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俺の、部屋……?

「あっ! ハクさあ、こだわりないんだったら、これとかどう?」



ゼロの楽しげな声にカタログを覗き込んでみれば、オススメのものなのか、ひと際目立つ枠付きでこう書いてあった。


【初心者用住居:フローリング6畳1間:キッチン、バス、トイレ付き10P】


最初に貰ってるのが確か1000ポイントって言ってたっけか。6畳1間はイマイチよく分からないが、10ポイントでキッチン、バス、トイレが揃うなら、一応生活できるし割がいい気がする。


いいんじゃねぇの? と答えると、ゼロは緊張した面持ちでダンジョンコアに向かい合った。なんでもカタログから何か頼むのはゼロだって初めてのことらしい。



「初心者用住居を購入!」



ダンジョンコアに向かってゼロが高らかに宣言すると、コアからも応じるように機械的な音声が響いてきた。



『初心者用住居を10Pで設置しますか?』


「承認!」



ゼロが承認したとたん、壁に突如ドアが現れる。ただただ真っ白な空間の中に、優しい木目の扉があるだけで、なんとなくホッとするのが不思議だ。


恐る恐るドアノブに手を掛ければ、ガチャリと軽い音がしてなんなく扉が開いていく。



「うわ~、本当に簡単にオーダーだけで出来ちゃうんだね」



どうなってるんだろ、とポカンとしたまま呟くゼロにまったく同意だ。俺もダンジョンがこんな簡単に増築できるなんて知らなかった。



「ハクの部屋だし、せっかくだから見てみれば?」


「え、俺の部屋? まさか個室?」


「もちろん。僕はマスタールームで寝るし。プライバシーは大事だよね」



ダンジョンモンスターにわざわざ個室くれるとか、どんだけ優しいマスターだよ。思いがけない幸運に、密かに感動してしまった。いや、マジでラッキーなんだけど。



「あ、でも悪いけどポイントが貯まってダンジョンが安定するまではトイレとお風呂は共用にしよう」



ポイント消費しすぎるのも怖いしね、なんてゼロは申し訳なさそうな顔をしているが、そんなの当たり前だろう。


ゼロに促されて、部屋に入る。中を見て、俺はちょっと引いた。


一瞬で造られたとは思えない、ちゃんとした『部屋』だ。ただただ真っ白だったマスタールームに比べると遥かに生活感がある。


木の床に淡いベージュの壁、家具が置いてないからだだっ広いが、小ぶりなキッチンには鍋とまな板、ナイフが用意されていて、なるほどこれなら本当に普通に生活できそうだ。



「おお、ちゃんと水も出る! 普通に蛇口だ!」



水を手にすくって飲んでみたりとゼロも嬉しそうで、俺はちょっと安心した。


部屋の奥にある扉を開ければトイレと風呂。シャワーだけでなく風呂桶もあるタイプでなかなか使い勝手がよさそうだ。これだけ揃ってたったの10Pなら本当にお買い得だろう。とはいえ無駄使いなんて現段階じゃもちろん怖くてできないけどな。


思ったよりもずっと快適に暮らせそうで俺は既に満足していたわけだが、ゼロは「この部屋、家具がなんにもないな」と呟くとさっさと部屋を出て行ってしまった。



そして、わずかな間のあと、隣の部屋から「承認!」の声が聞こえてきたかと思うと、ドン! ガタン!と音を立てていきなり部屋にベッドとイスが現れる。



「な……な、なんだコレ」



内心ドキバクしていたら、マスタールームへ続く扉からゼロがひょこっと顔を出す。



「どう? さっきベッドもそれでいいって言ってたから、ハクの部屋に移設してみたんだけど」



いやいやいや! 一言いってくれよ! めっちゃビビったじゃねえか!



「あ、ちゃんと移設されたみたいだね。模様替えは自由にやってくれていいからね」



模様替えって……言うほど家具もねえんだが。なんて返事をする間もなく、ゼロの顔はあっという間にマスタールームに消えていく。そして隣の部屋からテンションの高い「承認!」の声が聞こえてきた。


ズウウウン……と、地響きのような音が響いた瞬間、俺はマスタールームにダッシュで移動する。



「ゼロ!? 何を召喚したんだ……って、うわっ! なんだコレ」



部屋一面のベッド。


ゼロは幸せそうにベッドの上をゴロゴロと転がっている。俺は激しく脱力した。



「ハク見てくれよ、夢のキングサイズベッド~! 僕寝相悪くてよく落ちるからさ、ずっと欲しかったんだよ。超ふかふか! 超最高!」


「はあ!? 何無駄遣いしてんだよ! お前はアホかっ」



思わず心の声が全面に出てしまった。しかしゼロは気にした様子もない。



「たった2Pだから大丈夫! ちょっと座ってみなって。魅惑のふかふか感だから!」



確かにふかふかだが!


ここマスタールームだぞ? この部屋ベッドしかないじゃねえか! ベッドでゴロ寝しながら作戦会議とか、あんまりだろう。


俺が先行きに不安を感じてグッタリしている間に、ゼロは一瞬で寝てしまっていた。


寝息すら聞こえない程ぐっすりと眠ってしまっている。今日はきっと、不安の連続だったんだろうと思うと、さすがに起こせない。


キングサイズベッドと一緒に出現したんだろうふんわりした布団を掛けてやってから、俺はそっとマスタールームをでる。


まぁ、明日からが本番だよな。

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