きたいの悪女は処刑されました
むかしむかし ある所に とても栄えた王国がありました。
王国が栄えると 人々は 益々集まりました。
王国には 王女様がおりました。
王女様はある日言いました。
「この人々を全員残らず処刑なさい」
人々は混乱しましたが、命令には逆らえません。
大勢の人が殺されました。
ある日 王子様が聖女様を見付けました。
それは女神様に生き写しの美しい容姿でした。
王女様はある日言いました。
「あの聖女に血を流させなさい」
王子様は言いました。
「お前は血も涙もないに違いない」
聖女様は言いました。
「私が幾らでも流します。ですが神はあなたを赦しはしないでしょう」
涙を流す聖女に心を打たれた王子様は希代の悪女を処刑しました。
すると 王国は益々栄えました。
二人は仲良く国を治めましたとさ
おしまい
エルバニア王国絵本
「ねぇ先生」
「何だい」
「今度の課題はこれにするよ。希代の悪女がどんな人だったかを纏めるやつ」
「それはいい。では、また来週」
現王子さまは色々な人から話を聞き、色々な資料を漁りました。
悪女は最後まで謝罪一つ零さなかった。血も涙もない冷血な女だ。
悪女は死者を纏めて焼き払いました。
聖女様は私たちと真逆の肌の色と髪の色でそれはそれは美しい方でした。
王国は栄光溢れ人々で満ちていました。
王子様は心優しい方で人々の意見によく耳を傾けました。
悪女は命令ばかりしていました。
王様は聖女様の涙で元気になりました。
悪女は潔癖でした。
ご主人様は国の為に生きた方でした。
王様は悪女処刑の日に一言残しました。「英断、大儀であった」
王子様は誇らしくなり胸を張りました。
以来、自分に自信を持ちました。
聖女様は胸を痛めながら涙を零しました。
以来、一層国の為にと祈りと身を捧げました。
悪女は静かに首を垂れました。
斬首を待つようにも、騎士の礼にも、敬虔な信者の様にも見えました。
こうしてきたいの悪女は無事処刑されたのです。
王子様は何かが引っ掛かって首を傾げますが、何かが分かりません。
結局、おとぎ話はおとぎ話として、古びた絵本を閉じるのでした。
おしまい