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第九十話「サシャとエミリアの盾」

 俺はエミリアにクラフトの魔法を使ってアイテムを作って差し上げる事にした。


「エミリア、それなら武器か防具を作って差し上げましょう。お望みの物があれば言って下さい」

「本当? そうね剣は国宝級の物を持っているから……盾が良いわ! 丈夫な盾を作って頂戴!」


 年上に対して物怖じせずに当たり前にように頼み事が出来るのは、王女として人を使う事が慣れているからだろうか。それから、当たり前のように言っていたが、剣が国宝級? やはり幼くても王族なのだな。


 普段、俺は盾を使う事はほとんどない。槍や防具なら何度も作った事があるが、盾か……。まずは素材を選ぶ事にした。素材は魔王討伐の報酬として頂いたインゴットを使えばいいだろう。俺はインゴットの中でも特に強力な魔力を感じる物を手に取った。オリハルコンのインゴットを使おう。


 ただ金属を平たくして盾にしても味気が無いだろう。一国の王女に相応しい装備でなければならない。万が一、王女が襲われるような事があれば、王女の身を守れるような、強い力を持つ盾を作ろう。


 俺は盾に強力なエンチャントを掛ける事にした。効果は、敵の攻撃を防御すると自動的にサンダーボルトで反撃する盾。剣にサンダーボルトのエンチャントを掛けた状態で攻撃すると、剣の攻撃を防御した相手にも雷が流れる、この性質を盾として利用すれば、攻撃した者に対して自動的に雷で反撃する事が出来る。


 やってみるか……。盾には大粒のブルーサファイアを埋め込む事にした。装飾品としても美しくなければ、王女の装備として華が無い。報酬のとして頂いた宝石が大量に詰め込まれた宝箱の中から、一番上等なブルーサファイアを取り出した。素材の準備は完了した俺は早速、盾の製作に取り掛かる事にした。


「皆さん。少し離れていて下さい」


 俺はオリハルコンのインゴットを左手に持ち、右手でヘルファイアを発生させた。俺がヘルファイアを使うと、キングが嬉しそうに微笑んだ。これはキングから教わった最強の炎の魔法。右手でヘルファイアの魔力を調整すると、俺の左手に持ったオリハルコンのインゴットを空中に放り投げた。空中に放り投げたインゴットに向けてヘルファイアを撃つ。


『ヘルファイア!』


 ヘルファイアを放つと、宙に浮かんだインゴットは一瞬で液体状になった。溶けた金属を魔力によって制御する。エミリアは俺の魔法を嬉しそうに眺めている。インゴットが完全に溶けると、すかさずクラフトの魔法を唱える。


『クラフト!』


 魔法を唱えると、空中に浮いた液体状のオリハルコンは、俺の頭の中で想像した盾の形に形状を変えた。盾の中央にブルーサファイアを仕込むと、形づくりは完成だ。あとはエンチャントを掛けるのみ。盾は体の小さいエミリアでも使えるように、薄く軽く作っておいた。サンダーボルトのエンチャントが攻撃を反射するので、盾の厚さは問題ではない。


 俺は左手にサンダーボルトを発生させた。俺が両手で魔法を使うと、近くで見ていた魔術師ギルドのマスターが唸った。


「勇者殿は召喚士ではなかったか? 両手で別々の属性の魔法を操るのは、熟練の魔術師でも至難の業ですぞ!」

「幻魔獣の固有魔法を、二種類も同時に使用するとは! 勇者様は召喚士でありながら、偉大な魔術師なのだな!」


 俺は左手に発生させたサンダーボルトの力を、盾にはめ込んだブルーサファイアの中に流した。


『エンチャント・サンダーボルト!』


 エンチャントを掛けると、ブルーサファイアの中に強力な雷が閉じ込められた。


「おあ! 勇者殿がエンチャントを使ったぞ! 付呪の心得もあるとは!」


 無邪気に喜んだのは陛下だった。エンチャントを掛けると、空中に浮いた盾がゆっくり俺の目の前に降りてきた。


「オリハルコン製。中央に仕込んだブルーサファイアの中には幻魔獣、スケルトンキングの固有魔法である、サンダーボルトのエンチャントが掛けました。この盾は、エミリア様を攻撃する者に自動でサンダーボルトを反射させる雷撃の盾です」


 俺は皆の前で盾を紹介すると、大広間に集まった者は歓喜の声を上げた。


「見事な魔法だった! 勇者殿は召喚士だと思っていたが、まさか幻魔獣の魔法まで使いこなせるとは……」

「これ程までに強力な盾を一瞬で作ってしまうとは……勇者様は鍛冶職人としての才能があるようですね!」


 俺は跪いて盾をエミリアに渡した。エミリアは目に涙を浮かべている。そんなに嬉しかったのだろうか?


「ありがとう……勇者様」


 エミリアは俺はから盾を受け取ると、嬉しそうに両手で抱きかかえた。


「勇者殿! エミリアに素敵な盾を作ってくれて感謝する……わざわざ報酬の中から素材を選んで作るとは……全く欲の無い男だ! 勇者殿が作り上げた盾は、我が一族の家宝になるだろう。間違いない!」


 陛下は俺の肩に手を置いて嬉しそうに笑っている。喜んでもらえて何よりだ。俺は宴の続きを楽しむ事にした……。

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