表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/18

俺だって引けねえんだよ

「いやいやいや、ここダンジョンだぞ!? 相手は殺す気満々で来るんだからな? マスターを守りながら、相手も殺さず仕留めるのはムリだって!」



こっちも命がかかっている。本気で説得したが、泣いてるくせにマスターも一歩も引かない。


ちくしょう……!

どうせ、マスターには逆らえねぇし!

俺、死んだな……。


俺は深いため息をついて言った。



「じゃあ、それでも生きのびられる方法を考えてくれ。それまでは俺が死んでも守ってやる。マスター死なせる以上の屈辱はないからな」



相当譲歩したのに、マスターは「簡単に死ぬとか勘弁してくれよ」とか呟いている。勘弁して欲しいのはこっちの方だ。マスターはさぞ平和な世界から召喚されて来たんだろう。


そんなヤツが一体どんなダンジョンを作るのか、ちょっと興味も湧いてきた。


まぁ、あっと言う間に殺される可能性の方が高いが、少なくとも俺を召喚できたのは運がいい。


このヘタレ、俺がキッチリ守ってやろうじゃないか。


決意を新たに改めてマスターを観察する。短めの黒髪に黒の瞳、顔は……まあ、普通だな。身長は俺よりちょっと低い、170cm前後だろう。細身で筋肉も脂肪もないし、肌色も生っ白い。


見れば見るほどヒョロっぽいな。本気で虫すら殺せないかも知れない。少なくとも戦力としては期待出来ないだろう。


あれ? っていうか戦力ってもしかして俺だけ?



「なぁマスター。召喚したのって俺だけか? 他には喚ばねぇのか?」


「うん。どんなダンジョンにするかも決めてないのに、ポイント浪費するの怖いし。君も【初心者用無料レアチケット】で召喚したから」


「…………」



指名喚びじゃねーのかよ! 言っとくけど俺、結構レア目だぞ!?


がっくりと肩を落とした俺に、マスターが慌てたように声をかける。



「ご、ごめん……えーと、あ、そうだ! 僕、人と会えたのが嬉しくて、まだ君のステータスも見てなかった。ちょっと待って、えーと、ステータス確認!」



マスターの声と共にダンジョンコアが光り、なんと突然壁に文字が浮きでてきた。


うぉぉ、マジか。


すげぇな、ダンジョンコア。



名前:ノーネーム

LV:1

種族:龍人(白龍)

性別:オス

レア度:5


◆能力値

HP:800/800

MP:500/500

STR(筋力):80

VIT(耐久):50

INT(知力):80

MIN(精神):100

DEX(器用):30

AGI(敏捷):50

LUK(幸運):250


▽スキル

《下級白魔術》 下級の白魔術を扱うことが出来る。

《幸運》 ランダムで幸運を引き寄せることが出来る。



「えっレア度5!? あのチケットで喚べた最高レア度だ。凄い!」



ステータスを見た途端、俺と表示されたステータスを何度も見比べて、マスターのテンションが面白いほどあがってきた。


ふっ、今頃俺の凄さがわかったか。


惜しげもなく贈られる尊敬のまなざしに俺の気持ちもちょっと上がる。会ってからずっと困った顔しかしてなかったけど、マスターもちょっとだけ元気出てきたみたいで安心した。



「あのさ、龍人ってどんな種族?」



食い気味で身をのりだして聞いて来るけど、さて、どう説明したものか。龍人を知らないからこそ聞いてくるんだろうけど……マスターは異世界から召喚されたらしいって言ってたしな。


少しだけ考えてから、俺は分かりやすい種族特性だけを伝えることにした。



「成長次第でウルトラレアの龍に進化出来る、ダンジョンマスターにとっちゃかなりお買い得な種族だ」


「龍? 龍ってドラゴン!? ウルトラレア? ほ……ホントに!?」



マスター大興奮。


実際俺だって龍に進化したくて、リスクを負って召喚契約したんだ。マスターもやる気を出してくれなきゃ困るんだよ。



「しかも進化したら、幸運を運ぶ龍……レア度MAXの白龍だぜ? ホント普通なら会う事すら滅多にねぇんだからな?」



マスターの目が賞賛の輝きに満ちている。俺は畳みかけるようにこう言った。



「俺はそもそも白龍に進化したくて召喚に応じたんだ。何があろうと絶対に白龍まで進化する。俺を喚べたマスターはそもそも強運なんだ。力を合わせればきっと【敵を殺さないダンジョン】だって出来るだろ。頑張って智恵絞ろうぜ?」


「……うん!」



やっと笑ったマスターを見て、俺も少しだけホッとする。これでやる気出してくれりゃいいんだが。マスターが動いてくれなきゃ、俺だって力の貸しようがないもんな。


ホッとしたところで、大事な事を思い出した。



「そうだマスター、名前付けてくれよ。ノーネームじゃ効率よくレベルアップ出来ねぇし」


「へ? どういう事?」



きょとんとしているが、まぁ、異世界育ちじゃいわゆるダンジョンの常識ってのも本当に知らないんだろう。


俺だってダンジョンモンスターとして召喚されるのなんか初めてだし、記憶にも霞がかかったような状態だから詳しく話せるわけでもねえけど、それでも常識として脳みそに入ってることくらいはある。


よし、いっちょ簡単に説明するか。



「普通ノーネームは殺されてもLV1で復活出来るんだ。名前持ちは復活は出来ねぇけど、LVアップ毎に各ステータスに+10の補正がつく。お得だろう」



するとマスターは目に見えて青くなった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ