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召喚物語 - 召喚魔法を極めた村人の成り上がり -   作者: 花京院 光
第二章「アルテミス王国編」
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第四十七話「アルテミス王国を目指して」


 俺とクリスタルはアースウォールの練習を終えて土の家の中に入った。ルナの隣に座ると、ルナは俺に料理を渡してくれた。料理を頂きながら、葡萄酒を一杯飲む。やはり仲間と過ごす夜の時間は幸せだ。訓練がどれだけ辛くても、仲間の笑顔を見れば更に努力をしようと思える。


「師匠、アースウォールの魔法って楽しいですね! 私も早く土の家を作りたいです!」

「そうだね。きっとすぐに土の家を作れるようになると思うよ」

「それなら良いんですけど、魔力の消費が激しいので、あまり長時間練習出来ませんね」

「確かにね。あまり無理をせずに頑張るんだよ」

「はい! 時間を掛けて学ぶつもりです」


 クリスタルは良い弟子だ。俺のアドバイスをよく聞き、真剣に魔法の練習の取り組む。早く魔物を召喚させてあげたいが、王国に着いて生活が落ち着くまでは、新たな仲間を増やす事は出来ない。


 ゲルストナーはゴブレットに注いだ葡萄酒を豪快に飲みながら、剣の手入れをしている。お酒と武器が似合う大人の男だ。俺も彼の様な大人になりたいと思っている。


「ゲルストナーはいつから戦士をしていたんだい?」

「俺が剣を持ったのは十二の頃だったかな。戦士だった父から剣の手ほどきを受けて、十五の時に冒険者になった。それから戦士として戦い続けた。魔法動物の店を開くまでは、クエストを受けて生計を立てていたよ」

「そうだったんだね。ゲルストナーの戦士時代か……きっと今よりも強かったんだろうね」

「若かったからな。力は若い頃の方が強かったが、魔力なら今の俺の方が上だ」


 ゲルストナーは最近、毎朝剣の稽古と筋力のトレーニングを行っている。冒険者時代の体を取り戻すと言っているが、ゲルストナーは今でも素晴らしい肉体を持っている。俺も冒険の旅に出てから毎日鍛えているが、やはりゲルストナーの肉体には敵わない。


「アイリーン。食後の運動をしよう!」

「わかったの」


 ルナは夕飯を食べ終えると、アイリーンを誘った。剣の稽古を始めるのだろうか。騎士団でまともにルナの剣を受けられるのはアイリーンしか居ないからな。一撃の剣の威力では俺の方が勝るだろうが、ルナの高速の剣は俺の技術では防げない。生まれ持った才能が違うのだろう。そもそも、ルナは人間ではなくハーピーだからな。


 ルナとアイリーンの激しすぎる打ち合いを家の中から眺める。ルナはレイピアでの突きを放つが、アイリーンはルナの剣を槍で受け流すと、すぐに突きを放って反撃する。人間を凌駕する身体能力を持っているのだろうか、アイリーンはルナの剣をいとも簡単に回避し、瞬時に槍での強烈な突きを放つ。ルナはアイリーンの攻撃が避けられないと思ったのか、翼を開いて上空に飛び上がると、アイリーンは悔しそうにルナを見つめた。


 流石のアイリーンも、空を飛ぶ相手には攻撃する手段が無いのだろう。魔物との戦闘では、極稀に槍を投げる事もあるが、訓練では威力が高すぎて使えない。ルナは上空から次々と風の刃を飛ばすと、アイリーンはルナの魔法を切り裂いた。戦いのレベルがあまりにも高すぎる……。


「師匠の仲間って、皆良い人ですよね。私は騎士団に入れて幸せです。冒険ってこんなに面白いんだって、毎日思うんです」

「そうだね。俺もクリスタルと同じ気持ちだよ。俺は十五歳の誕生日の日に冒険の旅に出たけど、まさかこんなに良い仲間に恵まれるとは……運が良かったのかな。騎士団のメンバーは俺の宝物さ。もちろんクリスタルもね」

「私も師匠に出会えて本当に良かったです! いつも皆に守って貰っていますが、いつか強くなったら、私が皆の事を守るんです」

「今の調子で訓練を続けていれば、きっと仲間を守れる召喚士になれるよ! クリスタルはいつも頑張っているからね」

「ありがとうございます……師匠!」


 俺は久しぶりにクリスタルの頭を撫でた。すると、彼女は嬉しそうに俺の体に抱き着いてきた。心地良い魔力を感じる。クーデルカがクリスタルを抱き上げ、自分の膝に座らせると、彼女はクリスタルの頭を撫でた。まるで母親と子供だな。年齢はあまり変わらないだろうが、クーデルカは魂の状態で長く生き続けている。実際の年齢は肉体の年齢よりも遥かに高い。以前、クーデルカの歳を聞いた事があるが、「体の年齢は十八歳くらい。精神の年齢は秘密」と誤魔化された事がある。


「クリスタル。あなたは良くやってるわ。」

「ありがとう、クーデルカ」

「あなたはきっと偉大な召喚士になる。サシャも追い越せるかもしれない」

「私はそのために師匠の弟子になりました。いつか必ず最高の召喚士になってみせます」

「楽しみにしているわね」

「はい!」


 暫くすると、ルナとアイリーンが稽古を終えて戻ってきた。アイリーンは葡萄酒を一口飲むと、俺の膝に頭を乗せて眠りに就いた。彼女も随分疲れているのだろう。普段は弱音を吐く事は一切ないが、アイリーンは旅の途中で仲間を盗賊に皆殺しにされている。俺がアイリーンの事を守っていかなければならないんだ。


 アイリーンをベッドに寝かせてから、俺はルナを連れて浴室に入った。ルナの翼を入念に洗い、二人で湯船に浸かると、クーデルカがタオルを巻いて浴室に入ってきた。やはりクーデルカの体つきは刺激が強い。


 彼女はそのまま湯船に浸かると、水分を吸った白いタオルが透けて、胸の形がはっきりと浮かび上がった。クーデルカは俺を抱きしめると、彼女の豊かな胸が俺の体に触れた。目のやり場がないな……ルナとクーデルカ、二人の美少女と風呂に入れるのは幸せだが、緊張して気が休まらない。


 俺は今日もクーデルカの体を洗う事になった。タオルに石鹸を付けて、クーデルカの豊満な体をくまなく洗う。恥ずかしさを堪えながら、クーデルカの体を見ないように天井を見上げている。


「サシャ、そんなに目を逸らしたら嫌よ。私はサシャのものなんだから。好きにしていいよの」

「好きにするって……そんな……」


 クーデルカは無言で俺の首に腕を回すと、自分の胸に抱き寄せた。俺の顔がクーデルカの豊かな胸に触れている。なんとも言えない幸せを感じるが、あまりにも恥ずかしい。女性経験が無い俺にとっては刺激が強すぎる。


「サシャ。私も抱きしめてあげる!」


 ルナはクーデルカの真似をして自分の胸に俺の顔を押し付けると、クーデルカは俺の体を後ろから抱きしめた。二人の体温を感じているうちに、俺はあまりにも恥ずかしくなって浴室から逃げ出してしまった。


 彼女達との風呂は魔物との戦闘よりも緊張するな。それからルナとクーデルカの髪を乾かし、ブラシを掛けてからルナを着替えさせえる。


「サシャ! 本読んで」


 と言ってルナは俺に本を渡した。今日の本は「召喚士と魔物の関係」だ。読み聞かせする本の内容は関係なく、ルナとキングはただ新しい言葉を聞く事が楽しいみたいだ。それに、彼等は一度聞いた内容は決して忘れない。元々かなり知能が高いのだろう。二人に言葉を覚えさせるにも、夜の時間にはなるべく本を読んで聞かせる事にしている。


 ルナとキングはもう眠くなってしまったのだろうか、読み聞かせを聞いている内に眠ってしまったみたいだ。キングを抱き上げてベッドに寝かせ、ルナの体に毛布を掛ける。


「ルナは先に眠ってしまったようね」

「そうだね。きっと疲れていたんだろう」

「俺達も寝るとするか……」

「そうしましょう。サシャ、腕枕して頂戴」


 俺はクーデルカに腕枕をし、彼女を抱きしめながら眠りに就いた。


 それから二週間ほど馬車を走らせた。魔物や盗賊の襲撃を受けながら旅を続けると、俺達はついにアルテミス王国に到着した。

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