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召喚物語 - 召喚魔法を極めた村人の成り上がり -   作者: 花京院 光
第二章「アルテミス王国編」
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第四十四話「魔族の墓」

 ダンジョン内に建てた家で夕食を始めた。乾燥肉を齧り、クリスタルが作ってくれた料理を頂く。食事をしている間にも、墓からは俺を呼ぶ様な魔力が流れてくる。まるでクーデルカが魂の状態で捕らえられていた時の様だ。もしかすると、この空間で冒険者を待ち続けているのかもしれない。少し墓を調べてみよう。


「ちょっと墓を調べてくるよ」

「サシャ、私も行くわ」


 グラディウスを抜き、クーデルカと共に墓に向かう。墓が放つ魔力はクーデルカの魔力と瓜二つ。もしかすると、俺達に害の無い存在が封印されているのかもしれない。墓の前に刺さる黒い金属の剣には、「デュラハン」と書かれている。持ち主の名前だろうか。


「サシャ。デュラハンは魔族の里の戦士長よ。歴代最強の戦士長とも言われていた。魔族が暮らす里では、強い力を持つ魔族を戦士長に任命し、地域の防衛を任せていたの」

「魔族の里の戦士長か……」

「遥か昔の時代の戦士長だけど、魔族の里を守り続けた英雄よ。でもどうしてこんな所に墓があるのかしら……」


 墓を詳しく調べるために近づいた瞬間、優しい魔力が語りかけるように流れてきた。


『剣を抜け……』

「この声はどこから聞こえてるんだ?」

『剣を抜け……』

「クーデルカ! この声が聞こえるかい?」

「声? 私には聞こえないけど……」

「今確かに男の声がしたんだけど」


 砦でクーデルカを助けた時も、クーデルカは俺の心の中に話し掛けてきた。どうするべきだろう。剣を抜いても害はないと思うが。抜いてみようか。魔族の戦士長が俺に剣を抜けと言っているんだ。きっと何か意味があるのだろう。魔族の仲間を持つ者として、無視する事は出来ない。それに、この魔力の清らかさは、明らかに害のある存在ではない。


 俺は墓に刺さっている大剣を掴んだ。剣からは心地良い魔力が俺に流れ始めた。まるで力を与えてくれている様だ。父のガントレットの様な、穏やかな魔力を感じる。


『剣を抜け。お前に力を授けよう……』


 俺は剣を思い切り引き抜いた。剣は強い光を辺りに放つと、黒い鎧を纏った亡霊の様な大男が現れた。鎧はクーデルカの魔装とよく似ており、顔以外の全身を覆い隠している。実態の無い魔力の体で鎧を着ているのだろうか。デュラハンは自分の鎧を懐かしそうに見つめると、俺の手を握った。


「俺は魔族の里の戦士長、デュラハンだ」

「俺は幻魔獣の召喚士、サシャ・ボリンガーです」

「サシャか……ずっとお前の様な者を待っていた。魔王に対抗出来る強力な魔力の持ち主を……」

「魔王?」

「ああ。俺は遥か昔、魔王に殺害された。俺の家族もだ。娘のアグネス……妻のバルバラ……俺は家族を守れなかった」


 デュラハンは俺の肩に手を置くと、悲しそうに語り始めた。


「魔族の里の仲間は、俺の装備と魂をこの場所に隠した。魔王から見つからないためにだ。ブラックドラゴンをも打ち倒す強力な冒険者が現れた時、俺の全ての技術、魔力、装備を授けるために、俺はここで待ち続けた」


 話がよく分からないが、デュラハンは魔王に殺害されたのだろう。しかし、魔王なんて本当に存在するのだろうか。信じられない話だ。俺はデュラハンの言葉を仲間に伝えた。


「サシャ、俺の代わりに魔王を倒してほしい……世界を守るためにも」

「魔王ですか、俺に魔王が倒せるかは分かりませんが……」

「今すぐにとは言わない、十分に力を蓄えた時で良い。魔王もすぐには襲って来ないだろう……」

「そうですか。もし、魔王が人間を襲うようでしたら、俺が魔王を倒します」

「ありがとう……いつかきっと、俺の仇を討ってくれ。これは俺が生前使っていた魔装と大剣だ」


 デュラハンはそう言うと、黒い金属から作られた魔装と大剣を俺に差し出した。魔装はまるで羽根のように軽い。一体どんな金属で出来ているのだろう。


「俺の力と技術。全てを授けよう。俺の体に触れてみるんだ。俺の力を全て渡す」


 俺は右手でデュラハンの亡霊に触れた。デュラハンの亡霊は穏やかな光を放つと、俺の右手には爆発的な魔力が流れ込んできた。途方もない量の魔力だ……これがデュラハンの力なのか? これだけの力を持っていても、デュラハンは魔王に勝てなかった。魔王か……俺がいつか必ずデュラハンの代わりに魔王を討つ。


「サシャ……世界を頼んだぞ……」

「はい。お任せ下さい」


 体に魔力で満ちている、しかも人間の魔力ではない。魔族の魔力だ。確かに以前との違いを感じる。


「これでサシャも私と同じ魔族ね……」

「サシャ、何か変わった感じはあるか?」

「魔力の総量が増えた様な感じはするし、力がみなぎってるよ」

「うむ。サシャの体から強い魔力を感じる。また強くなったという訳か」


 デュラハンが託してくれた魔装を身につけると、不思議とサイズは丁度良く、顔以外の全てを包み込んだ。まるで生き物の様にサイズが自在に変わる。これが魔装の性能なのだろう。魔装は俺に対して魔力を供給してくれているみたいだ。使い切れない程の魔力が体に流れている。それからデュラハンの大剣を持つ。大剣は驚くほど軽く、片手でも十分に扱える。きっと魔装との相性が良いのだろう、


「魔装が俺に魔力を与えてくれている……」

「サシャと魔装の相性が良いからでしょう。魔装は装備した者の魔力と力を大幅に上昇させる効果がある。ただし、元々強い魔力を持つ者が身に付けなければ、魔装は効果がないの」

「力も増えているのかい? 道理で大剣が軽いと思った」

「私の魔装は魔力しか増えない仕組みになっているけど、古い時代の価値ある魔装は、装備した者の身体能力も大幅に上昇させるの。それは戦士長が身に付けていた最高の魔装よ。大剣だって片手で扱えるでしょう」


 どうりで大剣が軽い訳だ。ギルドカードで詳細を確認してみよう。


 武器:デュラハンの大剣

 防具:デュラハンの魔装

 魔法:グランドクロス スラッシュ ガード ハック ハウリング マジックドレイン

 効果:戦士長デュラハンの誓い(魔力上昇・攻撃速度上昇)デュラハン(攻撃速度上昇・回避速度上昇)


 魔法の「グランドクロス」は剣技だろうか。今度試してみる事にしよう。マジックドレインを使えるようになったのはありがたい。魔族特有の魔法まで使えるようになったみたいだ。デュラハンの装備を身に付けた俺の体には、感じた事も無い程の魔力と力で満ち溢れている。今ならメテオストームを何発でも撃てそうだ。


「サシャから感じる魔力が変わったの……サシャなら魔王だって倒せるの」

「サシャ、また強くなったね。ルナの事、守ってくれるんだよね」

「ああ、勿論だよ。これがデュラハンの力か……魔王が何処に潜伏しているかは分からないけど、アルテミス王国に着いたら魔王に関する情報も調べようか」


 今日も色々な事があったな。まずは家に入って休むとしよう……。

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