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第七話「幻魔獣の魔法」

 今は朝の六時。早朝に目を覚ました俺は、武器や防具の手入れをしてから、心地良さそうに眠るキングを起こした。今日も廃坑で狩りを行う。キングの魔法を見せて貰うつもりだ。仲間に魔法の使い手が居れば、更に効率良く狩りが出来るだろう。


 紫色の卵を抱えて、俺とキングは一階の食堂に降りた。パンとミルク、それからチーズと乾燥肉を食べると、直ぐに出発する事にした。狩りには卵を持っていく事にした。キングが少しでも一緒に居たいと言ったからだ。きっと自分が選んだ卵だから可愛いのだろう。町を出て深い森に入り、廃坑を目指した。



〈廃坑〉


 町外れの廃坑入口に着いた。流石に卵を持ちながら戦闘は行えないので、付近の茂みの中に置いておいた。今日の目的はスケルトンのドロップアイテムを集める事だ。アイテムを集め、ロンダルクさんに買い取って貰い、装備を充実させる事が当面の目標だ。その前に、まずはキングの魔法を見せて貰う事にしよう。


「キング、廃坑で狩りを行う前に、魔法を見せて貰っても良いかな?」


 確か、キングが使用出来る魔法は、ヘルファイアとサンダーボルトだ。まずはヘルファイアを見せて貰う事にした。キングは廃坑付近の廃屋に右手を向けると、意識を集中させて魔力を集めた。瞬間、熱風のような強烈な魔力が炸裂し、辺りの気温を一気に上昇させた。


『ヘルファイア!』


 キングが魔法を唱えると、彼の右手からは巨大な炎が放出された。キングの炎は廃屋をいとも簡単に燃やし尽くした。「燃やす」という表現よりも「消し去る」という表現の方が適切かもしれない。彼の魔法は、瓦礫一つ残さずに廃屋を消し去ったのだ。驚異的な威力だ。近くに居るだけで強烈な熱風を感じた。これが幻魔獣の力か。


「キング。君は本当に強いんだね! 俺も早く君に追いつけるように強くならないとね」

「サシャ……」


 キングは恥ずかしそうに俺を見つめながら、俺の服の袖を掴んだ。小さくて可愛らしいが、魔法は信じられないほど凶悪だ。どんな魔物でも一撃で消し去る事が出来るのではないだろうか。木造の廃屋を一瞬で消滅させられるのだからな。自分の強さを知っているのに、俺の様な駆け出しの冒険者と共に居てくれるなんて、やはりキングは最高の仲間だ。


 しかし……世の中は広いんだな。ヘルファイアの様な強力な魔法が存在するとは、想像した事も無かった。まるで空想の世界の魔法。現実ではないような桁違いの破壊力。魔法を作り上げる速度も、威力も一流だ。


 続いてサンダーボルトを見せて貰う事にした。キングはメイスを頭上高く掲げると、上空には雷雲が集まり始めた。天候すらも一瞬で変化させられる魔法なのか。キングがメイスを振り下ろした瞬間、雷雲の中から一筋の雷撃が爆音を立てて放たれた。


 爆発的な魔力を周囲に撒き散らし、目にも留まらぬ速度で廃屋を捕らえると、地面を揺るがす程の衝撃と、魔力の爆発を体に感じた。俺はキングの魔法を目の当たりにして、自分の死を悟った。幻魔獣の魔法の前では、俺の様な人間はあまりにもちっぽけだ。幻魔獣が一体で国を一つ滅ぼという話も、今なら理解出来る。


 サンダーボルトは精確に廃屋を消し去っていた。不思議な事に、周囲に被害は無く、狙った場所に雷撃を落とせるみたいだ。スケルトンはメイスを振り回すだけの魔物だと思っていたが、キングは違う。高度な魔法を使用し、人間の言葉を理解する。きっと知能だって俺よりも高いのだろう。武器を使った戦闘よりも、後方から魔法支援をして貰った方が、キングの力を活かす事が出来るかもしれない。


「凄い魔法だったよ! これからも俺を支えてくれるかな?」

「サシャ……」


 キングの小さな体を抱きしめ、白骨の頭を撫でる。骨のなのに少しだけ暖かいのは気のせいだろうか。キングがこれ程までに強力な魔法の使い手だったとは、想像すら出来なかったが、キングの力を借りれば、俺達は直ぐに冒険者として成り上がる事が出来るだろう。


 だが、廃坑での狩りではサンダーボルトもヘルファイアも使えない。威力が高すぎて廃坑が崩壊する可能性もあるからだ。今日のところは、魔法を使用せずに武器を使用してスケルトンを狩る事にしよう。少しでも早くキングに追いつくために、率先して廃坑内に巣食うスケルトンと戦闘を行わなければならない。



〈廃坑内〉


 予め準備しておいた松明を取り出し、火を点ける。魔物の気配を感じる暗闇をゆっくりと進む。スケルトンと遭遇すれば、ショートソードの一撃で討伐した。既にスケルトン相手なら片手でも勝てるようになり、攻撃に際に魔力を剣に流せば、威力が上がる事も分かった。


 暫く坑内を進むと、炭鉱夫達の休憩所だろうか、狭い部屋を見つけた。岩を掘って作られた空間には、朽ち果てたベッドが乱雑に置かれていた。休憩所には背の高いスケルトンが居たので、俺はキングを待機させ、ショートソードを握り締めて気配を消した。ゆっくりとスケルトンとの距離を縮め、剣を振りかぶる。瞬間、スケルトンが振り向いた。


 スケルトンは手に持ったメイスで俺の攻撃を受けたが、俺は瞬時にスケルトンの胴体を蹴って距離を取った。スケルトンがメイスを振り上げて攻撃を仕掛けた時、ショートソードでの突きを放ち、骨の体を砕いた。スケルトンとの戦い方もだいぶ分かってきた。


 室内を見渡すと、部屋の隅に小さなチェストを見つけた。チェストの中には炭鉱夫の持ち物だろうか、革製の手袋とピッケルが入っていた。状態も良かったので、鞄の中に仕舞っておく事にした。


 

 さて、今日は廃坑の一階に居るスケルトンの退治と廃坑内の探索をしよう。キングのレベルも上げたいし、更にアイテムを集めてお金を作らなければならない。鞄からパンを出してキングと共に食事をした。十分ほど休憩をしてから、廃坑の探索を再開した。


 薄暗い坑内を松明片手に進む。それから俺達は廃坑の一階部に巣食うスケルトンを狩り続けた。体に疲労を感じて始めた所で、俺達は今日の狩りを終える事にした。全ての戦利品を鞄に仕舞い、廃坑を後にした……。


〈スケルトンのドロップアイテム〉

・錆びついたメイス×12 メイス×2 錆びついたグラディウス スケルトンの頭骨×15 砕けた骨×15 錆びついた指環 ヒールの魔導書

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