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召喚物語 - 召喚魔法を極めた村人の成り上がり -   作者: 花京院 光
第二章「アルテミス王国編」
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第四十二話「ダンジョン探索」

「どうだ? ブラックドラゴンの血は効くだろう?」

「うん、魔力はほとんど回復したよ。ダンジョンの攻略を始めようか」

「うむ。マナポーションを多めに作っておいたから使ってくれ」

「ありがとう、ゲルストナー」


 俺はゲルストナーからマナポーションを三つ受け取った。市販のマナポーションよりかもかなり魔力の回復量が多いようだ。大切に使うとしよう。


「さて……ダンジョン内では俺が先頭になろう。ゲルストナーは後衛として仲間を守ってくれるかな?」

「任せておけ」

「それからクーデルカとルナは俺のすぐ後ろに、ユニコーンは俺達の後方からゆっくり付いてくる事。キングとアイリーンはクーデルカとルナを守りながら中衛を頼むよ」


 仲間に陣形を伝え、俺は武器を抜いた。右手でグラディウスを持ち、左手にクリスを持つ。メンバーの中で最も防御力が高く、魔力が完全に回復している俺が前衛を務める事にした。敵の奇襲を喰らっても、俺のアースウォールなら大半の攻撃を防げるからな。


 俺は鞄から松明を取り出してクーデルカに渡した。人生初のダンジョンだ。ダンジョンはトンネル状になっており、冷たい風が吹いている。外は随分暖かかったが、ダンジョン内は冷えているんだな。薄暗い通路をゆっくりと進む。通路には冒険者の遺品が散乱していた。アルテミス王国を目指して旅をしていたのだろうか……こんな場所では死にたくないな。


 一時間ほど一本道の通路を進むと、俺達は大広間を見つけた。天井が高く、至る所に腐敗した家具が置かれている。かつてはダンジョン内の休憩所だったのだろう。大広間の中にはリビングデッドやグールがうごめいている。グールは人間や魔物を見境なしに襲う魔物。長身で黒い皮膚。人間と良く似た容姿をしているが、爪は刃物のように鋭利で、手には赤い魔力を纏わせている。リビングデッドは人間が死後、闇の魔力を吸収して蘇った魔物だ。武器を持つ者が多く、大広間には強烈な腐敗臭が漂っている。


 この空間に居るだけで気分が悪くなりそうだ。早めに抜けた方が良さそうだな。敵の数は約七十体。幸い、敵はまだ俺達の存在に気が付いていない。複数の敵に奇襲を掛ける時の効果的な戦い方は、一発目の攻撃でなるべく多くの敵を倒す事だろう。


 キングのヘルファイアは威力が高いが、閉鎖的なダンジョンではたちまち酸素を燃やし尽くしてしまう。すると、ルナのウィンドカッターか、クーデルカのアイスフューリーしかないだろう。俺は二人に同時に魔法を唱えて貰う事にした。最初の一撃でなるべく多くの敵を倒し、その後は前衛職である俺とゲルストナー、アイリーンとルナが敵を引きつける。


「ルナ、クーデルカ。二人同時に魔法を唱えるだよ。最初の攻撃が肝心だ」

「任せて頂戴。ルナ、私の魔法に合わせて撃つのよ」

「わかった……」


 クーデルカは杖を敵に向けて魔力を込めた。杖の先から冷気が流れ出すと、冷気の中には円盤状の氷の刃が現れた。更に魔力を込めて刃の枚数を増やすと、クーデルカの準備が整った。ルナはサーペントのレイピアを抜き、レイピアに強い風の纏わせて頭上高く掲げた。


『アイスフューリー!』

『ウィンドカッター!』


 氷の刃が次々とリビングデッドやグールの体を切り裂き、三日月状の風の刃が敵の足を切り裂いた。一度の攻撃で十五体以上もの魔物が息絶えた。ルナとクーデルカの攻撃が開戦の合図になった。俺は二本の剣を構え、敵の群れに特攻した。俺の前にはクレイモアを構えた巨体のリビングデッドが立ちはだかった。生前は名の通った冒険者だったのかもしれない、立派な全身防具を身に着けている。


 リビングデッドが垂直斬りを放ってきたが、俺は瞬時にアースウォールを作り上げ、敵の攻撃を受けた。土の壁はクレイモアの一撃を受けても崩れる事はない。旅の間鍛え続けてきた最強の土の壁だからな。俺は素早くリビングデッドとの距離を詰め、クリスとグラディウスの連続攻撃を放った。


 リビングデッドは俺の攻撃を受けながらも、不気味な笑みを浮かべてクレイモアの水平斬りを放った。俺は瞬時に後退して敵の攻撃を回避し、リビングデッドの足元にアースウォールを作り上げた。


 リビングデッドは足元から現れた土の壁に足を取られ、クレイモアを投げ出して転ぶと、俺はリビングデッドの頭部にグラディウスを突き立てた。まずは一体か。仲間達を確認してみると、ユニコーンは大広間の入り口から仲間に対してセイントヒールを掛け、ルナは高速の剣技で、大広間を舞うように次々と敵を仕留めている。まるで踊りでも踊りながら戦っている様だ。


 クリスタルは仲間に対してマジックシールドで盾を作り、敵の攻撃を受け止めている。ゲルストナーはロングソードで敵を叩き切り、アイリーンはルナと競う様に、目にも留まらぬ速度で敵を突いている。クーデルカは大広間の天井付近に強い冷気の塊を作り上げ、巨大な氷柱を降らせている。


 キングはメイスを使って戦っているが、大型のグール相手に苦戦している様だ。目の中の炎を不安げに揺らしながら、メイスで攻撃を仕掛けているが、グールはキングのメイスを手で受け止めると、キングの体を軽々と持ち上げた。キングは小さな炎を飛ばしてグールを燃やしたが、やはり威力を弱めているからだろうか、一撃でグールを倒す力は無い様だ。


 このままではキングの命が危ない……俺は急いでグールの足元に無数の土の槍を作り上げた。魔力が回復したばかりだが、キングを助けるにはアイアンメイデンを使うしかないだろう。無数の槍はグールの体に穴を開け、一撃でグールの命を奪った。やはり使い勝手が良い魔法だ。魔力を大幅に消費してしまったが、仕方がない事だ。


 それから俺はキングと共に敵を狩り続けた。体中に敵の傷を受け、すっかり疲れ果てた俺は、倒れるように地面に座り込んだ。やはり、元冒険者のリビングデッドは戦いづらい。戦闘に慣れているからだろうか、俺の剣を受ける者も居た。民を守る冒険者を目指して旅に出て、こんな場所で人間を襲うとは可哀相だな……。


「尋常じゃない敵の数だったな。一箇所にこれだけ多くの敵が集まるとは」

「きっと大広間に先に、更に強い敵が居るのでしょう。リビングデッドやグールが逃げ出す程の魔物が……」

「皆、少し休んでから先を進もう」


 俺はリビングデッドとグールのドロップアイテムを回収した。屈強なリビングデッドが装備していたクレイモアは高く売れそうだ。それ以外にも、お金を持つリビングデッドも多く居た。生前に稼いだお金だろう。


 俺達はすぐに大広間を抜けた。暫くダンジョンの中を進むと、広い神殿の様な場所に出た……。

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