腹から大量の血が吹き出して流れ出す。それと同時に口から血が噴き出る。その量は、人間ならばとっくに死んでいてもおかしくない程だった。
鬼獄「いっ……たい……なに…が??」
そう言葉を吐くと同時に、その体は重力に従って前のめりに倒れる。それと同時に俺たちは、あることに気づく。
考心「小雪が……いない…?!」
今、俺がどんな顔をしているのか全く検討がつかないが。きっと、青ざめていることだろう。それだけ俺は今、責任という重圧を受けているのだから。
□□□
まだ、了承など俺はしていない。だけど、目の前にいる被害者を助ける事も出来ずに、ただただ突っ立っているだけに過ぎなかった。
あの時だってそうだ。あの時だって、あの悲惨な現場を見た時だって、俺はただただ立ち尽くしていただけじゃないか…。
「こ……しん…」
俺は結局何も出来ない、ただの……ーー
幽華「考心さん!!聞こえてますか!!」
考心「……えっ!あっ?!ごめん……。何かな?」
幽華の呼びかけにより、俺は正気を取り戻す。
幽華「何かなじゃないです!早くあの妖怪の手当てをおこなわないと、本当に死んでしまいますよ!」
考心「おっ?!おぉ!!」
そう言われた俺は、軽く混乱しながらも、手伝うために体を動かそうとしたその時……。
??「はぁ〜…、やっと着いたぜ。」
??「ん?なんだ、まだ生きてんのかコイツ…?だったら始末しねえと……、な!」
聞き覚えのない声と同時に、風を切るような音が、こちら目掛けて向かって来た。俺はそれにすぐさま気づき、剣でそいつの猛攻を防いだ。その瞬間、鉄と鉄がぶつかりあう。
??「へ〜……、なかなかやるじゃないか?」
向かってきたソイツは、一度距離をとる。
幽華「なにごとですか!?」
鉄がぶつかる音に気づいたのか、遅れて声を出す。
考心「奇襲だ。誰の手のものかわからないが、いきなり後ろから俺ら目掛けて飛んできたんだ。」
幽華「そうなんですか?!全然気づきませんでした!私も加勢します!」
考心「ダメだ!」
幽華「何故ですか!?」
と問われて、俺は一瞬鬼獄の方に目を向ける。
考心「あの状態の鬼獄を放っておくわけにはいかない。早く応急手当てをしてあげないといけない。だから、幽華は鬼獄を警部達の元へ運んで、事情を説明してやってくれないか?頼む!」
俺の頼みに一瞬だけ戸惑ったが、やがてそれを受け入れて、肯定の意を示す。
幽華「わかりました。出来るだけ早く戻ってきますので、頑張って下さい!」
と、そう言葉を残し、鬼獄を抱えてその場から遠ざかって行った。
??「話は終わったかい?」
慣れた手つきで、手に持った小さな鎌をくるくると空中で投げて遊ぶ。
考心「ああ……、今終わったよ。」
目の前のソイツにそう返答を返した後、俺は質問する。
考心「お前はいったい何者なんだ?」
??「悪りぃけど、知らない奴に名を名乗るほど俺はバカじゃねえ…。だけど……。」
と、ソイツは一拍を置いてこう告げる。
??「妖怪の名なら言ってやる。」
??「俺は妖怪鎌イタチ。両手に二つの草刈り鎌を持ったイタチの妖怪だ!」
力強い声で鎌イタチが叫んだ瞬間、俺とソイツは屋上の床を力強く蹴り、共にぶつかり合うのだった。
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キャラクター紹介
閻魔大王[閻魔女帝?]
エンマ
地獄の番人と呼ばれし、嘘を見透かす大王様。仕事や日常生活に厳しく、どんな相手にも厳しく接しているが、同じ立場で気楽に話せる者がいないという悩みを抱えている。天狗庁の大頭となっている、大天狗様とは仕事仲間で、仕事以外では、対等に接している様だ。最近は、囲碁や将棋にハマっているが、相手が居なくて暇をしている。
見た目
白のカッターシャツの上に、赤と黒のセーターを着こなし、膝まで長い黒と白のスカートを履き、閻魔の冠を被っている。靴は、紐のついた朱色の長靴を履いている。目の色と髪は、綺麗な黒色をしており、手には銀の扇子を持つ。普段は、スカートのベルトに扇子を挟んでしまっている。