第四話 地獄と氷姫
話を投稿したあと、何回か修正を加える事があります。何度も修正を加えたり、直したりすると思うので、ご了承下さい。
天狗「ささ、こちらのテントに警部殿が待機しておられます故。どうぞ、中へ。」
…と言われるがままに、俺たちはそのテントへと誘導され、中へと入る。そして、
警部「お待ちしておりました。あなたがたが、閻魔様からの助っ人ですね。この度は協力して頂ける事、誠に感謝します!」
入ってそうそうに、頭を深く下げて感謝の言葉を投げ掛けられた。俺はそれに思わず動揺したが、これが普通なのだと頭に言い聞かせて落ち着く。どうやら、とても礼儀のなった上司の様だ。
その身なりは、和とも洋とも言い難い、混ざったような服を着こなす、白髪の男性だった。
警部の下がった頭が上がり、顔を視認する。すると、
警部「む?あなたは……?」
考心「…?」
俺の顔を見るや否や、手を顎に付けてまじまじと見つめてくる。そのあと、何かを思い出したのか、手の平の上に、手をポンッと叩く動作をする。
警部「もしかして、あの時の妖ですか!?」
考心「・・・へっ?」
そんな間の抜けた反応を、思わずしてしまう。
そりゃそうだ。俺はこの妖怪と一切面識がないはず?……なのだから。
警部「覚えていませぬか?」
考心「……はい……。」
全く身に覚えが無いので、正直にそう答えた。
警部「あの三人衆の事件の時に、お会いしたでは御座いませんか。」
それを聞いたその時、俺は思い出した。あの時、初めて妖怪になったあの日の事を……。
考心「あはは……、ごめんごめんやっと思い出したよ〜。」
警部「では、僕の名前は?!」
唐突にそう問い掛ける警部に、俺は分からず困惑してしまう。実を言うと、あの時の事は思い出したが、その人の名前については聞いていなかった為、全くご存知無いのだ。だけど、答えない訳にもいかないので、俺は正直に渋々答える。
考心「あの〜……、名前はあの時に聞き忘れたので、知らないです。」
警部「えっ?あっ、申し遅れました!僕はー…こういう者です!」
そう言って、胸ポケットからいそいそと小さな手帳を取り出す。その手帳の上を持つと、重力に従ってその手帳の中身が開く。そこには、名前と顔写真が入っていた。
警部「僕は天狗庁本部、白狼天狗部隊第一部隊の管理官を務めております。名を白刃牙警部と申します!」
白刃警部「あっ!上から話は聞いておりますので、名前はしっかりと把握していますよ!」
そう言って、俺と幽華さんを名指ししながら指を指す。指を指すなと言いたかったが、頑張って押し留めて返答する。
考心「はい。」
幽華「はい。」
俺の返答に続いて、幽華も返答した。
白刃警部「それなら自己紹介はもう不要ですね。…、それはさておき、早速本題に入りましょう。」
すると、さっきの間の抜けた顔つきをしていた白刃警部が、真剣な顔つきへとガラリと変わった。そのまま警部は口を開く。
白刃警部「今回、閻魔様からの助っ人である君達に来てもらった理由は、もうご存知ですか?」
俺と幽華は、首を縦に振って肯定する。
白刃警部「ならば話が速い。君達には[地獄落とし]という妖怪のグループ集団組織の、調査を協力して頂きたいのです。」
幽華「質問しても宜しいですか?」
と、幽華が咄嗟に質問を繰り出した。
白刃警部「なんですか?」
幽華「もし、地獄落としに遭遇した場合は、即効切ってしまって構わないでしょうか?」
と、そんな恐ろしげな質問を真顔で言い放つ幽華。俺はそれに少し恐怖を覚え、その刹那、俺の体から冷や汗が流れる。
白刃警部「ええ、構いません。もし、地獄落としなら、即刻しょっぴいてください。」
いいんかぁぁ〜〜い!!
と、心中でそうツッコミ入れる。えっ、なに?妖怪の法律って日本の法律とは違うの?なんだか凄い厳しそうだなと、そう思わずにはいられなかったのだった。
□□□午後9時頃
今俺たちは、さっき通った繁華街の中を探っていた。この時間になっても、割と人の数は多かった。
まあ…だからこそ、人間への被害が多いんだろうなと、そう自分の中で納得する。
考心「それにしてもー………、全くそれらしい妖怪が見当たらねえなぁ〜……。」
繁華街の明るい表の道を歩き回りながらそんな事を呟く。
幽華「当たり前でしょ、わざわざ見つかりやすい通りに居るわけないでしょ!」
と、そう冷静にツッコミをされた。
考心「だっ、だよな……。」
俺は力なくそう言葉を吐く。
幽華「ほら、ちょうどあそこに薄暗い路地があります。もしかしたら居るかもしれません。行ってみましょう。」
そう言って、幽華は小走りで路地裏の中へと入って行った。
考心「まっ、待ってくれよ!」
それに続いて、俺も後を追った。すると、
??「誰だ!?」
薄暗い路地裏の奥から、男の大きな声が響いた。
幽華はその声と共に、背中と腰に携える二本の剣を同時に抜き取った。
幽華「考心さん、誰かいます!剣を抜いておいて下さい!」
考心「えっ!?わっわかった!?」
そう言われて、慌てて鞘から剣を抜く。黒い刀身がピリピリと音を経てながら、ほんのりと辺りを照らす。
その光により、奥に居る声の主の姿がハッキリと映る。
赤黒い髪の毛に、歪に生えた小さな三本のツノ、タンクトップのような服に、腰に巻かれた毛皮の様な腰巻き、膨らみのあるモンペズボンに、包帯で巻かれた両足、手には大きな鎌が握られていた。
その容姿は、俺たちが探し求めていた人物だった。
そいつは、鎌を大振りに降って突進して来た。
だがそれを難なくいなしたのは、
幽華「大胆な事で……。」
幽華だった。
そいつは、さっきより早く鎌を振って攻撃をしてくる。だが、幽華の二刀流の前では意味が無く、ただただ鉄と鉄がぶつかる音が反響する。そして、静止した空間の中、幽華は目の前の男にこう問い掛ける。
幽華「少し伺っても良いでしょうか?」
??「なっ……、んだよ!?」
そいつは、疲労した体を鎌で支えながら叫ぶ。
幽華「貴方は[地獄落とし]という妖怪ですか?」
??「あぁ…、そうだよ!!それがなんだよ!?」
唐突なその質問に、正直に答えたそいつは、鎌を構えて突っ込む。そして、一つの声が響きわたった。
??「やめて下さい!」
白くてブカブカな、フードが付いた服を着た少女が現れた。その少女は、必死になってその地獄落としを庇っていた。そして、そのあと少女はこう言った。
少女「この人は、まだ何も悪いことはしていません!お願いです、やめて下さい!!」
涙を流しながら、息を荒くして、そう必死に静止を掛ける少女。その瞬間、怒鳴り声が辺りを包んだ。
地獄落とし「お前!出てくるなって言っただろ!!もしかしたら、アイツらの差し金かもしれねぇんだぞ!」
少女「ごっ、ごめんなさい!」
少女はさっきよりも大きい大粒の涙を流す。
地獄落とし「わわわ!泣くな泣くな?!俺が悪かったー!お前が心配で、つい怒り過ぎただけなんだ!」
少女「そうなんですか?」
地獄落とし「ああ、もちろん。」
そう言って丸くなった空気の中、俺はふと、声を漏らす。
考心「アイツら……?」
俺は引っ掛かる単語を口に出した後、剣を鞘に収めて、ゆっくりとその二人に近づいて尋ねる。
考心「あのー、[アイツら]って、言ってたけど……、どういう事?君達は、何かしらの事情があるのか?ちょっと、詳しく聞かせて貰えないかな?」
俺がそう言うと、幽華が話に割り込んできた。
幽華「何を言っているんですか!この者は地獄落としという妖怪なんですよ!それに、本当に人間に被害を与えてないなんていう確証が、無いじゃないですか!」
幽華はそう大きく怒鳴り散らす。俺はその言葉にこう返す。
考心「幽華。確かに最もな意見ではあるが、話を聞いてみない限り、わからない事がある。それに……」
考心「罪の無い妖怪を、俺は殺めたく無い。」
幽華「っー…、わかりましたよ!今だけ貴方に一任します!」
幽華は、一つ思う所があるのか、不満そうな顔をして承諾した。
考心「ありがとう、幽華!」
俺がそう言うと、幽華は頬を少し膨らませた後、そのままそっぽ向いてしまった。
幽華「そんな純粋な笑顔をされたら、逆らえないじゃないですか……。〈ボソッ〉」
考心「んっ?なんか言ったか?」
幽華「いえ!別に!!(怒)」
なんて言ったのか、うまく聞き取れなかったが、なんでも無いのなら、なんでも無いのだろうと、そう思った。
考心「とりあえず、君達の名前は?」
地獄落とし「ふん!教えるとでも?」
男はそう言うが、少女は……、
少女「私は雪女の雪崩小雪です!そしてコッチが鎌倉鬼獄さんです!」
と、正直に名前を教えてくれた。
鬼獄「なっ…、おい!?」
そう言って小雪の肩を掴み、視線を合わせて喋り出す。
鬼獄「いいか、世の中ではそう簡単に名前を言っちゃいけないんだぜ?どんなに良い人そうな人でも、ダメだからな!それにーーー……。」
そうやって、小雪に説教を始める鬼獄という男。完全にお母さんやん、と思わずにはいられなかった。
見た感じ、結構過保護そうな奴だなと俺は思った。なので、俺はどうもコイツが悪い奴には思えなかった。
小雪「でも、私はこの人達なら信用できると思うのです!ですから、鬼獄さんも私を信じて下さい!」
そう強く鬼獄に訴え掛ける彼女の目には、必死さの様なものを感じた。鬼獄もそれを感じ取ったのか、自然と顔付きが柔らかくなっていった。
鬼獄「わかった。お前がそう言うなら、俺はそれを信じるよ……。」
そう言った後、俺たちの方へと体を向き直る。
そして、その事情を話し始めるのだった。
後々、キャラクターの挿絵を貼ろうと計画しています。番外編で数人まとめて説明と挿絵を貼りますので、楽しみにして下さい。
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