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召喚物語 - 召喚魔法を極めた村人の成り上がり -   作者: 花京院 光
第二章「アルテミス王国編」
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第五十四話「魔王」

 目を覚ますと、アイリーンが気持ち良さそうに頬ずりしていた。すべすべした彼女の頬が俺の顔に当たる。確か俺はルナとクーデルカを抱いて寝ていた筈なのだが……。アイリーンの頭を撫でると、彼女は嬉しそうに俺の体を抱きしめた。アイリーンのしなやかな体を抱きしめていると、気持ちが落ち着くようだ。


 それから俺はルナとクーデルカを起こし、ルナの服を着替えさせた。ルナはまだ一人で着替える事を覚えていないのか、俺が服を着替えさせなければ、パジャマのまま外に出てしまう。なるべくルナの体を見ないように着替えさせてから、髪をブラシで梳かした。


「全く、ルナはいつまでサシャに甘えているんだか……」

「サシャはルナのだからいいの!」

「馬鹿ね、サシャは私のものよ」


 ルナとクーデルカは朝から楽しそうに言い合いをしている。今日は今後の予定について話し合いを行う。まずは本拠地の候補地について、それからお金を稼ぐための手段等。昨日集めた情報をパーティーで共有し、今後の予定を立てる。


「朝食を食べに行こうか、確か一階にレストランがあったはず」

「肉、食べられるかな?」

「ルナ、朝から肉を食べたら太るわよ。最近少し食べ過ぎなんじゃない?」

「太らないもん! ちゃんと毎日運動しているんだから」

「そう。私がルナの食生活を真似したら、すぐに太ってしまうわね」

「あたしも肉料理が良いの」

「俺は昨日飲みすぎたから、朝はあっさりしたスープが良いかな」


 部屋を出てゲルストナー達と合流し、レストランに入る。ルナとアイリーンは朝から大量の肉料理を食べ、クリスタルはそんな二人の様子を楽しそうに眺めながら、ゲルストナーと育成学について話をしている。


 朝食をゆっくり食べてから、宿の近くにある会議室に移動する事にした。会議室には盗聴防止のための魔法が掛けられている。今後の騎士団の方針に関する重要な話し合いを他人に聞かれたくなかったため、今回は特別に会議室で話し合いを行う事にした。


「サシャ。本拠地はアルテミシアの近くに作るのはどうだろうか。新しい拠点地の近くに、アルテミシアの様な大都市があれば、町には観光客が増え、人口も増えるに違いないだろう」

「アルテミシアから近ければ土地代も高い気がするんだけど、大丈夫かな」

「残念だが、俺では土地の値段を調べる事は出来なかった。王国の土地を管理しているアルテミシア区に入れなかったんだ。騎士団を名乗るなら代表者を連れてこいと言われたよ」

「そうか……それなら俺が行くしかないね」


 確かに。アルテミシアのような大都市の近くに本拠地を構える事が出来れば、人口を増やすのも容易いだろう。何より、食料やその他の日用品の買出しなども楽になる。今度時間を作ってアルテミシア区に行くとしよう。


 暫く話し合いをしていると、会議室の扉が叩かれた。扉を開けると、そこにはエドガーが立っていた。今日のエドガーは海賊の正装をしているのだろうか。頭には黒い三角の帽子を被り、革製のロングコートとロングブーツを装備している。ロングコートの中には分厚いメイルを身に着けており、腰からサーベルを提げている。


「サシャ、魔王の潜伏先を見つけたぞ……」

「魔王? それは本当かい?」

「ああ。俺の手下が魔王の城を見つけたんだ。間違いない、魔王は復活した」

「魔王が復活した? それはどういう事?」

「分からない……。デュラハンが亡くなった頃、アルテミスの勇者が魔王を倒したという話を聞いた事があるが。俺の手下が間違いなく魔王を見たと言っているんだ」


 魔王に殺されたデュラハンはエドガーの親友でもある。魔王を殺しに行くのだろうか。それにしても、魔王が復活したというのはどういう事なのだろう。まさか、魔王とは魔物で、召喚魔法によって生まれた存在なのだろうか?


 一度死んだ人間が蘇る事は無い。非常に強い魔力の持ち主が召喚魔法を使えば、召喚に成功する可能性はあるだろうが、魂が無ければ生前の記憶もない。全く新しい魔王が誕生した、と考えた方が良いだろうか。


「俺は魔王を倒しに行く! サシャも一緒に来てくれ! 俺だけでは絶対に勝てない」

「こんなタイミングで……。魔王の強さも分からないのに、無謀過ぎるよ」

「サシャはデュラハンの仇を取ると誓ったのだろう! 俺と一緒に来てくれ!」

「まぁまぁ、エドガー。少し落ち着くの」

「うむ。エドガー、まだ時間があるなら少し冷静になって計画を立てよう」


 エドガーの説明によると、魔王は潜伏しながら力を蓄えているらしい。生前の力を取り戻したら、この世界を支配するために動き出すだろう。魔王が力をつける前に叩いた方が安全かもしれない。


「いずれにせよ、魔王は近い将来、大陸を支配するために動きだすだろう。俺は魔王が行動を始める前に叩きたい。俺の力だけでは倒せないだろうが、サシャが協力してくれれば、きっと勝てるに違いない」

「魔王か……そうだね。俺はデュラハンから魔王を倒すために力を授かった。新しく生まれた魔王の正体は分からないけど、俺は冒険者だ。民を襲う悪質な者を見過ごす訳にはいかない」

「サシャならそう言ってくれると思ったぞ! ありがとう……。それから、魔王が勇者に討伐された時の推定レベルは70だったらしい。今回の戦闘で、大勢の者が命を落とすこ事になるだろう」


 エドガーの言葉を聞いた仲間達は、青ざめた顔で俺を見つめたが、俺は仲間を死なせるつもりはない。敵がレベル70というのは未知の強さだが、レベルだけなら俺の方が上だ。魔王か……。まさか俺が生きている時に魔王が誕生するとは、考えてもみなかった。しかし、俺は民を守る冒険者。一流の冒険者になると決めてリーシャ村を出たんだ。こんな所で逃げ出す訳にはいかない。


 俺達は早速魔王討伐のための準備を始める事にした。

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