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第三十七話「サシャの新魔法」

 昨日は暫くブラックドラゴンとの戦い方を考えた後、早めに寝てしまった。今日はクリスタルと共に早朝の訓練を行った後、宿で朝食を摂り、パーティー全体での訓練と、新たな魔法の練習を始める事にした。


 町を出て三十分ほど進んだ場所で訓練を行う。昨晩考えた戦略は、パーティーを二つに分けて、ブラックドラゴンに攻撃を仕掛ける。別々の角度から、複数の属性魔法を連発すれば、短時間で莫大なダメージを与えられるだろう。


 まずはパーティーを二つに分ける。物理攻撃が得意なメンバーと、魔法攻撃が得意なメンバーを被らないように分け、回復魔法が使えるクーデルカとユニコーンを別のパーティーに入れる。クリスタルは安全な場所からマジックシールドを仲間に掛けて貰う事にした。


 俺、ワイバーン、クーデルカ、アイリーン。

 ゲルストナー、キング、ルナ、ユニコーン、クリスタル。


 メンバーが確定した。騎士団の中で防御力が高い俺とゲルストナーを中心としたパーティーだ。回復魔法を使えるクーデルカとユニコーンを守りながら戦うスタイルになるだろう。パーティーを二つに分けたら、早速連携を意識した訓練を行う事にした。まずは俺とワイバーンの連携技であるメテオを習得しなければならない。


「ワイバーン。今から新しい魔法の練習をするよ。俺が土の塊を落とすから、土に対して炎を吐いてくれるかな?」


 ワイバーンは静かに頷くと、俺はワイバーンの背中に飛び乗った。一気に上昇すると、俺は両手を地面に向けて土の魔力を放出した。巨大な球状の土を作り上げると、ワイバーンが口を大きく開き、爆発的な炎を放った。


 強烈な炎を纏う土の塊を、地面に叩きつける様に魔力を込めると、メテオが落下を始めた。周囲に強い炎を撒き散らしながら地面に落ちると、大地を大きく振動させ、炎を纏う土が爆発した。静かな森には巨大な破裂音が轟き、辺り一帯を炎上させた。


 これが俺とワイバーンの魔法か……強いという言葉では表現出来ない程の威力だ。レベル90の召喚士と、幻魔獣が作り上げた渾身の魔法。今の一撃ならブラックドラゴンでも倒せるだろう。少なくとも、同じ幻獣クラスのブラックライカンなら、確実に仕留められる筈だ。


 ワイバーンは嬉しそうに俺を顔を見つめると、俺達は地面に降りた。仲間達が愕然とした表情を浮かべている。俺が毎日の様に鍛え続けた土の魔法が、この様な形で攻撃魔法に進化を遂げるとは思わなかった。魔法は想像力次第でどんな形にでもなるんだな。


「サシャ、今の魔法がメテオか。幻魔獣さえも逃げ出す程の威力だな……」

「サシャ……メテオスゴイ」

「やっぱり私のサシャは最高だわ。私の主に相応しい男よ」

「皆、ありがとう。だけど、ワイバーンが協力してくれたお陰でメテオを作る事が出来たんだ。俺だけの力では無いんだよ」


 俺はワイバーンの頭を撫でると、彼は心地良さそうに目を瞑った。それから手持ちの乾燥肉を全て差し出すと、美味しそうに食べ始めた。召喚獣は人間の道具ではないからな。働きに対して報酬を与えなければならない。


「ありがとう、ワイバーン。さて、暫くパーティーで連携の練習をしてから、模擬戦でもしてみようか」

「模擬戦? それは面白そうなの!」

「うむ。まぁ死人が出なければ良いがな」

「勿論、皆が本気を出せば大怪我をししまうだろうから、力を抑えて訓練をしようか」


 俺のパーティーは、ワイバーン、クーデルカ、アイリーンだ。俺がアースウォールで仲間を守り、土の壁の後ろからクーデルカにアイスフューリーを撃って貰う。相手が近づいて来たら、ワイバーンかアイリーンが交戦する。完璧な作戦だろう。


 向こうのパーティーはゲルストナーを中心とした陣形を組むようだ。きっとゲルストナーとクリスタルが盾になって、ルナとキングが攻めてくるに違いない。回復役のユニコーンは戦闘には参加しないだろう。


「サシャ、絶対勝つわよ!」

「あたし達が勝つの。ルナには負けられないの」

「勝負ではないんだけど……そうだね、勝てるように頑張ろうか」


 クーデルカもアイリーンもやる気に満ちた表情を浮かべている。模擬戦なのに随分本気の魔力を感じるのは気のせいだろうか。仲間に陣形を説明をすると、俺は模擬戦の開始の合図を出した。


「模擬戦開始!」


 合図と共にゲルストナーが防御の構えを取った。普段の柔和な表情ではなく、戦闘時の本気の顔になっている。歴戦の戦士が見せる隙きの無い構えに、アイリーンは戸惑いながら攻撃の機会を伺っている。


 ゲルストナーの防御力を更に上昇させるために、クリスタルがマジックシールドを張った。二重の防御を展開した様だ。ゲルストナー達は攻撃よりも防御を選択したのだろう。それならこちらから攻撃を仕掛ける。


 俺はゲルストナーに悟られないように、彼の足元に土の槍を作り上げた。ゲルストナーを貫くように槍を突き上げると、ルナの剣技が炸裂した。俺は次々とゲルストナーを狙って土の槍を作り上げたが、ルナの剣さばきの前では無意味だった。


 ルナはまるで踊りでも踊る様に、魔力を込めたレイピアで高速の突きを放ち、土の槍を破壊している。このままで埒があかない。俺はクーデルカに目配せをすると、彼女はアイスロッドをゲルストナーに向けた。


 暖かい森の中に、小さな氷を含む冷気が充満すると、円盤状の氷の刃が現れた。クーデルカが杖を突き出して攻撃を放つと、氷の刃が高速で放たれた。ゲルストナーは表情一つ変えずにロングソードでクーデルカの攻撃を防ぐと、クーデルカの魔法に耐えきれず、防御が崩れた。


 瞬間、ルナがゲルストナーの背後から飛び出し、レイピアに風を纏わせて振り下ろした。あれはウィンドカッターか? 風の刃が轟音を立てて空を裂き、土の壁に激突した。巨大な破裂音と共に、突風の様な強い風が起こった。


 ルナが次々とウィンドカッターを放つと、ルナの背後でキングが杖を俺達に向けた。まさか、ヘルファイアだろうか。流石に土の壁ではキングの魔法を防ぐ事は出来ないだろう。


「ワイバーン! フレイムブレスだ!」


 キングが巨大な炎の塊を放つと、ワイバーンは瞬時に炎を吹いた。双方の炎が空中で激突すると、辺りに炎を散らしながら、お互いの魔法を押し合った。これが幻魔獣同士の戦いか。近くに居るだけでも皮膚が焼けそうだ。


 急いで彼等から離れると、アイリーンがルナに槍を向けて駆けた。物音一つ立てず、一気に距離を詰め、槍での素早い突きを放つと、ルナは狼狽した表情を浮かべながら、アイリーンの槍を防いだ。それからアイリーンが一方的に突きの猛攻を仕掛け、攻撃を防ぎ切れなくなったルナはついに翼を開いて上空に逃げた。


 ユニコーンはゲルストナーに対して回復魔法を唱えると、復活したゲルストナーがロングソードを構えて襲い掛かってきた。俺は彼の攻撃をアースウォールで防ぐと、クーデルカが次々と氷の刃を放って加勢してくれた。


 瞬間、クリスタルの魔法が炸裂した。ゲルストナーの正面に魔法の盾を作り上げ、クーデルカの攻撃の威力を弱めたのだ。突然の出来事に狼狽したクーデルカに対し、ゲルストナーが一気に距離を詰めると、俺は両手を地面に付け、爆発的な魔力を注いだ。


 瞬間、地面からは生き物の様に無数の土の槍が伸び、ゲルストナーを包囲した。流石に全ての攻撃を防ぐ事は不可能と判断したゲルストナーは、剣を地面に突き刺して降参した。


「私達の勝ちだわ!」


 仲間と手を合わせる事によって、改めて仲間の強さが分かった。俺達は休憩をしながら、模擬戦の感想を交換し合う事にした。

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