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召喚物語 - 召喚魔法を極めた村人の成り上がり -   作者: 花京院 光
第二章「アルテミス王国編」
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第五十六話「魔王討伐に備えて」

 会議室を出た俺達は装備を整えるために商業区に向かった。生まれたばかりのシルフはずっと俺の胸元に顔を埋めている。生まれてすぐに様々な人に囲まれ、これから魔王を倒しに行くのだ、緊張もすれば不安もあるだろう。俺がこの子を守らなければならないな……。


 本当はシルフを魔王討伐に連れて行きたくないが、敵の強さが分からない以上、幻魔獣の様な強力な力を持つ仲間の協力が必要だ。まさか明日、魔王を倒しに行く事になるとは……。全く人生は何が起こるか分からないものだ。


 シルフは俺の服の中から顔を出し、町や仲間を楽しそうに見つめている。まるでルナが幼い頃の様だ。今度時間が出来たら、シルフを連れてこの町を見て回るとしよう。俺は商業区に向かいながら、ギルドカードでシルフのステータスを確認する事にした。


『幻魔獣 LV0 風の精霊・シルフ』

 装備:なし

 装飾品:なし

 魔法:スピリットウィンド スピリットシールド グランドクロス


 使用可能な魔法はスピリットウインド。これは回復系の魔法だろう。それから、スピリットシールド。これは防御魔法に違いない。俺やクリスタルが使うマジックシールドに近い魔法だろう。そして最後はグランドクロス……? まさか、どうしてシルフのステータスにグランドクロスが表示されているのだ?


 グランドクロスとはデュラハンの技ではなかったのか? もしかすると、シルフは俺の能力を吸収して生まれたのだろうか。召喚魔法とは、召喚士の魔力を糧に魔物を生み出す魔法。シルフが俺自身の能力を引き継いでいてもおかしくはないが、こんな事は初めてだ。


「サシャ、召喚獣が召喚士の技術を引き継ぐ事もある。ただし、召喚士と召喚獣の相性、召喚獣と技の相性が完璧に一致した場合だけだ」

「という事は、シルフは俺と相性が良いんだね」

「そうだな。グランドクロスとも相性が良かったのだろう。こんな事は滅多に無いが、高い魔法能力を持つ幻魔獣だからだろう。召喚士の技術を生まれながらにして持つ精霊か……」


 シルフは恥ずかしそうに俺を見上げている。彼女は頬を赤らめると、服の中に隠れて仕舞った。この子は恥ずかしがり屋なのだだろう。キングが生まれた時とは大違いだな。彼が生まれた時は俺の命を助けてくれた。キングとの出会いも、もう随分昔の事の様だ。思えば旅に出てから色々な事があったな。


 田舎の村に住んでいた俺は故郷を飛び出し、様々な地域を旅しながら仲間を増やした。旅の目的地であるアルテミス王国に着いたと思ったら、今度は魔王討伐に行く事になった。人生に偶然は無いと思っている。ちょうど良いタイミングで魔王が復活したのなら、俺が魔王を倒さなければならないという事だろう。


 前向きに考えて生きるしかない。どのみち、魔王を放っておく事は出来ないのだから。俺は最高の冒険者になると決意して村を出たんだ。レベルに見合う冒険者になるために、仲間が誇れる団長になるためにも、全力で魔王を叩く。


 暫く町を進むと、一際大きな武具屋を見つけた。店の看板でステータスを確認してみよう。


〈武器・防具の専門店 アルテミシア〉

『伝説の鍛冶職人 LV52 エイブラハム・アルムガルト』


 店の名前はアルテミシアか、取り扱っているアイテムに自信がなければ、アルテミシアという名前は使えないだろう。何と言っても王国の首都の名前だからな。それに、「伝説」という称号を持っている。この店はかなり有名な鍛冶職人の店の様だ。


 早速店内に入る事にしよう。木製の大きな扉を押し開けて店内に入ると、店主だろうか、巨体のドワーフが笑みを浮かべて近づいてきた。何だかエドガーと雰囲気が似ているな。長く伸ばした黒髪に髭。筋肉は異常なまでに発達しており、小麦色の肌に革の作業着を着ている。


「もしかして、お前さんが召喚士のサシャ・ボリンガーか?」

「はい。幻魔獣の召喚士、サシャ・ボリンガーです」

「やはりな。今朝エドガーが来て、サシャという若者が来たら店で一番良い装備を出してくれと頼まれている。俺はエドガーの兄のエイブラハムだ。よろしくな!」

「エドガーのお兄さんですか? 宜しくお願いします!」

「うむ。サシャは俺の弟を軽々と吹き飛ばしたんだってな! 海賊ギルドのマスターを凌駕する力を持つ冒険者か。会えて嬉しいぞ!」

「こちらこそ、お会い出来て光栄です、エイブラハムさん!」

「俺の事はエイブラハムで良い。敬語も使うな」


 エイブラハムは俺の肩に手を置くと、俺の体には暖かい火の魔力が流れてきた。キングの様な力強い魔力を感じる。もしかするとこの人はエドガーよりも強いのではないだろうか。それからエイブラハムは仲間達に両手を向けて、小さく魔法を唱えた。鑑定の魔法だろうか。


 エイブラハムは暫く考え込み、店をゆっくりと回りながら次々と装備を持ってきた。エイブラハムはミスリル製の大剣を持つと、ゲルストナーに渡した。ゲルストナーが武器を握った瞬間、心地良い魔力が流れ始めた。攻撃速度を上昇させるエンチャントが掛かっているらしく、ゲルストナーがスラッシュを放つと、剣の動きが早すぎて、目で捉える事すら出来なかった。


 元々ゲルストナーの剣は瞬速だが、彼の剣速が更に強化れている様だ。ゲルストナーは満面の笑みを浮かべると、元々使っていたロングソードをエイブラハムに渡した。新たな武器一本で戦っていこうという決意だろうか。


 それからエイブラハムは次々と仲間の装備を選んだ。ゲルストナーには「ミスリル装備」、ルナには「疾風の魔装」、クリスタルは「白銀装備」、シルフには普通のローブとオリハルコンの杖を渡した。


「エイブラハム。どうしてシルフには普通のローブなの?」

「俺の店には精霊が使える装備は取り扱っていないんだ。そもそも、精霊は強力な魔力の盾で自分自信を守る事が出来る。基本的には防具は必要ないだろう」


 シルフの固有魔法、スピリットシールドがそれほど強力だったとは知らなかった。仲間達は新たな装備を受け取り、その場で直ぐに装備してから店を出た。

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