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召喚物語 - 召喚魔法を極めた村人の成り上がり -   作者: 花京院 光
第二章「アルテミス王国編」
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第四十五話「新たな力」

 土の家に入り、仲間達と夜の一時を過ごす。早く新しい装備で戦ってみたいな。アイリーンはダンジョン内を偵察していたのか、この先には魔物が居ないと言っていた。ダンジョンを抜けたらワイバーンと合流し、アルテミス王国を目指して旅を再開する。


「サシャ、あなたがデュラハンの力を受け継いでくれて嬉しいわ。戦士長デュラハンは魔族の里では有名な戦士だったのよ。幼い頃に、お父様から何度もデュラハンの話を聞いたわ」

「俺も何となくデュラハンの強さが分かる気がするよ。俺の体にはデュラハンの魔力が流れている。きっと優れた戦士だったのだろうね」

「師匠はどこまで強くなるんでしょうか。私も早く師匠みたいに一人前の召喚士になりたいです!」

「クリスタルは弟子を卒業したら何をしたいんだい?」

「私は召喚獣と共に世界中を旅します! それまでは師匠や皆さんと一緒に行動して召喚魔法を鍛えます!」


 クリスタルは目を輝かせながら俺を見つめた。一人前の召喚士か。俺は最近、自分が戦士なのか召喚士なのか分からなくなる時がある。召喚魔法は戦闘時には使わない訳だから、戦士として魔法を使いながら戦う事が大半だ。


 得意な技、得意な魔法を使って生きていけばいい。俺は冒険者になったんだ。自分が持つ全ての力を使って、仲間と民を守りながら生きる。それが冒険者としての生き方だ。


「サシャ、今日は疲れたね。早めに休もう」

「そうだね、そろそろ休もうか」


 ルナは俺の肩に頭をもたれ掛かけた。ルナも疲れているだろう。俺はルナを抱き上げ、ベッドに寝かせると、ルナは直ぐに眠りに就いた。ルナの艶のある美しい髪を撫でていると、ルナは俺の手を握りながら微笑んだ。やはり俺はルナに恋をしているのだろう……いつかこの気持を伝えたいが、まだ早い。一流の冒険者になった時、仲間を守るための力を身に付けた時、自分の気持を伝えよう。


 魔装を脱いで寝間着に着替え、ルナの隣に横になる。今日も色々な事があったな……幻獣のブラックドラゴンに勝てたのは運が良かった。敵が複数体だったら、もしかしたら俺達は仲間を失っていたかもしれない。


 ワイバーンは今頃どうしているだろうか。彼にはユニコーンの馬車を運んでもらっている。大きな幌馬車ではダンジョンを通れないと思ったからだ。きっとワイバーンなら上手くやっているだろう。


「サシャ、また考え事しているの?」

「団長として考えなければならない事が多いんだよ」


 クーデルカはネグリジェ姿で俺の隣に横になった。今日は紫色のネグリジェを着ている。素材はシルクだろうか。胸の部分が大きく盛り上がり、彼女の体つきがよく分かる。クーデルカが俺を抱きしめると、彼女の豊かな胸が俺の顔に触れた。柔らかい豊かな谷間に顔を埋めると、クーデルカは顔を赤らめながら俺の頭を撫でた。


 暫くクーデルカに抱かれていると、緊張もほぐれ、気分が落ち着いてきた。幻獣との戦闘に、大広間での戦闘。やはり戦いに身を置く生活はストレスが溜まる。旅の間は、安全な宿でゆっくりと寝られる訳でもなく、常に敵襲に警戒しながら眠る。仲間を守るために、誰よりも早く起き、己を鍛え続ける。早めに村を作り、落ち着いて暮らせる環境を手に入れる必要がありそうだ。


「いつも私達を守ってくれてありがとう」

「それが俺の役目だからね」

「団長としての? 私が好きだから守ってくれるんじゃないの?」

「勿論、クーデルカの事は好きだよ。これからも俺が君を守るよ」

「ありがとう。頼りにしているわ」


 クーデルカは気持ち良さそうに目を瞑ると、俺の体を強く抱きしめた。俺は暫くクーデルカを抱きしめながら、今後の旅の予定について語り合った……。



〈翌日〉


 今日も朝早くに起きると、ルナが目を覚ました。俺はルナの髪にブラシを掛け、服を着替えさせると、ルナは俺の頬に口づけをした。ルナの服や髪の手入れは全て俺が行う事にしている。ルナはまだ幼いから、着替えたり、髪を整える事の意味を分かっていない様だ。会話はかなり上手くなってきたが、まだ精神は幼い。戦闘の時は頼りになるが、普段は俺に甘えている。そこがルナの可愛さでもある。


 仲間達が起きるまで、俺はデュラハンの大剣を使って稽古を行う事にした。普段はグラディウスとクリスの二刀流をしているが、暫くは大剣一本で戦おう。しかし、百二十センチ以上もある大剣が片手で使えるのは爽快だ。炎のエンチャントを掛け、暫く剣を振り続けていると、仲間達が目を覚ました。


「サシャ。出口は近いの。早く出発するの」

「そうだね。今日はやっと外に出られるのか」

「もうダンジョンはこりごりだな……」


 朝食を食べてから旅の支度をし、ダンジョンを出る事にした。俺は出発前にデュラハンの墓の前で手を合わせた。手を合わせる事に意味はないが、俺に力を与えてくれたデュラハンには感謝しているつもりだ。この力は人のために役立てる事にしよう。それからデュラハンの大剣を背負い、クリスを腰に差した。メイン装備だったグラディウスは鞄に仕舞っておこう。


「サシャ、装備だけ見れば完璧に魔族ね」

「そうかもしれないね。俺は魔族の装備が気に入ったよ」

「嬉しいわ。私のサシャが気に入ってくれるんだから」

「私のサシャか……何だか恥ずかしいな」

「そうよ。私を助けてくれたから私のサシャなの」

「俺はクーデルカをずっと大切にするつもりだよ。俺が召喚したんだから、俺のクーデルカだ」

「ありがとう……」


 デュラハンの大剣に魔族のクリス、デュラハンの魔装を見に付けている訳だから、装備だけ見れば魔族の戦士の様に見えるだろう。戦士としての戦い方も更に学んだ方が良さそうだな。


 暫くダンジョンの出口を目指しながら進むと、暖かい風が流れてきた。きっと出口が近いのだろう。ルナが走り出すと、アイリーンはルナを追いかける様に走り出した。


「師匠! アルテミス王国に着いたら美味しい料理を食べたいです!」

「そうだね。まずは美味しい食事を頂いて、宿で体を休めよう。外で野営するのも楽しいけど、たまには宿に泊まりたいからね」

「そうですね。ずっと外に居るのも疲れます」

「クリスタル。旅は大変じゃない?」

「勿論大変です! ですが……こうして皆さんと一緒に旅が出来る事が楽しいんです。いつか私も師匠みたいに、召喚獣と共に旅に出るんです」

「クリスタルの夢を応援しているからね」

「はい!」


 いつかクリスタルは俺の元から旅立つだろう。それまでは俺がしっかり彼女を守り、弟子として強い召喚士に育てなければならない。俺は久しぶりに、クリスタルと共にマジックシールドの魔法を練習した。移動しながらでも使用出来る魔法だから、時間を無駄にする事なく、魔力を鍛える事が出来る。


 アルテミス王国に着いたら、魔王に関する情報を集めながら、村作りのための土地を探す。村というよりは、騎士団の本拠地になるだろう。クエストを受けて、お金を稼ぎながら騎士団の知名度を上げ、本拠地を作る。何をするにもお金が必要だ。まずはお金を作らなければならない。


「サシャ! 出口なの」

「本当かい?」

「勿論なの。外の臭いがするの」

「ソト……?」


 アイリーンはキングの手を握りながら走ると、俺達はついにダンジョンを出た。アレラ山脈のダンジョンを抜けると、そこには一面に緑が生い茂っていた。こんなに美しい大自然は初めて見た。空は雲一つなく冴え渡っており、まるで天が旅を祝福してくれているかの様に、心地良い風が肌を撫でる。


 青々と生い茂る大地に寝転んだ。ルナは翼を開いて気持ち良さそうに空を飛んでいる。ユニコーンもダンジョンでの移動で疲れてしまったのだろうか。脚を伸ばして横になった。ユニコーンの頭を撫でながら、暖かい日差しを浴びていると、何ともいえない幸福感を感じだ。やはり自然は良いな……。


 大剣を置いてユニコーンの隣に寝そべった。澄み切った青空が広がっており、ルナは楽しそうに空を旋回している。邪悪な魔物の気配も無ければ、ダンジョン内の気味の悪い空気もない。


 暫く寝そべって空を見ていると、上空からワイバーンが飛んできた。ワイバーンは俺のすぐ隣に着地すると、嬉しそうに俺の顔を舐めた。ワイバーンから馬車を受け取り、ユニコーンに取り付けると、俺達はアルテミス王国を目指して馬車を走らせた……。

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