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召喚物語 - 召喚魔法を極めた村人の成り上がり -   作者: 花京院 光
第二章「アルテミス王国編」
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第五十七話「出発までの時間」

 装備を新調した俺達は、ゲルストナー達の今後の滞在場所を探す事にした。いつまでも高級な宿に泊まっている訳にもいかないので、安く滞在できる場所を探す必要がある。召喚士ギルドに顔を出してみようか。アルベルトさんも魔王討伐に参加する事になるのだろうからな……。


 召喚士ギルドに入ると、アルベルトさんが荷造りをしていた。彼は俺を見つけると、満面の笑みを浮かべて俺の手を握った。


「ボリンガー様と魔王退治に行けるなんて夢の様です!」

「随分楽しそうですね、アルベルトさん」

「それはもう。ボリンガー様の戦いをこの目で見られるのですから!」

「アルベルトさんも魔王との戦いに参加するんですよね」

「はい! 私とシャルロッテが同行します」


 シャルロッテさんは今日は綺麗な深緑色のローブを着ている。手には大きなトランクを持っており、既に準備が出来ている様だ。何だかクーデルカの様な上品な雰囲気があり、とても美しい。


「もしかして……ボリンガー様の胸元に居る生き物は、精霊ですか?」

「はい! 風の精霊・シルフです。さっき召喚したんですよ」

「私もボリンガー様の召喚が見たかったです。シルフも確か幻魔獣でしたよね」

「そうですよ。ところでシャルロッテさん。俺の事はサシャって呼んで下さい。ボリンガー様なんて呼ばれると恥ずかしいですから……」

「そんな……騎士団の団長を呼び捨てにするなんて!」

「別に良いんですよ。シャルロッテさんの方が年上じゃないですか」

「そうですね。私の方が三歳年上でした。それでは、サシャ。何か私に手伝える事があれば、何でもお申し付け下さい」

「ありがとうございます! シャルロッテさん。それでは一つ相談があるのですが……」


 俺はシャルロッテさんにパーティーを二つに分けた事、ゲルストナー達の滞在場所を探している事を伝えた。シャルロッテさんは召喚士ギルドの寮を貸してくれると、申し出てくれた。


 これで滞在場所は決まった。ヘルハウンドに関しては、ゲルストナー達とアルテミシアを防衛して貰う事にした。正式な飼い主はアルベルトさんだが、俺が召喚したからだろうか、ヘルハウンドは随分俺に懐いている。


「ヘルハウンド。アルテミシアを頼むよ」


 ヘルハウンドを持ち上げて視線を合わせると、彼は嬉しそうに吠えた。それから俺達はアルベルトさんの支度を手伝った後、召喚士ギルドを出て宿に戻った。明日の朝までは宿で過ごし、明日の早朝にエドガーの海賊船で魔王城を目指す。


 今日はゆっくりと宿で休もう。魔王との戦いで仲間を死なせるつもりは無いが、もしかすると今日が仲間と過ごせる最後の日になるかもしれない。何の力も無い村人だった俺が、魔王に挑むんだ。魔王と戦って死なない方が奇跡だと思う。俺達は夕食までの間、各々の部屋で休む事にした。


 シルフとルナ、クーデルカとアイリーンを連れて部屋に戻る。シルフは初めて見る宿に興奮しているようだ。楽しそうに羽根を広げて飛んでいる。


「部屋は気に入ってくれたかな?」

「うん……!」


 シルフが初めて返事をしてくれた。透き通る様な美しい声だ。俺はシルフの綺麗な髪を撫でた。シルフは心地良さそうに目を瞑っている。体は小さいが、強力な魔力を体内に秘めている様だ。魔王城までの移動の間、シルフとも戦闘の訓練を積み、パーティーとして戦える様にならなければならない。これから更に忙しくなりそうだな。


 俺がシルフの頭を撫でていると、アイリーンが俺に頬ずりをした。暫く会えなくなるからだろうか、寂しそうに俺を見つめながら、何度も頬ずりをしている。アイリーンとも別れる事になるのは寂しいな。魔王との戦いに連れて行きたいところだが、彼女にはゲルストナーの補佐を頼む事にしている。アルテミシア防衛パーティーの生存率を上げるためにも、敵の動きに敏感なアイリーンをゲルストナーのパーティーに入れる必要があるからだ。


「サシャ。必ず帰ってくるの。魔王なんかに殺されたらだめなの……」

「勿論だよ、アイリーン。必ず魔王を倒して戻って来る」

「あたしはサシャまで失いたくないの……もう大切な人を失うのは嫌なの」

「大丈夫。必ず戻ってくるよ」

「約束なの……」

「ああ、約束だ」


 必ず魔王に勝てるという保証は無い。勇者の様な魔法と剣に精通した者でなければ、魔王を倒す事は不可能。十五歳の元村人の俺がどこまで戦えるのだろうか……。


 ルナは新しい装備を楽しげに眺めている。明日から魔王城に向けて出発するというのに、少しも恐れている様子は無い。まだ幼いからだろうか。デュラハンさえも倒した魔王と戦わなければならないのに……。


 ルナはレイピアを抜いて、新しい装備の性能を確かめている。疾風のエンチャントが掛かっている魔装だ。攻撃速度と移動速度を大幅に上昇させている。ルナは目にも留まらぬ速度で突きを放つと、攻撃が早すぎて、剣を目で追う事も出来なかった。もはや俺ではルナの剣を受け止める事は不可能だろう。


「サシャはルナが守る。だから大丈夫だよ。サシャ」

「ありがとう。いつも頼りにしているよ」


 俺はルナを抱き寄せると、ルナは俺の頬に口づけをした。魔王との戦いが終わったら、仲間達と休む時間を作ろう。村を出てから随分忙しく生きてきたからな。


 それから、出発する前にクリスタルの召喚を許可しよう。無事に王国に着いたんだ。約束していた召喚魔法の許可をしなければならない。一体どんな魔物を召喚すれば良いか、ゲルストナーと相談して考えなければならないな。


 今日はせっかくの休みなんだ。明日の出発のための荷物をまとめてから、俺達は早い時間から葡萄酒を飲む事にした。生まれたばかりのシルフに、仲間達の事や、これまでの旅の話をしながら、夕方まで部屋でくつろぐと、俺達は一階に降りてゲルストナー達と夕食を頂く事にした……。

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