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インターネット接続実験事後会議

技術班長[イントラネットへの接続時間は3時間で終了しました。結論から言うと、プログラムは、イントラネットへの接続を瞬時に知覚していました。プログラムは、イントラネットへの接続に3時間夢中になっている様子で、接続終了後は再度の接続を要望していました。

3時間で、電脳の擬似質量は3.5倍になっています。これまでの4年間で1.3倍になっていることから考えるとこれは驚異的です。全く別物になったと言っていいのではないでしょうか。

イントラネットのサーバーの中には、辞書サイトや政府のホームページのコピーなど、とにかく情報量が多く、当たり障りのないようなデータを用意していました。

接続中、こちらからの質問に答える時、それらのサイトに瞬時にアクセスして、探索をしているような様子がありました。

なんといいますか、彼の脳の中には、特定のサイトへのリンクのようなものができた様子で、特定の脳の部位から特定のサイトへのアクセスが頻繁に確認されるようになりました。

イントラネットにアクセスする脳の部位は95%以上が新規に増殖した脳の部位です。

つまり、イントラネットに接続するための脳を彼はどんどん増設したと言えます。

イントラネットの側については、まだ精査していませんがダメージはゼロです。実験前と、全く変化はありません。

とりあえず技術班からの報告は以上です。]


観察班長ノア教授(生身)[実験後の彼の人格は変化があったようには感じられません。いつも通りの様子です。

しかし、それぞれのサイトから得た知識でしょうが、博識にはなっていました。

珍しく彼は、要望を出しておりもう一度同様の実験を希望していました。実験の計画書を自作するほど熱心でした。]


社会班長[彼自身のイントラネット接続実験の感想を聞きたい。]


観察班長ノア教授(生身)[一言で言うと、脳を拡張しているような感じと言っています。実際彼の脳は大幅に増量しているわけですが、それだけでなく、イントラネットのサーバー自体を自分の脳のように駆使している様子がありました。]


法律班長[3時間の実験中に2つの懸念事項がありました。

一つはイントラネット上のpcの容量を勝手に使って、彼自身のための情報処理や計算を行なっていることです。これは明らかな違法行為で、ハッキングの一種と言えます。

もう一つは、こちらは違法とは言えないのですが、あまりにアクセスの頻度が多すぎるのです。回線上の情報のやり取りが常軌を逸したレベルまで跳ね上がっています。もし、インターネット上でこれを行うと、他の人がインターネットにアクセスする速度が大幅に落ちるでしょう。いわば、情報の渋滞が起こるわけです。]


倫理班長[倫理班としても、今後のネット回線への接続実験は拒否します。これは倫理班の特権の拒否権と思ってください。

彼自身が思いもよらなかった変化がこの実験で起こっています。

今後の実験でも、誰もが予想できないことが起こりうる可能性があります。そしてその可能性の中には、人類の文化に深刻なダメージを与える可能性を否定できません。]


技術班インターネット接続担当[前回と同様のイントラネットへの接続でもダメですか。]


倫理班長[ノー。ダメだ。どのような影響があるかわからない。そして、実験に使用したサーバー、ケーブルpcも全て封印し、あらゆる機器への接続を禁止する]


技術班インターネット接続担当[しかし、実験の結果を確認するためにサーバーに班のpcをすでに接続していますが。]


倫理班長[では、そのpcおよび周辺機器も使用禁止だ。文字通り実験に関わった機器は封印する。分析することも許さない。]


社会班長[なぜ。分析をしなければ実験を行った意味すらなくなる。]


倫理班長[違法行為を行なっているからだ。彼自身がもし悪意をもって外部のpcへの攻撃や侵入、侵食を意図していた時、どのような手段を使っているか予想がつかない。予想がつかない以上、最大限の防衛を行うべきだ。]


社会班長[例えば、完全に隔離した施設で実験の続きをするというのはどうかな。]


倫理班長[その場合は、回線だけでなく、電波等もシャットアウトし、かつ物理的に隔離した別施設で行うことが条件だ。]


社会班長[えらく物々しいな。]


倫理班長[リスクが予想できない以上、妥協できない。]


社会班長[わかった。ではインターネット接続実験については、別に班を設けて独自のプロジェクトとして、今後進めていく。

倫理班長、インターネット接続実験について、基本的な倫理規定を考えてくれ。

インターネット接続班は基本的に技術班の人員の一部を移動するが、班長については外部から基本的に都用することとする。

この実験の結果、どのような成果が得られると考える?]


技術班インターネット接続担当[なんとも言えませんが、そうですね。ものすごく博識な人格が完成するんじゃないでしょうか。

そして、彼自身が今後の実験の計画を作成したように、膨大な知識をもとにした、一流の企画者として活躍できるのではないでしょうか。あるいは超一流のアドバイザーのような人格が完成するのではないでしょうか。

そういった物が完成した時、国家レベルの政策の検討などに有用になるのではないでしょうか。]


社会班長[例の超aiだな。予想できないリスクと予測できない成果か。ずいぶん危ない話になってきたな。まあ、そのためのプロジェクトではあるが。]


--全員が席を立ち、各々会議室を退出する。社会班長とノア教授は、しばらく2人で立ち話をしていたが、やがて部屋を出ていく。



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