表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/141

第二十三話「早朝の訓練」

「おはよう、サシャ」

「クーデルカ。随分早くに起きたんだね」

「ええ。今は四時頃かしら。魂の時は眠る事も出来なかったから、なかなか寝付けなくて……」

「そうだったんだね」


 クーデルカは優しく微笑みながら俺を見つめている。俺は彼女のウェーブが掛かった髪を撫でると、クーデルカは俺の体を強く抱きしめた。そろそろ朝の訓練を始めよう。毎日の積み重ねが未来の自分を作ると確信している。毎日死に物狂いで努力をすれば、強すぎる仲間にも追いつけるのではないだろうか。幻魔獣か……仲間が強い事は嬉しいが、召喚士が召喚獣よりも弱い事が俺のプライドを傷つけている。


「クーデルカ。俺は朝の訓練に出るよ」

「訓練?」

「そう。剣と魔法の腕を上げるためにね」

「私も一緒に行くわ」

「眠たくない? ここで休んでいても良いんだよ」

「今はサシャと一緒に居たいの。それに、外の世界を見たい。ずっと同じ景色を見てきたから……」

「そうだね。それじゃ外に出ようか」


 俺がベッドから出ると、ルナが眠たそうに起き上がった。起こしてしまったのだろうか。ルナは目をこすりながら起きると、朝の訓練に同行すると言った。ルナの髪をブラシで梳かし、鎧を着させて装備を整えると、ルナは俺の頬に口づけをした。まだ一人で防具を身につける事は出来ないみたいだ。


 俺はクーデルカをユニコーンの背中に乗せて、森の中を走り始めた。まずは体力を付けるために一時間ほど走る。ルナは上空から俺達に付いてきている様だ。暫く森の中を走ってから野営地に戻り、ルナと剣の稽古を始めた。早朝からの激しすぎる打ち合いに目を覚ましたのだろうか、アイリーンも槍を取って訓練に参加した。


 二時間ほど剣の稽古をした後、体力が限界を迎えたので、魔法の訓練を行う事にした。クーデルカが退屈そうにしていたので、この機会に彼女の魔法を見せて貰う事にした。


 ベルトに挟んでいるアイスロッドを引き抜き、杖を頭上高く掲げると、爆発的な冷気が集まり始めた。上空には冷気の塊が発生し、冷気の中からは無数の氷柱が生まれた。


『アイシクルレイン!』


 魔法を唱えながら杖を振り下ろすと、無数の氷柱が地面に落下し、轟音を立てながら地面に無数の穴を開けた。地面には氷柱が深く刺さりこんでおり、氷柱を抜いてみると、鋭利な槍の様な形状をしていた。これがクーデルカの魔法か。魔法の範囲も生成速度も一流だ。


「凄い魔法なの。クーデルカは本当に凄いの」

「そうだね。こんな魔法は初めて見たよ」

「ありがとう。これは私が十歳の頃に作り出した魔法。ずっとこの魔法ばかり練習してきたから、自信があるのよ」

「十歳で魔法が使えたの?」

「そうよ。幼い頃から魔法の練習をしていたからね。中でも回復魔法と氷の魔法が好きだった。もう一つの得意魔法も見せてあげる」


 俺はクーデルカの魔法の威力を確認するために、土の壁を作り上げた。なるべく厚く、丈夫な壁を作ると、クーデルカは笑みを浮かべて土の壁に杖を向けた。


『アイスフューリー!』


 クーデルカが魔法を唱えると、杖の先からは円盤状の氷の刃が飛び出した。高速で放たれた氷の円盤は、目にも留まらぬ速度で土の壁を捉えると、刃は土の壁に半分以上も食い込んでいた。どうやらアイスフューリーは氷の刃を飛ばす魔法らしい。魔法使用時の魔力を増やせば、刃の枚数を増やす事も出来るのだとか。


「あとは、マジックドレインとヒールが得意かな。ヒールは対象を癒やす魔法。マジックドレインは、対象の魔力を奪う魔法」

「え? 魔力を奪う魔法?」

「そうよ。だけどマジックドレインは自分よりも魔力が弱い相手にしか通用しないの」

「そんな特殊な魔法が存在するんだね」

「サキュバスだけが使える特殊な魔法なのよ。相手の魔力を奪い、自分の魔法攻撃として使用する。これが私の戦い方」


 それから俺は魔法の訓練をクーデルカと共に行う事にした。訓練の内容は、クーデルカの魔法を土の壁で防ぐというシンプルなものだ。ルナとアイリーンは二人で武器を使った稽古をしている。野営地には魔法が炸裂する轟音と、ルナのレイピアとアイリーンの槍が触れ合う音が響いた。ゲルストナーとキングは眠たそうに起きると、二人は朝食の支度を始めた。


 朝食は昨日の残りのブラックライカンの肉だった。朝の訓練で体中の筋肉が疲れ切っている俺には、高タンパク質の食事が必要だとゲルストナーが言ったので、俺は朝から大量の肉を食べた。


 朝食を終えると、アレラ山脈に向けて馬車を進めた。山脈の付近にはレイアリス町という町があるらしく、まずはレイリス町で装備や食料を用意する事にした。キングのための装備も新しく作らなければならない。暫く馬車を走らせると、俺達はレイリス町に辿り着いた。


「サシャ、あの町では奴隷取引が行われているんだ」

「奴隷だって? まさか……」

「奴隷の取引が行われている町の中でも、比較的取引量の多い町だ」

「奴隷なんて存在するんだね。俺が生まれた村には奴隷なんて一人も居なかったのに」

「フィッツ町にも奴隷は居なかっただろう。しかし、この町では多くの奴隷が暮らし、物の様に取引されている」


 もしかしたら俺がアイリーンを救出しなければ、彼女はこの町で奴隷として生きていたのだろうか。レイリス町に入り、今晩の宿を探す事にした……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ