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召喚物語 - 召喚魔法を極めた村人の成り上がり -   作者: 花京院 光
第二章「アルテミス王国編」
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第五十五話「風の精霊・シルフ誕生」

 魔王城までの移動にはエドガーの海賊船を使う事になった。魔王城はアルテミス王国の北東に位置する島にあるのだとか。魔王討伐のためのメンバーを選ばなければならないな……。


「サシャ、私はあなたと一緒に魔王を倒しに行くわよ」

「ありがとう、クーデルカ。よろしく頼むよ」

「ルナもサシャと行く!」

「ルナも来てくれるんだね。助かるよ」

「サシャはルナが守る!」

「ありがとう。だけどルナの事は俺が守るよ」


 クーデルカとルナは俺と共に来てくれるらしい。クーデルカは回復魔法も使えるバランスの良い魔術師だ。強い風の魔法を使いこなすルナが来てくれるのは頼もしい。アルテミシアを守るパーティーと魔王討伐を行うパーティーで分ける必要がありそうだ。船での移動中に、魔王の手下がアルテミシアを襲わないとも限らないからな。


「サシャ、俺はこの町に残って魔王軍の襲来に備えるとしよう」

「頼むよ、ゲルストナー」

「私もゲルストナーと共に町を守ります! 私では魔王を倒せないと思うので……」


 魔王が復活したという情報はすぐに町に流れるだろう。そうすれば、今アルテミシアに居る冒険者達は町から逃げ出すに違いない。魔王軍はアルテミシアの様な大都市を真っ先に狙うだろう。町から冒険者が消えた時、町を守れるだけの力を持つメンバーに、町の防衛を任せなければならない。


 まずはパーティーを分けよう。得意属別が固まらない様にメンバーを分けた方が良いだろう。俺は仲間の属性を確認する事にした。


 風:ルナ、ワイバーン

 氷:クーデルカ

 火:キング、俺、ワイバーン

 雷:キング、俺

 土:俺、クリスタル

 聖:クーデルカ、ユニコーン


 回復魔法の使い手である、クーデルカとユニコーンは別々にしよう。それから、ワイバーンは俺と一緒に来て貰う。海上で敵と遭遇した場合、上空から攻撃を仕掛けられるからだ。俺がワイバーンに乗り、メテオを放てば、海上での戦闘で負ける事は無いだろう。ヘルファイアを覚えてからは、一人でもメテオを使えるようになったが、ワイバーンと協力した方が威力が高い。


 得意属性が被っている俺とキングは別々にしよう。それから、アイリーンはゲルストナーのパーティーに入って貰う。接近戦闘が得意なメンバーも必要だからだ。


 魔王討伐パーティー:俺、クーデルカ、エドガー、ルナ、ワイバーン。

 アルテミシア防衛パーティー:ゲルストナー、アイリーン、キング、ユニコーン、クリスタル。


「このようにパーティーを二つに分けた。アルテミシア防衛パーティーはゲルストナーの指示に従うように。ゲルストナー、パーティーを任せたよ!」

「うむ。俺が仲間を守ろう」


 パーティーを任せられるのはゲルストナーしか居ないだろう。戦闘時には仲間を守るために、敵の攻撃を一番最初に受けてくれる。頼れる前衛だ。バランス良くパーティーを分けたところで、エドガーが俺の肩に手を置いた。


「サシャ! 出発は明日の朝だ。俺はアルベルトと戦士ギルドのマスター、ヘルフリートを誘う! サシャはこれから支度をしてくれ!」

「ああ、分かったよ」


 戦士ギルドのマスターというと、昨日、俺とエドガーが喧嘩をしていた時にヤジを入れた戦士だろうか。彼が居れば心強いだろう。さて……思いもよらぬタイミングで魔王を討伐する事が決まった訳だが、不思議と緊張はしていない。仲間も焦っている様子はない。実際に魔王を見た事がないからだろう。俺達の様な若い世代は、魔王に襲撃された事も、魔王に家族を殺された事も無いからだ。


 まずは仲間の装備を整える事にしよう。俺とクーデルカは魔装があるから大丈夫だ。キングとアイリーンに関しては、俺がレイリス町で作った強力な装備がある。ルナとゲルストナーとクリスタルの装備を新調しておくか。この町で一番有名な武具屋を探すとしよう。


 それから、新しく仲間を召喚した方が良さそうだ。風の精霊・シルフの素材を使って、幻魔獣のシルフを召喚しよう。昨日、ゲルストナーから聞いた話では、シルフは戦闘を支援する魔法に特化しているらしい。攻撃力は低いようだが、支援魔法の使い手は少ない。


 召喚したシルフは、召喚士である俺と一緒に来て貰う。幻魔獣の様な知能が高い魔物を、召喚してすぐに放置する事は出来ない。人間に例えるなら育児放棄をする様なものだからな。仲間の装備を買いに行く前にシルフを召喚する事にしよう。


 マジックバッグからシルフのミイラを取り出した。ミイラはルナが幼かった頃の様な雰囲気をしている。肌は白く、綺麗な緑色の羽根が生えている。精霊か……楽しみだな。俺は会議室のテーブルの上に召喚書とシルフのミイラを置いた。


「どんな魔物が生まれるのでしょうか! 楽しみです!」

「そうだね。きっと俺達を助けてくれる仲間が生まれると思うよ」

「久しぶりにサシャの召喚魔法が見られるという訳か」


 クリスタルもゲルストナーも嬉しそうに俺を見つめている。二人共新しい魔物の誕生を心待ちにしている様だ。絶対に召喚に失敗する訳にはいかない。魔王との戦闘に参加して貰うのだからな。戦力は多ければ多い程良い。


 俺は仲間を支えてくれる心優しい精霊を思い浮かべた。魔法とは想像が肝心だ。想像の段階でしっかりと完成形を作る事が重要で、魔力によって現実世界に創造を完成させる。両手を素材に魔力を放出する。父、ダリルとデュラハンの魔力が俺の魔力に混ざり、美しい銀色の光が生まれた。魔力を素材と召喚書に注ぐと、辺りには心地良い風の魔力が流れ始めた。


 暫く魔力を注ぎ続けると、シルフのミイラからは強い光が放たれ、光の中からは新たなシルフが誕生した。見た目は幼い少女の様だが、体は随分小さい。俺の手の大きさと同じくらいだろうか。シルフは恥ずかしそうに俯くと、俺はシルフの小さな頭を撫でた。


「俺はサシャ・ボリンガーだよ」

「……」


 シルフは俺を見上げると、羽根を開いて飛び上がり、俺の胸元に入った。どうやら俺を主だと認識している様だ。シルフは服の隙間から顔を覗かせて、仲間達を見つめている。


「サシャの召喚は何度見ても感動する! 俺が本の中でしか見られない希少な魔獣を召喚してくれるのだからな!」

「それは良かったよ。シルフの召喚も成功したし、早速装備を整えに行こうか」


 生まれたばかりのシルフの服や装備も買わなければならない。果たして、シルフの様な体の小さな精霊のための装備が売っているのだろうか。まずは町を回って武具屋を探す事にしよう。


 明日からは騎士団の主要メンバーを二手に分けるのだから、ゲルストナーに騎士団の副団長を任命しようか。仲間を指揮して、魔王軍と戦う事になるだろうからな。


「ゲルストナー! こんなタイミングになってしまったけど、ゲルストナーを騎士団の副団長に任命する! これからも仲間を頼むよ」

「うむ。任せておけ。王国と仲間は俺が必ず守る」

「これからも頼りにしているよ。さて、そろそろ出発しようか」


 俺達は会議室を出て装備を買いに商業区へ出発した……。

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