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召喚物語 - 召喚魔法を極めた村人の成り上がり -   作者: 花京院 光
第二章「アルテミス王国編」
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第七十話「シャーロットの魔法」

 俺は早速シャーロットのもう一つの魔法を確認する事にした。魔法名はヘルプリズン。一体どの様な魔法なのだろうか。攻撃魔法なのは間違いないだろうから、俺は再び土の壁を作り上げた。


 シャーロットは右手を土の壁に向け、魔力を込めた。今回の魔法は片手で使用するんだな。暫く魔力を込め続けると、シャーロットの右手には黒い魔力が溢れ出した。まるでキングのヘルファイアの様な力を感じる。


『ヘルプリズン!』


 シャーロットは魔法を唱えると、右手を思い切り地面に叩きつけた。床からは黒い魔力から作られた無数の大鎌が飛び出た。トラバサミの様な動きで土の壁を捉えると、無数の大鎌が土の壁を串刺しにした。


 これがシャーロットの力か。最高の完成度のアースウォールを一撃で串刺しにしてしまうとは。俺のアイアンメイデンと性質は似ているが、攻撃力はシャーロットのヘルプリズンの方が遥かに強い。黒く光る大鎌が恐ろしいが、攻撃手段としては最高だ。頼もしい仲間が増えて幸せを感じる。


「シャーロットは強いんだね……! サシャのアースウォールに穴を開けるなんて」

「凄い魔法だよ。全く……幻魔獣の力にはいつも驚かされる」

「ありがとう。サシャもシルフも私が守ってあげる」


 俺達は暫くその場で魔力を回復させるために休憩した。間もなく魔力が完全に回復するだろう。この部屋に隅にはスケルトンキングの死骸がある。一応燃やしておこうか。この世にスケルトンキングはキング以外に必要ない。素材を悪質な召喚士に拾われたら悪用される可能性もある。


 一人では幻魔獣を召喚出来ないだろうが、複数の召喚士が同時に魔力を注げば、召喚出来る可能性もある。俺はヘルファイアでスケルトンキングの骨を燃やした。ヘルファイアは威力を最大まで上げれば、骨さえも消し去る事が出来る最強の炎だ。この魔法でヘルフリートが死んだと思うと、胸が張り裂けそうだ。


「サシャ。大丈夫?」

「ああ。何とかね」

「何かあったの?」

「実は、大切な仲間を失ったんだ。俺とルナの剣術の指南役でもあった、聖戦士のヘルフリート・フェラー。彼は偉大な戦士だった」


 俺は静かに横たわるヘルフリートの体に触れた。もはや生前の様な暖かい魔力はない。俺が彼の代わりにこの戦いを終わらせなければならない。


 シャーロットは俺を強く抱きしめると、優しく微笑みながら俺の頭を撫でてくれた。油断すれば今にでも泣き出してしまいそうだ。全てを投げ出して逃げてしまいたいと思う時がある。だが、俺の様に、民を守る力を持つ者が悪を討たなければ、世界は再び魔王に支配されてしまう。俺がやるしかないんだ……。


 この先でどんな敵が待ち伏せているか分からない。魔王城で一番最初に遭遇した魔物が幻魔獣のスケルトンキングだという事は、魔王に近い位置にはスケルトンキングよりも強い魔物が配置されているだろう。スケルトンキングよりも強い魔物が存在するなんて想像もしたくないな。


 考え続けても状況は変わらない。魔力は既に回復し、体は活力に満ちている。城内を探索し、魔王の居場所を突き止め、忌まわしき魔王を倒す時が来た。


「シルフ、シャーロット。魔王討伐に向かおう!」

「うん!」

「わかったわ」


 俺はいつも通りシルフを肩に乗せた。シルフとの距離は近ければ近いほど良い。戦闘時に展開させる防御魔法をより強く作り上げられるからだ。シルフのスピリットシールドは魔力の盾を作る魔法。その防御力は俺のマジックシールドよりも強い。防御する範囲が狭い方が、防御魔法は強度を増す。反対に、防御範囲を広げれば、魔力が拡散されるので、防御魔法の強度は下がる。


 俺達の戦い方は、お互いに守りあって戦う。シルフはグランドクロスを使えるが、攻撃は基本的に俺が担当している。俺が怪我をすれば、シルフはすぐに回復魔法を掛け、防御が必要な時には、瞬時に防御魔法を展開してくれる。攻撃しながら防御も出来る最高のコンビだ。


「シャーロットは俺の後方から付いてきてくれるかな? 敵の攻撃は俺とシルフで防ぐから、シャーロットは攻撃だけに専念してくれ」

「ええ。任せて頂戴」


 シャーロットは「デスサイズ」を一本だけ作り出して両手に構えている。どうやらデスサイズの魔法は、作り出した複数の大鎌を対象に飛ばすだけではなく、単一の武器としても作る事が出来るみたいだ。


 アースランサーと同じ原理の魔法だが、俺の場合は土を作り出して攻撃をする。シャーロットは自身の魔力のそのまま武器に変換している。魔法が完成するまでの速度は、魔力から作り上げた土を武器に変えるよりも、魔力から直に武器を作れるシャーロットの方が早い。


 俺はヘルフリートのタワーシールドを左手に持ち、右手にデュラハンの大剣を構えた。盾を使った戦闘には慣れていないが、ヘルフリートの技術である、「シールドバッシュ」を習得している。シールドバッシュはグランドクロスの軌道すら変える事が出来る強力な技だ。使い方は、盾に魔力を込め、力づくで殴るだけなのだとか。左手でスラッシュを撃つ様な感覚で使えば、成功すると言っていた。


 ヘルフリートとは海賊船での移動時間に、お互いの戦い方を語り合った。何度も剣を交えたからか、俺はヘルフリートの戦い方を完璧に覚えている。彼の力を授かったからだろうか、自分の中にヘルフリートが居る様な感じがする。今なら完璧にヘルフリートの技を再現出来るだろう。


「サシャ。気をつけてね……」

「分かってるよ」


 シルフはオリハルコンの杖を持って魔力を集中させている。敵と遭遇する前に、予め魔力を溜めておくのは戦闘の基本だ。敵と遭遇してから、魔力を放出して防御するのでは反応が遅くなってしまう。防御の用意は万全という訳だ。


「シャーロット、後ろからの奇襲も気をつけるんだよ。くれぐれも俺とシルフから離れないように。防御の魔法は、距離が近ければ近いほど強く作れるからね」

「ええ、気をつけるわ」


 仲間同士で固まって行動していた方が、敵から攻撃を受けた時に一人の防御魔法だけで仲間を守る事が出来る。仲間同士の距離は近ければ近いほど良い。戦い方や武器の性質にもよるが、接近戦闘を得意とする人間は、遠距離での攻撃を得意とする魔術師と相性が良い。お互いの弱点をカバーしながら戦う、これが俺の戦い方だ。


 俺達は石造りの部屋を出て魔王城の探索を始めた……。 

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