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第九十八話「ボリンガー騎士団の今後」

「それから、最後にひとつ……騎士団の今後についてだけど。俺達騎士団は本拠地を探すためにアルテミス王国を訪れた。当初の目的からかなり遠回りはしたけど、ゲルストナーが根回しをしておいてくれたお陰で、アルテミス大陸内に土地を所有する事が出来た。これから二カ月間、王国の復興を手伝ってから本格的に俺達の本拠地作りを始める」

「本拠地作り……楽しみなの……」

「そうだな。畑を耕して野菜を作ったり、新しく店を作ったりしても面白いかもしれないな」


 ゲルストナーもアイリーンも本拠地作りを楽しみにしている様だ。本拠地作りと平行して、俺達が暮らす家も作らなければならない。俺はゲルストナーとアイリーン、クリスタルとは別々の家で暮らすつもりだ。同じ騎士団の仲間だとしても、彼らも大人だ。今までの様に皆で一緒に過ごすのではなく、個人の時間も必要だろう。


 それ以外のメンバーに関しては、全て俺の召喚した仲間と、俺が育てた仲間だから、俺と同じ家で生活して貰う。クーデルカに関しては俺の召喚獣という感じはしないが、一応、俺が命を授けて生み出したからな。


「俺達はアイリーン、クリスタル、ゲルストナーと別々に暮らそうと思う。それぞれが家を持ち、自由に暮らせる環境を作るつもりだよ」


 俺がそう言うとアイリーンとクリスタルは反対した。


「師匠……私は寂しいです! 家を建てるなら師匠の家の隣に建てます!」

「サシャ、飼い猫を一人で生活させるの……? サシャがあたしを牢屋から解放した瞬間、あたしはサシャの飼い猫になったの。忘れたとは言わせないの……」

「飼い猫って……」

「あたしはサシャの飼い猫なの。離れたくないの!」


 アイリーンが目に涙を浮かべると、俺はアイリーンのモフモフした頭を撫でた。仲間も殺されて、頼れる相手は俺達しか居ないのだから、アイリーンを一人にするのは可哀想だ。しかし飼い猫とは変な表現だな……。アイリーンだけ特別に俺達と一緒に暮らして貰うか。


「久しぶりに一人で暮らすという訳か。サシャの判断は正しいだろう。クリスタルだってガーゴイルとサイクロプスの面倒を一人で見て、一人で生活出来てこそ、一人前の冒険者なのだぞ!」

「そうね……召喚獣の主としても、私は立派な冒険者になります!」


 クリスタルは一人で生活する事を決心をした様だ。勿論、彼女の家は俺の家のすぐ隣に建ててあげよう。家と家を繋ぐ通路を作っても良いかもしれない。家自体は別々だが、騎士団のメンバーが簡単に行き来できる仕組みを作ろう。


 本拠地を作るためには、二カ月の間で建築士を探さなければならない。俺は復興を手伝いつつも、有能な建築士を探し出し、本拠地作りのために雇う事にした。


「とりあえず、今日俺が話したかった事は以上だよ。皆、明日の朝まで自由に過ごしてくれ。解散!」


 俺達は割り当てられた二つの部屋に戻った。だだし、今日はクリスタルも久しぶりに俺と一緒の部屋で過ごす事になった。アイリーンにゲルストナー達と一緒に寝るように伝えると、「飼い猫はいつも主人と一緒なの……」と言って離れなかった。俺が魔王討伐のため離れていた間、余程寂しい想いをしたのだろう。


「サシャ。やっと本格的に活動を再会出来るわね」


 部屋に入るや否や、クーデルカはベッドに寝転んだ。


「そうだね。今までは魔王の事で忙しかったからな……復興が終わったら本拠地作り、本拠地を構えたらまた冒険の旅に出るのも良いかもしれない。ダンジョンに潜ってお宝を探したりして過ごすのも良いだろうな」


 エミリアの魔法の授業に関しても少しずつ考えなければならないだろう。今日は比較的時間があるから、早速エミリアの授業について考える事にした。俺は客室の窓際に置かれている椅子に座り、机に羊皮紙と羽根ペンを置いた。


「サシャ、食堂からエールを貰って来たの……」

「まだ飲むのかい?」

「勿論なの。まだまだ飲み足りないの」


 アイリーンは両手一杯にエール酒と肉を持ってきた。俺の「飼い猫」はいつも食欲旺盛だ。どうやら肉は鹿肉の燻製で、エールはアルテミス王国産の大麦から作った物らしい。アイリーンからエールが注がれたゴブレットを受け取って飲むと、常温で管理されていたのか、生温いアルコールの味がした。きっとこの酒は冷やしたほうが美味しいだろう……。


「クーデルカ、このお酒を冷やしてくれないかな」


 俺はゴブレットをクーデルカに渡すと、ゴブレットが一瞬で冷気に包まれた。


「出来たわよ。アイリーン、私も頂くわ」

「勿論なの」


 俺はクーデルカからゴブレットを受け取ってエールを口に含むと、口の中には冷えた大麦の豊かなコクが広がった。やはりエールは冷やして飲んだ方が美味しいな。エドガーが戻ったら一緒にお酒を飲みたいな。彼は元気にしているだろうか。


 クリスタルは俺がプレゼントした杖を嬉しそうに眺めている。新品の杖なのに、手垢が付かないように綺麗に磨いているようだ。可愛いな……。シルフとルナは談話室から持ってきた童話を楽しそうに読んでいる。


 シャーロットとクーデルカとアイリーンは三人で楽しそうにエールを飲んでいる。仲間の笑顔を見ていると、日々の疲れや悩みは一瞬で消え去ってしまう。俺の特効薬は仲間の笑顔なのだな。さて……。俺は羊皮紙にエミリアの授業について、考えをまとめる事にした。


 『エミリアの魔法授業について』


・『マジックシールド』を最初に教える。

 自分の魔力を制御して物質化させる練習。マジックシールドは簡単な魔法だが、鍛錬を重ねると強力な盾となる。この魔法のメリットは、自分以外の仲間も守りやすいという点。通常の盾を使った防御だと自分の周囲しか防御出来ないが、マジックシールドは任意の場所に盾を作り出す事が出来る。

 

・『ファイア』か『サンダー』の魔法を教える。

 大魔術師のクーデルカ曰く、「得意な属性は一つあれば十分。徹底的に一種類の魔法を覚える事が大切」らしい。俺はその意見に賛成だ。俺自身も、キングからヘルファイアとサンダーボルトを教わるまでは土属性の魔法しか使えなかった。ファイアかサンダー、どちらの魔法を覚えるかはエミリアに選ばせよう。


 土属性は教える必要はないだろう。攻撃に関しては炎と雷の方が遥かに使い勝手が良いし、実際、炎と雷の魔法を覚えてからは土属性の魔法を使う事はほとんど無くなった。


・炎か雷の魔法を覚えたらエンチャントを教える。

 エンチャントは武器に掛ければ攻撃力が上がる。防御の手段としても、工夫次第では雷撃の盾の様な使い方も出来る。覚えておいて損はないだろう。今後、王女が国家間の戦争や魔物との戦いに参加する事になった場合、最前線で戦うよりも後方から兵士の支援を出来た方が、安全かつ、効率良く味方の役に立てるに違いない。


 エンチャントは自分以外の武器に使う事も出来る。エミリアが強力なエンチャントを覚えれば、国王軍の戦力を底上げ出来るに違いない。

 

 こんなところで良いか……。エミリアの魔法の授業に関しては内容が決まった。さて、次は自分自身の魔法の向上について考えなければならない。

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