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召喚物語 - 召喚魔法を極めた村人の成り上がり -   作者: 花京院 光
第二章「アルテミス王国編」
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第八十二話「仲間の元へ」

 ワイバーンに乗って俺達は急いでアルテミシアに向かって飛び始めた。仲間には移動中にヘルフリートの死や、魔王の正体について教えた。勇者レオンハルトが何故魔王になったのか、彼が生前の書き残した手記を読めば理解できるだろう。だが、今は急いでアルテミシア防衛パーティーに合流しなければならない。俺はギルドカードで仲間の安否を確認することにした。


『ボリンガー騎士団』

 団長:『勇者 LV120 サシャ・ボリンガー』

 副団長:『育成士 LV45ゲルストナー・ブラック』

 団員:『幻魔獣 LV55 キング』

 団員:『幻魔獣 LV53 ルナ』

 団員:『幻魔獣 LV50 ワイバーン』

 団員:『幻魔獣 LV38 シルフ』

 団員:『幻魔獣 LV60 シャーロット』

 団員:『幻獣 LV35 ユニコーン』

 団員:『幻獣 LV30 サイクロプス』

 団員:『魔獣 LV15 ガーゴイル』

 団員:『魔術師 LV50 クーデルカ・シンフィールド』

 団員:『鍛冶屋 LV43アイリーン・チェンバーズ』

 団員:『幻獣の召喚士 LV55 クリスタル・ニコルズ』



 俺の職業の欄が勇者になっている。それに、俺のレベルが120まで上昇している。一体どういう事だ? もしかして魔王を倒した事で勇者になったのだろうか? それとも、勇者の剣を受け継いだ者が勇者になるのだろうか。俺が勇者か……。俺にそんな資格があるのだろうか。今は考えている場合ではないな……。


 俺達は魔大陸を飛び立ち、日が暮れるまで王国を目指して移動した。流石に夜間の移動は危険だと判断して、俺達は適当な島を見つけて野営をする事にした。野営はいつも通り、アースウォールを応用した土の家での滞在だ。シャーロットは初めての野営を楽しんでいるみたいだ。朝になったらすぐに出発しよう……。


 王国を襲撃しているであろう魔物達が、魔王の死に気が付けば、知能の高い魔物なら襲撃を止めるに違いない。幻獣以上の魔物は、魔王の死を知ってまでも王国を襲ったりはしないだろう。勿論、これは全て俺の憶測だが……。知能が高い魔物は、意味もなく人間と争ったりはしないはずだ。


 敵が魔王の死、指揮官の死を認めるかどうかは別だ。この大陸に漂っていた魔王の魔力を感じられない今となっては、既に魔王軍は撤退している可能性もある。兎に角、すぐにアルテミシアに向かって事態を収拾しなければならない事だけは確かだ。


「サシャ、また考え事してるの……?」

「ああ、ちょっと今後の事をね。それにしても、ルナが無事でいてくれて良かった」

「サシャが来てくれなかったら私達は殺されていたよ」

「間に合って良かったよ。俺はルナを失ったら生きてゆけそうにないからね」


 俺は急にルナが愛おしくなって、彼女のしなやかな体を抱きしめた。ずっとこうしていたい……。世の中のしがらみから解放されて、ルナや仲間達と平和に過ごしたい。


「サシャ、会いたかったんだよ……」

「俺もだよ。ルナ……」


 ルナは少しの間でも俺と離れていると心配になる性格だからな。俺は卵の時からずっとルナの事を知っている。これから先の人生も、ルナを悲しませるような事があってはならない。俺には召喚した仲間を幸せにする義務があると思っている。いつも思っている事だが、召喚獣は召喚士の道具ではないからな。


 騎士団の団長として、仲間達が幸せに暮らせる環境を作らなければならない。それは俺にしか出来ない事だ。自分に与えれらた力、デュラハン、ヘルフリート。それに、剣を託した勇者レオンハルトの力。俺は死んでいった仲間達の思いを背負って生きていく。より良い世界を作ろう。それが力を持つ者の使命だ……。


「サシャ、もう私から離れないでね……」

「勿論だよ、ルナ……」


 俺はしばらくの間、ルナを抱きしめていた。俺達が抱き合っていると、クーデルカが少し嫉妬した表情で俺を見ているのに気が付いた。


「クーデルカ、おいで……いつも苦労かけてるね」


 俺はクーデルカも一緒に抱きしめた。


「良いのよ。私はあなたの物……全てはあなたのため」

「ああ……これからも大切にするよ」


 クーデルカは目に涙を浮かべている。さっきまでは緊張した表情を浮かべていたが、俺が抱きしめると少し安心したようだ。誰だって仲間が転移されたら正気ではいられないだろう。きっとクーデルカは急いで俺を探し出そうとするルナを宥めてくれていたに違い無い。動揺して魔王城に飛び込めば相手の思う壺だ。ルナもクーデルカも、魔王と剣を交えたにも関わらず、命を落とさずに生きている事が奇跡の様だ。


 魔王の強さは俺の想像を遥かに上回っていた。きっとシャーロットを召喚しなければ魔王は倒せなかっただろう。それに、ヘルフリートやデュラハンから力を授かっていなければ、俺の力だけでは魔王に勝てなかっただろう。世の中にはまだまだ強い人間がいるのだな。俺が知らないだけで、自分よりも遥かに強い魔物や冒険者が存在する筈だ。


「サシャ、お腹空いたよ」


 シャーロットはとぼけた様な表情をして椅子に座った。考え続けていても仕方がない。まずは食事だ。急いでも埒が明かない。明日の朝まではこの場所で体力と魔力を回復を回復させよう。


 俺は土で作った机の上に皿を並べた。マジックバッグの中には一通りの食器や、数日分の食料の蓄えがある。俺は乾燥肉や乾燥野菜を使って簡単なスープを作る事にした。


「私も料理してみたい」


 シャーロットが料理に興味を示した。ルナやクーデルカは普段はほとんど料理をする事はない。騎士団の主要メンバーの中では、ゲルストナーとクリスタルが料理を担当しているからだ。シルフは体の大きさの関係上、料理をする事は出来ない。シルフの小さな体では人間用の食器すら持てないからだ。


 俺はシャーロットと共に、野菜と肉を煮込んだ簡単なスープを作った。作ると言っても煮込んだ鍋にゲルストナーが準備した調味料を入れるだけだ 魔王との戦いで緊張しきっている心を落ち着かせるためにも、少しだけ葡萄酒を飲む事にした。それに、シャーロットが仲間と打ち解けられるようにも、食事の雰囲気を良くしておきたかった。


 食事が始まると、俺の心配とは裏腹に、シャーロットはルナやクーデルカと談笑している。話題はまだシャーロットが会った事のない仲間の事だ。ルナとクーデルカは俺と出会った時の話や、今までの旅の事について話して聞かせている。


 シャーロットの性格はルナに似ているな。だが、戦闘に関してはルナより冷静な部分もある。デス、死神という魔物本来の性格なのだろうか。魔王との戦闘の時も、動揺すらせずに俺の指示通りに動いてくれた。クーデルカに近いタイプの戦い方だ。ルナは戦闘時には感情が表に出やすい。特に仲間が危険な時は、すぐに敵との距離を詰めて戦う癖がある。


 逆にクーデルカは危険な状況に陥っても、敵とは適度な距離を取り、タイミングを計りながら戦う。クーデルカの魔法の性質上、仲間を巻き込む可能性が高いためか、魔法を撃つタイミングに関してはかなり慎重だ。ルナとクーデルカは相性が良い。この二人が共に戦えば幻獣クラスの敵なら確実に倒せるだろう。


「サシャ、そろそろ眠いよ……」


 シルフは俺の膝の上で食事をしていたが、眠たくなってしまったみたいだ。俺はシルフを先に寝かしつけた。シルフにも苦労を掛けているな。シルフは生まれてから今まで、魔王討伐のために俺と訓練を積んできた。こんなに小さい体で、俺や仲間のために頑張ってくれている。俺は本当に良い仲間に恵まれたな。俺はベッドにシルフを寝かせ、彼女が眠るまで頭を撫でていた。


 シルフは小さな手で俺の手を握りながらすぐに寝てしまった。さて、寝る前に体に付いた汚れや匂い落とそう。俺の体にはオーガの返り血や魔王城で付いたホコリなどで汚れきっている。


「ルナ、クーデルカ、お風呂に入るよ。それにシャーロットも」


 俺達は久しぶりに皆でお風呂に入った。シャーロットは人生で初めての風呂だ。気持ちよさそうに湯船に浸かっている。


 そういえば、ワイバーンの体を洗った事が無かった。そもそもワイバーンは体を洗うのだろうか。今までそんな事を考えた事も無かった。帰ったらゲルストナーに聞いてみよう。魔物のエキスパート、育成士のゲルストナーは魔物に関する事は大抵知っている。頼りになる仲間だ。


 俺はルナとシャーロットの髪と体を綺麗に洗ってあげた。クーデルカは……大人だから自分で洗ってもらった。彼女を洗うのは恥ずかしすぎる。精神年齢も肉体の年齢も俺より上だからな……。それに、サキュバスの体を見ているとどうも興奮してしまう。


 勿論、ルナやシャーロットの体もかなり魅力的だが、サキュバスのクーデルカは更に性的な魅力がある。風呂に入っている時はなるべくクーデルカの体を見ないようにしているが、俺がクーデルカを見ないようにしていると『サシャは私が嫌いなの?』と言う事があるから、恥ずかしさを堪えながら彼女の体を洗ってあげる事もある。


 久しぶりにゆっくりと仲間との風呂を楽しんだ後、俺達はシルフが眠るベッドで皆で寝る事にした。今日は早く寝て、明日の早朝にアルテミシアを目指して出発しよう。ワイバーンの移動速度なら数日中にアルテミシアに着くだろう。俺はいつも通りルナの胸に顔を埋めて寝る。信じられない程柔らかくて暖かい。


 彼女は俺の首に腕を回し、何度も俺の頬に接吻してくれた。少しでも俺と離れた事が寂しかったのだろう。暫く目を瞑っていると、俺は疲労のあまり、すぐに眠りに落ちた……。

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