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さいやく  作者: 綿上遼
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先生


中学生のころは、中学生のくせに

学生ものの小説ばかりを読んでいた。

思春期にありがちな、不思議な感覚をシャボン玉に捉えた小説

部活に打ち込む男子学生の小説

親子喧嘩ばかりする小説

僕はすべてが大好きで

中学生だからといってこのありふれた全てを

経験することはできなくて


放課後の校舎で居残り勉強をしたり

屋上にあがってお昼を食べてみたり

泣きながら部活に打ち込んだり

パッとした友だち同士の喧嘩もなかった

反抗期だってなかった


僕は正しく歳を取れないまま卒業し

また入学し、それを繰り返す。


そんな中で、ある日

女性の先生のブラジャー姿を見てしまった。

全部ではなくて後ろ姿だけだ。

薄黄色のブラジャーとホック、

そしてきっと全面には安っぽいレースが

あしらわれているんだろうと想像出来た。

僕は信じられない気持ちでいっぱいだった。

なんで?先生がブラジャー?


例えるなら、先生がおめでたで仕事を辞める時

結婚する時、先生同士の悪口を言っていた時、

プールの授業、男性の先生の前に並び

スクール水着の姿で体操をする時


先生は先生であって


人間ではないものであると思っていた。

だからセックスだってしないし

泣かないし

好きな人なんてできないし

胸がザワザワするような気持ちだって

僕らは持たないはずだった


そう。いけないものを見てしまった

という感情、違和感があてられる。


人間だった、確かに人間であったのだ。

だからきっと先生だって

生活保護を受けるかもしれないし

自殺をするかもしれないのだ。

僕はそんな当たり前のことを

今更ながらに気づいたし、それをまだ

受け入れられずにいる。


きっとずっと中学生のままだ。

シャボン玉の中に夕焼けが満ちて

暖房で火照る顔が眠気を誘うんだ。



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