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第三十話「それぞれの拠点へ」

 今日は久しぶりにアシュトバーン村とフィッツ町の拠点に戻る日だ。仲間を起こして支度を始める。鎧を着込み、グラディウスとショートソードを腰に差す。ガントレットを手に嵌めてからグリーヴを履き、父の遺品の鞄を背負う。支度を終えて一階のロビーで仲間を待つと、仲間達が次々と降りてきた。


 アシュトバーン村とフィッツ町の拠点に戻るには二日もあれば十分だろう。用事を終えたら、久しぶりにリーシャ村に戻る。往復で四日以内に戻る事にしよう。今回の帰省にはルナとクーデルカを連れていく事にした。キングとアイリーン、ゲルストナーにはアレラ山脈に関する情報を集めて貰う。


 まずはワイバーンの召喚だ。この召喚だけは絶対に失敗出来ない。ブラックドラゴンとの戦闘にもワイバーンの力は必要だと思う。それに、空の移動手段も欲しいと思っていたところだ。町の中心で召喚の準備を始める。鞄から召喚書とワイバーンの頭骨を取り出て地面に置いた。召喚の準備をしていると、町の人達が集まってきた。


「何やってるんだ? あの小僧、召喚魔法でもする気なのか?」

「たまにああいう子供が居るのよね。冒険者ごっこかしら」

「勘違いしたガキは見てられないな。本物の召喚士に失礼だろうが」


 レイリス町の人達は俺を怪訝そうな目で見ている。周りが何を言おうが、俺自身が冒険者である事には変わりない。自分の力を証明するには行動で示せば良い。周りの声に耳を傾けずに、今やらなければならない事に集中する。


「キング、ルナ、少し手伝ってくれるかな?」

「どうしたら良いの?」

「俺の背中に魔力を注いでくれるかな?」

「ワカッタ」


 召喚の成功率を上げるために、二人の魔力を借りる事にしよう。召喚書に両手を向け、体内から掻き集めた魔力を素材と召喚書に放つ。キングとルナの爆発的な魔力が体内に流れ始めると、俺は一気に魔力を高めて魔力を放出させた。


『ワイバーン召喚!』


 全ての魔力を使い果たすつもりで魔力を注ぎ続けた。キングとルナの強烈な魔力を貰っても、まだワイバーンは生まれない。意識次第に遠のいてきたが、ここで失敗する訳にはいかない。最後の力を振り絞って魔力を込めた時、召喚書が爆発的な魔力を辺りに放った。


 町全体を包み込む程の魔力が炸裂すると、強い光が放たれた。光の中からは青紫色の体の魔物が生まれた……小さな家と同じくらいの多きさだろうか、筋骨隆々の巨大な飛竜は、翼を広げて誕生を喜び、周囲に轟く咆哮をあげた。


「ワイバーン? まさか、あんな子供が幻魔獣を召喚したのか?」

「たった三人で? 信じられない……ワイバーンは王宮の召喚士が束になっても出来る様な魔物ではない!」

「幻魔獣の召喚士……? フィッツ町を配下に入れた十五歳の冒険者、サシャ・ボリンガーか?」

「サシャ・ボリンガーだって? あの天才召喚士の? 肩まで伸びた銀髪に青い目、ハーピーとスケルトンキングを連れている……間違いない、ボリンガー騎士団の団長だ!」


 俺が召喚を成功させると、一部始終を見ていた町の人達は歓喜の声を上げた。ワイバーンは俺を見つめると、小さく頭を下げ、巨大な舌で俺の頬を舐めた。大きすぎる召喚獣に、俺の体は恐怖で震えたが、この子は俺の仲間なんだ


「ワイバーン。俺は幻魔獣の召喚士、サシャ・ボリンガーだよ。これから俺と共に最高の冒険者を目指そう」


 俺がワイバーンに語りかけると、彼はもう一度爆発的な咆哮をあげて返事をした。俺の想像よりも遥かに巨大で、見るからに強そうな仲間が生まれた。騎士団の最高の戦力になる事は間違いないだろう。体から感じる魔力も最高レベルだ。


「幻魔獣のワイバーンがレイリス町で生まれたぞ! サシャ・ボリンガーがワイバーンを召喚した!」

「今日の出来事はアルテミス大陸の歴史に残るだろう!」

「俺も騎士団に入れてくれ!」


 さっきまで俺の事を怪訝そうな目で見ていた住人は、一気にお祝いムードになった。俺の召喚を目にしたアラスターとラドフォード姉妹も、新しい仲間の誕生を祝福してくれている。さて、早速アシュトバーン村とフィッツ町の拠点に向かうとしよう。


「ルナ、クーデルカ! ワイバーンに乗ってくれ! それからアラスターさんとアリス、セシリアも!」


 仲間達がワイバーンの背中に乗ると、ワイバーンは巨大な翼を広げて飛び上がった。久しぶりに拠点に戻るとしよう……。

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