第一話 そして始まり
前々から考えていたお話で、いくつか纏まったので、書かせて頂きました。自作の妖怪とかも考えているので、そのうちだそうと思います。
話を投稿したあと、何回か修正を加える事があります。何度も修正を加えたり、直したりすると思うので、ご了承下さい。
「ふあぁ〜……。」
俺はこの広い部屋で、大きな欠伸を響かせる。とりあえず、自己紹介を始める。
俺の名前は八頭考心。ごく普通の高校生だった妖である。今は妖怪となって、ある職場に就きながら妖生活を満喫しているところだ。妖怪なったと言っても、姿は普通の人間とまるで変わらないけど…。あえて、違うところを言うなら……。白色の髪と、服装くらいだろう。
因みに、働いているその職場は……。
閻魔「はい。この資料を担当する部署に届けて頂戴。」
考心「りょーかーい。」
閻魔直属の秘書?みたいな立ち位置の仕事をしている。
妖怪となって早1ヶ月が経つのだが、やっている事が資料を運んだり、魂の管理をしたりなど、つまらない仕事ばかりだ。せっかく妖怪に生まれ変わったっていうのに、損ばかりをしている毎日。
考心「はぁ〜…、もっと有意義な仕事は無いものか……。」
そんな事を小声で呟いていると、
閻魔「なにか言いましたか?(圧)」
考心「ヒッ!?」
一瞬にして俺の背後に現れた閻魔様に反応して、突拍子もない声を出す自分。俺は驚きの余りテンパってしまい、わかりやすい困惑をして否定を口にする。
考心「いいいいえなんにもー!!?(汗)」
閻魔「あらそう?私も忙しいのですからあなたも素早く仕事をこなしてくださいよ。」
と、トコトコと持ち場に戻り、幾多の資料と睨めっこを続ける閻魔様。
この人は、地獄の番人と謳われし人物、閻魔様だ。美しく可愛い少女に見えて、結構厳しく、仕事にうるさい上司だ。そして何より怖いのが、あの地獄耳だ。遠くから小声で嫌味を言っただけで丸聞こえ、嘘すらも暴いてしまう閻魔様には、誤魔化しが効かない。だから、言い訳をしても意味がないのだ。だから、さっきの俺の否定も、全くの意味をなさないのである。
考心(毎度毎度怖い人だな……。ガチで油断ならねえ相手だ。)
と、そんな事を思いながら扉の方へと足を動かす。
とりあえず俺は、頼まれた資料を持っていく為にその部屋から出ようと、扉を開けた。
そのとき……。
閻魔「八頭さん。」
と、閻魔様に呼ばれた。無視してそのまま出て行くとメンドイ事になるので、仕方なく閻魔様に視線を向けて、返事を返した。
考心「はい、なんでしょうか?」
閻魔「大事な話があるので、早めに戻ってきて下さい。わかりましたね?」
考心「あっ、はい(察し)。」
俺はそう返事を返して、再度ドアノブに手を掛け、重たいあしどりで資料を届けに行くのだった。
□□□
考心「……。」
閻魔「………。」
無事資料を届けた後、俺は言われた通りこの部屋に戻って来ていた。戻って来てからというもの、この無言が長時間の間続いている。そして閻魔様は、真剣な趣で俺を睨みつける。だがやがて、閻魔様が口を開き始めた。
閻魔「あなたが小声で呟いていた事を覚えていますか?」
と、予想していた言葉がこの広い部屋に木霊する。俺は言い訳も無く、正直に答える。
考心「……はい。」
そう返事を返すと、閻魔様は呆れてため息をついた。そして、長い長い説教がこの部屋に多く反響するのだった。
□□□
あれから何分が経過したか、分からないがようやく説教から解放された。つい、閻魔様の前で両手を上に挙げて背伸びをしてしまったが、珍しく今日は閻魔様に注意をされ無かった。それに少し違和感を感じた俺は、少しだけ質問をしてみた。
考心「堂々と背伸びをしたのに、なんで今日は珍しく叱らないんですか?」
閻魔「あなたが望んでいた仕事の命を出すのに、要らない事に時間を使いたくないでしょう?」
「だから」と、一拍を置いてから、
閻魔「あえて叱らなかっただけです。」
と、そうハッキリと言われた。
俺は、少し理解が追いつかなかったが、やがてそれを理解した。つまり、いつもの"仕事"以外の"仕事"を任せて貰えるという事である。俺はそれに喜びを感じ、ついガッツポーズをした。
閻魔「………!?」
それを見た閻魔様は、少し呆気に取られた様な顔をした。しばしの沈黙が辺りを包んだ。
普通に気まずい空気になってしまったので、今度から気をつける事を、心の中でそう決心した。
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あの後、閻魔様から仕事内容が書かれた一枚の資料を渡された。その資料は、どうやら履歴書の様で、その人の出生や、名前、死因などが記されていた。主な仕事内容は、この地に留まってしまった亡霊の監視をする事である。閻魔様に言われた俺は、任務の場所が記された履歴書をもとに、今はそこに向かっている。
だけど、草や木々が沢山生い茂ってる林の中だとは、全くわからなかった。
考心「あはは……、運が悪いぜこりゃ……。」
と、苦笑を浮かべながら目的地へと足を進める。
□□□
ようやく深い林の中を抜けると。そこには、如何にもボロボロな神社があった。入り口である鳥居には、皮が剥がれたかの様な跡が沢山あり、拝殿の屋根の瓦は、幾つか損失していたり、イタチがその辺をうろついて居たりなど、どうにも人が住めなさそうな神社が、そこにはあった。そして、俺の目的である亡霊は、すぐ近くにいた。
考心「あの人かな?」
と、呟いた後、渡されていた履歴書を、再度俺は視認して見る。
性別は女で、歳は17歳程度。神社の一人娘で、特徴的な青いリボンと純白色の巫女服を着ている。履歴書に記載されている事と、見事に一致した。
亡霊少女「………?」
亡霊少女は、俺に気づいたのか、俺の事をじっと見つめてきた。そして、暫くの間沈黙が続いたが、俺は颯爽とこの状況を打開する為に、先に少女に声を掛ける事にした。
考心「えっと、あのぉ〜……こんにちわ?」
亡霊少女「こっ、こんにちわ……。」
と、少し警戒しながら挨拶を返してくれた。だが、このままではあまり進展がないので、俺は彼女が座る縁側へと近付いて、隣に座る。すると、その少女はビックリして、微妙に距離をとり始めた。だが俺は、そんなのお構いなしに、その亡霊へと自分からまた話しかけた。
考心「俺の名前は八頭考心。妖怪です、宜しく!」
と、自己紹介をした後手を差し出した。亡霊少女は、困惑しながらもやがて落ち着きを取り戻し、俺の方を見て自己紹介をした。
亡霊少女「私は、八潟美沙。こちらこそ宜しくです。」
と、言って俺が差し出した手を握って握手を交わしてくれた。
後々思った事だけど、急に馴れ馴れしく自己紹介をするべきではないという事に、今更ながら気づいた。だけど……、前にもこんな事があったような、そんな既視感を感じながら、亡霊少女の美沙さんと、雑談を交わすのだった。
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そして、この日から俺は、亡霊少女のお世話係として、その少女と仲良くなったのだった。
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