夢のまた夢
遠くで銃声が聞こえる。足元には、肉塊となった人や、死にかけた人が所狭しと倒れている。僕の隣には、怯えた顔を必死に堪えて拳を握る彼がいる。僕は、彼の気を引きたくて大声で泣いた。
「泣かないでくれ…。悲しいのは、俺たちだけじゃないんだ。死んでいった者たちの方が、きっと俺たちの何倍も悲しい。」
彼の声も震えていた。僕を心配させまいと、涙を堪えているのだとわかる。紅く燃える夕陽の奥に、明日の兆しを感じる。銃声は、いつの間にか聞こえなくなっていた。
「僕達も、死ぬのかな。」
「いつかは死ぬさ。でも、今じゃない。」
そう言って、彼は歩き出した。その足取りは重く、自分が生きてることを踏みしめているようだった。