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第二十八話「キングの新装備」

 今日もクーデルカに体を揺すられて目を覚ますと、俺はクーデルカを連れて朝の訓練に向かった。毎日四時に訓練を行う生活にも慣れてきた。ユニコーンにクーデルカを乗せ、クーデルカを後ろから抱きしめる要領で手綱を握る。


 レイリス町に出て森に入ると、ユニコーンから降りて一時間ほど走り込む。森の中は足場が安定していないから、三十分もしない内に下半身に強い疲労を感じる。これが体力作りになる。魔物との戦闘では体力が重要だ。重い鎧を身に着け、武器を持った状態で自由に動けなければならないからだ。


 それから筋力のトレーニングを二時間ほど行い、全身の筋肉を極限まで鍛えると、体はピクリとも動かなくなる。森に座り込んだまま、魔力を高めるため、剣に魔力を込める。剣の威力を高めるには筋力も重要だが、魔力の方がより重要だ。魔力を込めた剣技は、力任せの攻撃よりも破壊力が高い。三時間ほど運動を続けたからだろうか、体は鉛の様に重く、体内の栄養が枯渇している。


 鞄から乾燥肉とパンを取り出して栄養を摂取した。俺は最近、食事の回数を量を増やす事にしている。ゲルストナー曰く、「高タンパク質の食事を続け、筋肉に負荷を掛け続ければ、筋肉は爆発的に成長する」のだとか。少しでも強い仲間に追いつくために、俺は徹底的に己を鍛える。


「あまり無理しすぎないようにね」

「大丈夫だよ。俺は団長だから、皆を守るために強くならなければならない」

「頼もしいわ。魔術師として、戦闘の時は私が支えてあげる」

「ありがとう、クーデルカ」


 それからアースウォールの魔法を何度か使用し、体内に残っている魔力を全て使い果たした。毎日土の魔法を使っているからだろうか、壁の厚さも大きさも、かなり自由に作れる様になってきた。土の壁以外にも、槍や剣、盾なども作る事が出来る。実際に土で作った装備を使う事は少ないが、造形の練習として毎日様々な形の物を作る事にしている。


 今日は町に戻ったらアイリーンとキングの装備を作る予定だ。アシュトバーン村とフィッツ町の拠点には明日出発する。クーデルカをユニコーンに乗せ、彼女を抱きしめながら、ゆっくりとレイリス町に戻った。


 宿に戻るとルナとアイリーンが部屋で食事をしていた。筋肉を増やすために、俺は彼女達と共に朝食を食べ、今日の予定を伝えるために仲間を集めた。


「皆、今日はアイリーンとキングの装備を作る事にしたよ。場所は昨日装備を購入した武器屋の工房を借りようと思う」

「俺は引き続きアレラ山脈超えについての情報を集めよう。アラスター、手伝ってくれるかな?」

「勿論です」

「ルナはアリスとセシリアと一緒にお留守番をしているね」

「ああ、任せたよ、ルナ」


 俺はキングとアイリーン、クーデルカを連れて武器屋に向かった。クーデルカは魔族の魔装があるから新しい装備は必要ないだろう。しかし、クーデルカにも何か装備を作ってあげたい。彼女にはいつも助けられているからな……。


 武器屋に入ると、店主が駆けつけてきた。どうやら奴隷市での出来事を聞いたのか、俺のレベルと称号を知っていた。


「幻魔獣の召喚士様! また私の店に来て貰えて光栄です」

「こんにちは。実は今日はお願いがあるのですが」

「私に出来る事なら何でもお手伝いします!」

「実は装備を作ろうと思いまして。それで工房を貸して頂けないか相談に来たのですが」

「工房をお貸しする事は構いませんが、装備の製作は召喚士様には難しいと思いますが……」


 俺はギルドカードを取り出し、クラフトの魔法とエンチャントの魔法を使える事を証明した。自分自身の技能がギルドカードに表示されているのは便利だ。


「造形の魔法、クラフトとエンチャントが使えるんですね。わかりました、それでは工房をお貸ししましょう。自由に使って下さい。私に出来る事があるなら何でも手伝います」

「ありがとうございます!」


 それから俺は店主と相談して、キングとアイリーンの装備について話し合った。キングには魔力を高めるための装備を、アイリーンには敏捷性を高める装備を作る事にした。素材には白銀のインゴットを使う。


「私がインゴットを溶かすので、召喚士様が装備を作り上げて下さい。液体状に溶けた金属にクラフトの魔法を掛けて形を作り、エンチャントでマジックアイテム化すれば良いでしょう」

「わかりました。それではお願いします」


 店主はファイアの魔法をインゴットに注いで加熱を始めた。液体状になるまでは暫く時間が掛かるようだ。どれだけ時間が掛かるかと聞くと、魔力を高めて火力を上げるまでに、二十分は掛かると言った。待つのが面倒なので、キングに手伝って貰おう。キングが右手を素材に向けて魔力を放出すると、強烈な炎が一瞬で素材を液体状に溶かした。


「今の魔法は……?」

「今のはスケルトンキングの固有魔法、ヘルファイアです」

「素晴らしい魔法ですね。私もその様な魔法が使えるなら。毎日時間を短縮出来るのですが……」


 造形の魔法はイメージが最も重要だ。完成形を頭の中で細部まで想像し、魔力を込めて形を作り上げる。想像のイメージがはっきりしている程、完成度が上がる。金属に対して魔力を注ぎ、クラフトの魔法を唱えると、一瞬で新たな装備が生まれた。装備を水に浸して冷却すると完成だ。


 ガントレットとメイル、それからグリーヴを作り上げた。魔力を高めるためのエンチャントを掛けたからか、装備からは強い魔力を感じる。それからキングが好んで使うメイスも作り上げた。キングが装備を身に付けた状態でギルドカードを確認する。


 武器:神聖なるメイス

 防具:神聖なるメイル・ガントレット・グリーヴ

 装飾品:守護のシルバーリング 魔力のシルバーリング×2

 効果:神聖(魔力・防御力増加)守護(防御力上昇)魔力(魔力増加)


 新装備は「神聖」という効果が付いたマジックアイテムだ。それ以外にも指環の効果もあり、キングのステータスが大幅に強化されているみたいだ。これでキングの装備は完璧だろう。次はアイリーンの装備を作らなければならない。俺は早速、白銀のインゴットを溶かし始めた。

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