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召喚物語 - 召喚魔法を極めた村人の成り上がり -   作者: 花京院 光
第二章「アルテミス王国編」
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第五十話「海賊ギルド」

 船長は力なく起き上がると、ユニコーンは船長に対して回復魔法を掛けた。サーベルを仕舞い、俺に頭を下げると、熱狂的な歓声が沸き起こった。


「あの子供、船長を吹き飛ばすなんて……信じられないな……」

「海賊ギルドのギルドマスターが手も足も出ないとは! 天才的な冒険者も居るんだな」

「もしかして、大陸で最高レベルって言われてるサシャ・ボリンガーじゃないのか?」


 誰かが俺の名前を呟くと、野次馬が一斉に俺を取り囲んだ。俺も随分知名度があるのか、弟子にして欲しいという人も居れば、騎士団に入りたいという人も居る。申し出を丁重にお断りてから、船長と共に海賊ギルドに入った。


「坊主! お前の勝ちだ! 約束通り、望む物はなんでもやろう! その前に……お前さんは何者なんだ? 魔族の力を持っているみたいだが」

「俺はボリンガー騎士団、団長。レベル90、幻魔獣の召喚士、サシャ・ボリンガーです」

「俺はエドガー・アルムガルト 。海賊ギルドのマスター。レベルは50だ。サシャよ、お前さんが召喚士というのは本当か? さっきの戦い方は戦士そのものだった。デュラハンの様な強い魔力を感じたぞ」

「実は、俺はデュラハンの力を受け継いでいるんです」

「なんだって?」


 俺はデュラハンとの出会いや、デュラハンから力を授かった事を全て話した。どうやら船長は昔、デュラハンとパーティーを組んで旅をしていたらしい。


「サシャ、葡萄酒を一杯やらんか? お前さんとの戦いですっかり疲れてしまった。あんなに強い剣を受けたのはダリル・ボリンガー以来かな……」

「それでは頂きます。エドガーさん、ダリル・ボリンガーは俺の父です。俺が幼い頃に魔物との戦闘で命を落としましたが……」

「それは本当か? あの男が死んだとは信じられないな……デュラハンにダリル、優れた者ほど早く死ぬんだな」


 俺はエドガーさんから葡萄酒が入ったゴブレットを受け取り、一口飲んだ。柔らかな口当たりで飲みやすい。ゆっくと葡萄酒を飲みながら、父やデュラハンについて語り合った。エドガーさんのパーティーは当時、大陸で最強とも言われていたらしい。アルテミス王国で初めて、単独パーティーで幻獣のレッドドラゴンを討伐した事で有名になったそうだ。通常、幻獣の様な強力な魔物を倒す時は複数のパーティーで協力し合って討伐するらしい。


「サシャ、約束だ。好きな物をやろう」

「ありがとうございます! エドガーさん!」

「俺の事はエドガーと呼んでくれ、それに、敬語も使うな。どうもお前さんとは他人の様な気がしないからな」

「分かったよ、エドガー」


 エドガーは俺達を海賊ギルド内の宝物庫に案内した。天井まで積み上がった金貨に、オリハルコンやミスリル等の希少なインゴット。無数のマジックアイテムに秘蔵のお酒等。


「サシャ、凄い! 全部貰おうよ!」

「流石に全部はいけないよ」

「遠慮はするな。お前が勝者だ。さっきの戦いが海賊同士の戦いなら、俺は間違いなく命を奪われていただろう」

「それじゃ遠慮なく頂く事にするよ。アイリーン、俺のマジックバッグにお金を詰めくれるかな?」

「わかったの」


 俺はアイリーンにマジックバッグを渡した。アイリーンなら宝物庫にあるお金を全て取る訳がないと思ったからだ。ルナやクーデルカなら、容赦なく宝物庫内のアイテムを全て回収してしまうだろう。


「俺は召喚士だから、素材を探しているんだけど。何か強力な魔物の素材はあるかな?」

「サシャ、これなんてどうだ?」


 と言ってエドガーは俺に素材を渡してくれた。「幻獣・デーモンの頭骨」「幻獣・レッドドラゴンの頭骨」「幻魔獣・風の精霊・シルフのミイラ」


 エドガーは奇跡的に幻魔獣の素材を持っていた。しかも魔物の体の一部ではなく、ミイラだ。状態も良い、きっと強い幻魔獣が生まれるだろう。これはありがたい。


 アイリーンの様子を見てみると、楽しそうに尻尾を振りながら、宝物庫内のお金を全てマジックバッグに仕舞っていた。全く……容赦ない性格なんだな。


「サシャ、そのミイラ可愛い!」

「風の精霊・シルフのミイラなんだって。ルナと同じ幻魔獣だよ」

「幻魔獣の素材……召喚するの?」

「ああ。必要になったら召喚しようかな」


 手のひらサイズのミイラは人間の様な見た目をしているが、羽根が生えている。まるでルナが生まれた時の様だ。


「その素材は俺が三年前、敵の海賊船から奪い取った物だ」

「奪い取った物なの……?」

「ああ! 俺達は海賊だからな! 海で出会った敵は徹底的に潰す!」

「海で出会わなくて良かったよ」


 奪い取ったとは穏やかではないな。しかし、幻魔獣の素材はありがたい。俺達が宝物庫で目ぼしい物がないか探していると、ルナは一振りのレイピアを見つけた。強力な魔力を放っている。


「それは俺が倒した幻獣・デーモンのレイピアだ。あいつとの戦いは苦戦したぞ……動きが早くて攻撃が全く当たらなかったからな」

「幻獣が使っていた武器なんだね」

「ああ。俺にはそのレイピアを使う事が出来なかった。強すぎるデーモンの魔力を制御出来ないからだ」


 エドガーはかなりの実力者だと思うが、デーモンのレイピアからはとてつもない魔力が放たれている。低レベルの人間がこの剣を使おうとしたら、たちまち命を落とすだろう。強力な武器というのは使う者を選ぶ。弱い者が自分の実力以上のマジックアイテムに触れようものなら、たちまち武器の魔力に殺されるだろう。マジックアイテムと使用者の魔力の波長が合っていなければ、マジックアイテムは決して使用者に力を貸す事はない。


「エドガー。このレイピア、貰っても良い?」

「ああ。勿論いいぞ。もしかすると、幻魔獣のルナなら、幻獣のデーモンの力を制御出来るかもしれないな」

「ありがとう!」


 エドガーは心配そうな顔でルナを見つめている。ルナなら問題なくデーモンのレイピアを使いこなせるだろう。幻獣のデーモンよりも高位の魔物である、幻魔獣のルナが使えない訳がない。それに、今のルナは魔力の総量も爆発的に上がっている。幻獣程度の魔物が使っていた武器なら軽々と使いこなせるだろう。


 ルナが白銀の鞘に収まっているレイピアを引き抜くと、デーモンの禍々しい魔力辺りに広がった。ルナが剣に魔力を込めると、デーモンの魔力がルナの魔力と同化した。きっとルナとデーモンは相性が良いのだろう。辺りには強い風の魔力が流れ始めた。これが幻獣の武器を持つ幻魔獣の力か……。


「魔力が俺達を包み込むようだ。凄いな……幻獣のデーモンの魔力を自分の物にしてしまうとは。流石、デュラハンが選んだ男の仲間だ」

「サシャ、この武器気に入ったよ!」


 ルナは嬉しそうにデーモンのレイピアを鞘に戻した。ギルドカードで武器の効果を確認してみよう。


 武器:デーモンのレイピア

 効果:デーモン(攻撃速度・回避速度上昇)


 サーペントのレイピアよりも更にルナの能力を高める力があるみたいだ。ルナが使っていたサーペントのレイピアはマジックバッグに入れて仕舞っておこう。それから俺達は宝物庫を後にした。俺達は暫く海賊ギルドの中で海賊達と雑談をした後、召喚士ギルドに向かうために海賊ギルドを後にした。


 海賊ギルドのメンバーは、俺が船長との喧嘩に勝ったせいか、俺をギルドマスターに推薦する者も居た。しかし、俺は海賊になるつもりはない。エドガーには今後、拠点を探す時や、高難易度のクエストに挑戦する時に手伝って貰う約束をした。


「さて、召喚士ギルドに行ってみようか」


 俺は仲間達に声を掛けて召喚士ギルドに向かった……。

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