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第三十八話「模擬戦」

 初めて模擬戦を行った日から、俺達はパーティーとして本格的な訓練を始めた。仲間同士の連携を何度も練習し、体力と魔力を鍛えながら、パーティー全体の戦闘力の底上げを図った。三週間ほどレイリス町で訓練を行うと、俺達はついにアレラ山脈攻略のために出発する事にした。


 出発は明日の早朝。今日は訓練を休んで山脈超えのための準備をする事にした。まずは食料を買い込み、ユニコーンの馬車に載せる。冒険者向けの食料を扱う店に向かう事にした。


「サシャ、やっと旅を再開出来るんだね」

「そうだね。この三週間で俺達はかなり強くなれたと思う。旅を再開するのが楽しみだよ」

「あたし達が最強の騎士団になるの。王国に行って名を上げるの」

「そうだね。まずは山脈を超えてアルテミス王国に行く。それから冒険者として、地域を守りながら生きる。強い魔物を狩り続け、戦い方を学びながら一流の冒険者を目指す」


 冒険者向けの店で多量の食料を購入し、日用品を買い足した。レイリス町に滞在しながら、魔物討伐のクエストを受けていたからか、金銭的にはかなり余裕がある。


 レイリス町からアレラ山脈までは約二週間の距離だ。山脈の内部にはダンジョンがあるとゲルストナーが教えてくれた。主に闇属性の魔物が潜んでおり、山脈付近で命を落とした冒険者が蘇り、山脈内のダンジョンで冒険者を襲っているのだとか。


 志半ばで命を落とし、魂が抜けた肉体には闇属性の魔力が宿り、アンデッドとして蘇る。強い闇の魔力が蔓延する土地で命を落とした人間は、アンデット化する事があるのだとか。アンデッド化した人間の強さは生前の強さに比例するらしく、魔力が強い冒険者ほど悪質なアンデッドになる様だ。


「敵が元人間だとしても、アンデッドと化した人間は魔物だ。サシャ、山脈内のダンジョンでどんな魔物と出くわしても、躊躇なく倒すんだぞ」

「分かったよ。だけど、死んでからダンジョンを彷徨うなんて可哀想だね」

「可哀相ではあるが、冒険者は民を守るのが務め。魔物との戦闘で命を落とせるのなら本望ではないだろうか」

「俺は絶対魔物との戦いに負けるつもりは無いよ……命が無ければ仲間を守れないからね」

「うむ。若い冒険者は無謀な戦いをして命を落とす者も多いが、サシャは随分慎重な性格なのだな」

「俺は元々ただの村人だったからね。自分が強くなっても魔物との戦闘は怖いよ。きっとこの恐怖感を忘れてはいけないと思うんだ」

「そうだな。確かに俺達は強くなったが、魔物との戦闘では何が起こるか分からない。慢心せずに山脈超えに挑まなければならないな」


 買い物を済ませてから宿に戻る。今日は夜の訓練を休んで仲間達と宴を開く事にした。激しい訓練を続ける生活は、体力的にも精神的にも負担が掛かる。たまには休む時間も必要だろう。


「皆、今日は宴でも開こうか」

「それはいい考えね。明日の朝までゆっくり休みましょうか」

「今日は久しぶりに休めるんだ! サシャと遊ぶ!」

「師匠の弟子になってから、毎日死ぬ気で魔法の練習をしてきましたが……たまに休むのも良さそうですね!」


 夕方まで暫く自由に過ごした後、俺達は久しぶりにアルテミス大陸料理の店に来た。ついに明日からは旅を再開するんだ。長い三週間だったが、仲間との連携を学ぶ事も出来た。それに、仲間同士の絆も深まっている様だ。


 毎日パーティーで五時間ほど訓練をし、俺は個人の訓練を七時間行っていた。起きている時は魔法を使用しているか、剣を振っているかのどちらかだった。夜になれば泥のように眠り、早朝に起きて訓練を行う。体力も日に日に増え、魔法も自在に扱える様になった。


「師匠! 私は肉料理が食べたいです! スノウウルフの唐揚げを頼んでも良いですか?」

「ああ。何でも好きな物を頼むんだよ。この三週間で随分稼げたから、お金の事なら気しなくても良い」

「分かりました!」


 クリスタルは仲間が食べたい物を聞いて回り、料理を注文した。彼女は働き者だし、きつい訓練にも音を上げない。やはり一流の召喚士を目指しているからだろうか、ほぼ全ての時間を俺と共に過ごし、ひたすら魔法の訓練をしている。


 テーブルに料理とお酒が並ぶと、ゲルストナーが乾杯の音頭を取り、宴が始まった。ゲルストナーとクリスタルは魔物について楽しそうに話をしている。クリスタルは育成学にも興味があるのか、魔物の育て方を熱心に教わっている。やはり幻獣か幻魔獣を召喚する事が目標なのだとか。


 無事に山脈を超えたら、次はアルテミス王国を目指して進む。それからは冒険者としてクエストを受け続け、ある程度お金が貯まったら村作りを始めよう。俺とゲルストナーの共通の目標でもある。


 魔物と人間が共存出来る村。騎士団で土地を購入し、時間を掛けて新たな村を作る事になっているのだ。まだまだ人生でやらなければならない事は多いが、この最高の仲間達となら何でも叶えられる気がする。


 それから楽しい宴が暫く続いた。明日からはついに本格的な旅になる。敵の強さも段違いだろう。一番の難所はブラックドラゴンが巣食うアレラ山脈の麓。山脈内の魔物の強さも不明だ。厳しい旅になりそうだ……。


 宿に戻り、ルナとクーデルカと共に風呂に入ってから、武器と防具の点検をし、レイリス町で最後の夜を過ごした……。

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