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ゼロの決意

やっぱり、夢じゃなかった。


目が覚めた瞬間の僕の感想は、その一言に尽きる。



そういえば昨日もまったく同じ事思ったっけ。


目が覚めたら真っ白い部屋にいてさ、最初は自分が寝ぼけてるのか、夢でも見てるんだろうと思ってたんだ。それで二度寝して……三度寝してから目覚めても、白い部屋なのは変わらない。


さすがにおかしいと思って起き出して、部屋を調べ始めてからは地獄だった。


出口なんかどこにもないし。


ドアも窓もなくて、ただただツルンとした白い壁があるだけ。僕の部屋とそう変わらないくらいの広さのその部屋にあるのは、さっきまで寝ていたベッドと、これまた真っ白でツルンとしたイスだけだった。


なんで、どうして、って混乱しながらもイスに近づいたら、イスの上にノートサイズくらいの白い紙が置いてあるのに気が付いた。


なんか、書いてある!


ダッシュでその紙を拾い上げた僕は、文面を読むうちにだんだんバカバカしくなってきた。


だってさ。



『おめでとうございます。貴殿はこの度、当方の厳正なる審査の結果ダンジョンマスターに選ばれました』だの、『勝手ながらダンジョン創造・運営の妨げとなりうる記憶は一部削除し、ダンジョンの元となる空間に召喚させていただきました』だの。


そんな書き出しの手紙、誰が信じる? 



「なんだよこれ。ドッキリ? タチ悪い」



ムカついて、ついそう呟いた瞬間だった。



『声紋を認証しました』



どこからともなくそんな声が聞こえたかと思ったら、手の中の紙がフワリと浮かび、空中でクルンとまるまる。



「え、何? どーなってるの、これ」



怖くなって思わず一歩後ろに下がる。その紙は強烈に光ったかと思うと、一瞬で透明な球体に姿を変えていた。


水晶玉みたいな球体はゆっくりと下降してきて、やがて僕の掌の中に納まる。



『マスターの生体を認証しました』


「ひえっ」



ま、また、しゃべった!


どこからともなく聞こえてくる、と思っていたその声は明らかにその球体から発せられていた。



『ただいまより30日ののち、当ダンジョンは自動的に開放いたします。外敵に備え早急なダンジョン構築をおすすめします。カタログにて必要な設備、モンスターをご注文いただき、ご注文ください』



声と同時に、空間に突如分厚いカタログが出現し、ズドン、と重たい音を立てて床に落ちた。


待って。


待ってくれよ。


え、どうなってんの? 大がかりなマジック?


怖くて突然現れたカタログになんか、近寄りたくもない。声も出せずに不審なカタログを凝視していたら、そのカタログの上にひらひらと1枚の紙幣みたいな紙が落ちてきた。


召喚……チケット、って書いてある?


さっきの手紙にそういえばダンジョンつくるためのポイント1000PTと、高位のモンスターを召喚できるレアモンスター召喚チケットを贈呈するとか書いてあったような。


なんて手が込んでるんだ。



気持ち悪い。ドッキリにしてもやり過ぎなんじゃないかな。時間が経てば解放されるのか、何か特定の行動をすればいのか、それともどっかに各自ボタンとか隠し扉とかあって、謎を解かないといけないとか?


僕で思いつける事なんてたかが知れてて、イスをひっくり返してみて見たり、ベッドの裏を覗き込んだり、壁をあちこち叩いたり、誰かがどっかで見たり聞いたりしてるんじゃないかと思って叫んでみたり、考えつく限りの事はやってみた。


それでも、反応するのはあの謎の球体だけ。




……待ってくれよ。


これって、マジで?


ベッドに座り込んだまま、どれくらい待ったかわからない。さすがに僕もドッキリじゃないかも知れないと思い始めていた。


だって、本当に自分の名前も、家族も、友達も思い出せない。普通にこれはイスだとか、ベッドだとか認識できるし色々考えることだってできるのに、大切な人やモノほど思い出せない。


そんなの、どう考えたっておかしいよ。



確かめてみるつもりで、あの時僕は召喚チケットを手に取ったんだ。分厚いカタログに手をかけるのはまだ勇気が出なかったから。




目が覚めて、昨日とは打って変わったでっかくて柔らかいベッドの上で、僕はあらためて途方にくれる。


召喚チケットで、本当に召喚できちゃったよ……。


昨日のイケメンが脳裏をよぎる。きっと今頃、あの扉のむこうで彼も眠っているんだろう。


信じられないくらいの美形だった。僕とそう年は変わらないように見えるのに、綺麗なサラサラの銀髪も紫の瞳も、透けるような白い肌も、とても人間とは思えない。すらりと長い手足、体だって細身なのに、その体からは圧のようなものが感じられた。


ハク……ダンジョンモンスターだって、言ってた。


強くなるんだって。白龍になりたいんだって、言ってた。



じゃあ、あの手紙が本当だってこと?


僕は頭を抱えた。


僕がモンスター召喚して、トラップを仕掛けて、ダンジョンを造るのか?


ダンジョンを攻略しようとする冒険者を殺すのか……僕が、この手で。




無理だ。ダメだ。


ぞっとする考えに、僕は必死で頭を振る。


考えろ、考えるんだ。


昨日、ハクにだって約束したじゃないか。ヒトを殺さないダンジョンを作るって。


僕はもうハクを召喚してしまった。名前だって付けた。


もう、死んだ方がましだなんて思えない。



考えよう。僕らが生き残れて、人も殺さずに済むダンジョンの在り方を。


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