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第九十九話「精霊と死神」

 エミリアの魔法の授業と並行して、俺自身も新しい魔法を覚えるとしよう。ルナからウィンドアローを教わるのも良いかもしれない。ウィンドカッターに関しては教わる必要はないだろう。俺自身もウィンドカッターとほぼ同じ使い方が出来るソニックブローが使えるからだ。


 今覚えたい魔法はシャルロッテさんが使っていたガーディアンの召喚だ。魔力で仲間を守るガーディアンを作る事が出来れば、より安全に冒険をする事が出来るだろう。それに、実態を持つ召喚獣は既に強力な仲間が揃っている。これ以上仲間が増えると不便だからな。明日からガーディアンの召喚を練習しよう。ガーディアンの召喚に関する本が必要だな。早速明日買いに行くとしよう。


 それから、忘れてはならないのはエミリアための杖を作る事。杖はエミリアの得意属性に合った物を作った方が良いだろう。初めての授業の際に、炎か雷かを選んで貰ってから杖を作るとしよう。


「サシャ、終わったの?」


 シャーロットは俺が書き上げた羊皮紙に目を通した。


「良いわね。私もサシャから魔法を教わりたいな」

「シャーロットならどんな魔法でもすぐに覚えられると思うよ」

「そうかな。私はもっと強くなりたい……」


 強力な大鎌を作り出して自由自在に操る事の出来るシャーロットなら、どんな魔法でも簡単に覚えられるだろう。魔法の発動速度、使い勝手はクーデルカの魔法よりも優れている。シャーロットの魔法は相手を確実に仕留めるための魔法。クーデルカの魔法は全体攻撃で威力も高いが、一対一の戦いならシャーロットの魔法の方が使い勝手がいい。


 むしろ魔法を教わりたいのは俺の方だ。シャーロットのヘルプリズンは俺のアイアンメイデンよりも遥かに威力が高い。今度シャーロットからヘルプリズンを教えて貰おうか。もし覚える事が出来るなら、今後アイアンメイデンを使う必要もなくなる。


 これでしばらくの予定は立ったな……。明日の朝はエミリアと散歩。その後はシャーロットの服とガーディアンの召喚に関する本を買いに出かけよう。


「シャーロット。明日は一緒に買い物に行こうか。何でも好きな物を買ってあげるよ」

「本当? それは楽しみだわ」


 俺はシャーロットの銀色の長く綺麗な髪を撫でた。最近は忙しくてシャーロットと遊ぶ暇も無かった。召喚士として、自分の召喚した魔物を放っておくのはいけない気がする。シャーロット以外の仲間とは、長い間一緒に過ごしてきたし、面倒も見てきたが、彼女と過ごす時間が圧倒的に足りていない気がする。


 シルフも同じだ。明日からはシルフとシャーロットは俺と一緒に行動してもらおう。召喚獣は道具ではないからな……。仲間として、女性として可愛がってあげなければならない。


「シャーロット、シルフ。お風呂に入ろうか」


 俺はシャーロットとシルフと一緒に大理石の風呂に入った。


「サシャ。お風呂って気持ち良いね」


 シルフは気持ち良さそうな表情を浮かべ、俺に肩に乗っている。風呂の中ではシルフの小さい体だと底に足が付かなくて危険だからだ。


「そうだね。お風呂に入ると毎日の疲れが取れるよ。最近は体を使う事が多いからね。シルフとシャーロットは明日から俺と一緒に動いて貰うからね」

「やった! 楽しみだわ」


 シャーロットが嬉しそうにはしゃいでいる。見た目は大人でも、まだこの世界に生まれて二週間も経っていない。シャーロットもシルフも、これからしっかり育てなければならないな。


 ルナは精神的にも成長して、頼れる剣士になった。勿論、まだ幼い所もあり、常に俺と一緒に居たがるが、最近は少しずつ自立し始めたような気がする。自分よりも幼いシルフやシャーロットが生まれて、お姉さんとして自覚し始めたのだろうか。喜ばしい事だ。


 クリスタルも俺から卒業して新しい弟子が出来た。だんだん毎日が充実してきたな。こんな生活を待っていた。今までは生きるために必死だった。魔王との戦いの準備にも命を懸けた。魔王との戦いに敗れれば、無論、俺達は命を落とし、世界も破滅するに違いないと思ったからだ。


 それ程までに、魔王城から放たれていた魔王の魔力は禍々しく、人間を殺めるには十分な力だった。正直、俺は海賊船で魔王城を目指している間、何度も逃げ出したいと思った。実際に、魔王の禍々しい魔力に怖気づいて船から逃げ出すエドガーの子分も何人か居た。よく生きて帰って来られたな……。


「サシャ。私、新しいローブが欲しいな。ルナのお下がりの装備は私には重たすぎるわ。それからアクセサリーも欲しいな。ルナもクーデルカも皆持ってるし……」


 今のシャーロットはルナのお下がりの鎧を装備しているが、魔術師のシャーロットには必要のない装備だろう。そもそも、後方から戦う魔術師はメイルの様な重装備を身につける必要ない。


「そうだね、シャーロットに似合う綺麗なローブと装飾品を買いに行こう」


 杖は必要ないだろう。シャーロットは魔術師だが杖を必要としない。武器が必要な時は、自ら大鎌を作り上げて使うからだ。何とも逞しい。だが、魔力を増幅させるタイプのアイテムは装備してもらった方がいいだろう。


 それから、騎士団員として身分を証明するために、騎士団の紋章の入ったマントを作るのも良いかもしれない。騎士団の紋章はエイブラハムにでも考えてもらえば良いだろう。現在、騎士団メンバーは、皆それぞれ別の装備を着ていて、統一感の欠片も無い。同じデザインのマントが有れば、より騎士団らしくなるだろう。


 それに、聖戦士や大魔術師、大召喚士、賢者、勇者が一つのパーティーに居るのに、マント一つ装備していなければ恰好もつかない。よし、明日エイブラハムに相談しよう。俺達は風呂を出てからしばらく部屋で雑談をした後、すぐに眠りに就いた。明日の朝はエミリアと散歩だな……。

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