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三角月夜  作者: 日野 哲太郎
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宇宙遊泳と三角月への着陸

 ところが、それは奇跡だったのです。くるくると風車がまわるようなながい時をへて・・気づいてみると、トキは銀色のざぶとんにこしかけて宇宙をただよっていました。天の川が美しくながれています。

 トキは地球から落ちて、宇宙へとまい上がっていたのです。

「ああ!」と思わずため息がもれました。それほど雄大ですばらしいながめをそれまでみたことはなかったからです。

 それはおおきなアブストラクトでした。まわりはじゃまものひとつない空間。そこに星の光だけが清らかな乙女のなみだのようにかがやき、さまざまにすがたをかえながら川のように渦のように波のようにながれています。そのいろどりは花ふぶきのように穂波のようにきれいです。

 竜が銀の首をもたげたかとおもうと天使がしなやかに空をまい、バラの花園がひろがったかとおもうと光が滝のようにこぼれおちていきます。

 夜空はふしぎのキャンバスです。城もみえれば、街もみえます。しかもそれが夢のように美しいすがたからすがたへとつきることなくながれているのです。

 座布団にのって空をとんでいるのが、おかしいといえばおかしかったのですが、それくらいのふしぎがなんでしょう。むこうではコイノボリとタイヤキが相撲をとっていますし、サチュロスが笛をふきながら逆さになって・・あれあれ、あそこに光っているのは三角月だ!

「するとここは?

 きっと宇宙のうらがわなのだわ」

 そういえば、そこは天文学の知識とはあまりにくいちがっていました。トキは無重力空間にいると信じていましたが、空気のないところで生きていられるのもヘンですし、星も川のようにさらさらとながれています。きっとここは、人間の想像がうんだ裏宇宙なのです。

「ほんとうのお月さまは、

 いったいどこにあるのかしら?」

 どちらが上か下かわからぬままにクルクルと飛んでいるのは口でいいあらわせないほど愉快でしたが、やはりもとの世界にかえりたかった。やはり地球がいちばんよい星でした。そして、まあるい月がとてもなつかしかったのです。

 座布団はどんどん三角月に引きよせられていきました。月はしだいにおおきくなり、おおきくなり、おおきくなり、そしてついに月面にフワリと着陸したのです。

 それはアポロ11号のアームストロング船長ほどの世界的注目はひきませんでしたが、だれもみたことのない月に無事着陸したということは、科学者にもできない相談なので、これはひそかに表彰されてもよいのではないかと思うのです。しかもトキがつかったのは、魔法のジュウタンならぬ一枚の座布団なのですからね。ウルトラCもここまでくればオリンピックで金メダルもなんのその・・と自画自賛をはじめるひまもなく、

「手をあげろ!」との声。

 それは三角星人の兵隊たちでした。しかも今度は何百何千とむらがってまわりを厳重にかためています。これでは手のほどこしようがありません。「しかたないや」トキはすなおに手をあげました。

「宇宙船をもっていけ!」

 ひげをはやした将軍の命令のもと、三角星人たちは座布団を十人がかりでおいこらおいこらと運んでいきました。軍隊は道のわきにせいぞろいしています。トキは囚人のようにあるいていました。リボンがとれて胸がはだけ、はだしで足がいたみ、なんともみじめな気もちでした。

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