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第十四話「アルテミス王国を目指して」

 宴の翌日から旅の支度とフィッツ町の警護を始めた。まずはフィッツ町の警護のために新しい仲間を召喚する必要がある。ゲルストナーから頂いた素材から新たな魔物を召喚した。


『魔獣 LV0 コボルド』×3

『魔獣 LV0 ゴブリン』×1

『魔獣 LV0 ガーゴイル』×4


 魔獣クラスの魔物だが、召喚に必要な魔力も少なく、命令を忠実に聞く者達だ。それから俺は、町長から頂いた屋敷を冒険者ギルド風に改築した。住人や町に滞在する冒険者が、誰でも直接依頼を出せるシステムを作った。この施設を『ボリンガー騎士団・フィッツ町拠点』と名付けた。


 施設の運営や、町の人達とのコミュニケーションを取るためにも、俺は新しい魔物を召喚し、フィッツ町拠点の拠点長を任せる事にした。俺が選んだ魔物は幻獣のミノタウロスだ。ミノタウロスは皮膚が赤く、まるで人間の様な体をしているが、筋骨隆々の魔物だった。スケルトン達には町に残ってもらい、ミノタウロスの補佐をして頂く事にした。


『ボリンガー騎士団・フィッツ町拠点』

 拠点長:『幻獣 LV0 ミノタウロス』

 団員:『魔獣 LV6 スケルトン』×3

 団員:『魔獣 LV0 コボルド』×3

 団員:『魔獣 LV0 ゴブリン』

 団員:『魔獣 LV0 ガーゴイル』×4


 これだけ居れば低級の魔物は町を襲おうともしないだろう。拠点長に幻獣を任命したのは犯罪に対する抑止力にもなると思ったからだ。ざわざ幻獣が守る町を襲う者は居ないだろう。それから冒険者ギルドで発行して貰った表札を入り口に取り付けた。


 建物名:『ボリンガー騎士団・フィッツ町拠点』

 管理者:『幻魔獣の召喚士 LV85 サシャ・ボリンガー』


 これで町の護衛は完璧だろう。それから俺はルナとキングを連れてシャーローンさんの屋に向かった。ガントレットから首飾りに作り変えを頼んでおいた品の受取日だ。



〈シャーローンの武器店〉


「シーローンさん、注文の品を頂きに来ました」

「待っていたぞ。首飾りが二つ。最高の出来だ」

「え? 二つですか?」

「ああ、金属が余ったから二つ作っておいたよ。ハーピーの彼女とお揃いだ。いいだろう?」

「わざわざありがとうございます! それでは頂戴しますね」


 片方は男物で、銀細工が施されている首飾りだった。首飾りの中央にはオニキスが埋め込まれている。やや無骨だが立派な装飾品だ。もう片方は女物で、こちらは複雑な銀細工と金細工が施されている。ひと目見ても高価な首飾りだという事が分かる。首飾りの中央にはエメラルドが嵌め込まれている。


 首飾りをルナの首に付けると、ルナは俺の頬に口づけをした。宝飾品を貰った事が嬉しかったのだろう。俺の体を強く抱きしめると、何度も俺の頬に接吻をした。ルナの豊かな胸が俺の体に当たる。信じられない程柔らかくて暖かい。


「サシャ……ありがとう!」

「良いんだよ。俺とルナがお揃いの首飾りか……何だか恥ずかしいね」

「どうして恥ずかしいの?」

「女の子とお揃いの物なんて初めてなんだよ」

「そうなんだ。私は嬉しいけどな。サシャとお揃い!」


 ルナは上機嫌で俺の手を握ると、キングは寂しそうに俺を見つめた。キングの頭を撫でると、キングは満足そうに微笑んだ。キングにも何か新しい装備を与えよう。実は俺キングのための装備にはアイディアがある。キングにはアースウォールの魔法を応用して装備を作るするつもりだ。土を使って壁を作れるなら、溶かした金属に魔力を注げば、装備を作る事も出来るだろう。


 俺はシャーローンさんから装飾品の作成に必要な彫金の道具や、武器や防具の作成に必要な鋳造の道具も買い取った。それから俺達は旅立ちの日まで入念に準備をした。ゲルストナーは自分の店をたたみ、店の商品の中から召喚のための素材を譲ってくれた。以前ゲルストナーから借りたお金も返しておいた。これで旅の準備は完璧だ。あとは出発日まで剣と魔法の訓練を行う。


 フィッツ町を守る仲間達と共に廃坑に入り、戦い方を教えた。アースウォールの魔法も毎日百回以上使用し、魔力の強化をしながら、魔法を使う感覚を体に覚えさせた。体力を付けるために、朝の四時から走り込み、素振りを二時間行った後、筋力のトレーニングを行う。早朝から五時間ほど徹底的に鍛え、傷ついた筋肉を回復させるために、大量の食事を摂取した。これを出発日までの日課にし、少しでもキングやルナの強さに追いつくために、俺は死に物狂いで努力を重ねた……。



 ついに旅に出る時が来た。目的地はアルテミス王国。馬車で移動すれば三ヶ月程掛かるらしい。ゲルストナーは冒険者時代に、何度かフィッツ町とアルテミス王国を往復した事があるらしいが、途中で高レベルの魔物が湧いて難儀したと言っていた。宿を出ると、宿の前には町長が立っていた。


「ボリンガー様。騎士団の拠点も出来てこの町の警護は完璧です! 色々とありがとうございます」

「お役に立てたなら光栄です。俺達はこれから旅に出る事にします。また戻ってきた時はもう一度宴をしましょう」

「そうですね。旅の出発の記念に、贈り物を用意しました、 ボリンガー様のお父上がグラディエーターをなさっていたとの事で、町で一番の鍛冶職人に最高のグラディウスを用意させました」


 俺は町長から一振りのグラディウスを頂き、腰に差した。父と同じタイプの武器か。これは嬉しい贈り物だ。俺達は町長に別れを告げると、宿の前に停めておいたユニコーンの幌馬車に乗り込んだ。


 町の馬車職人に作らせた幌馬車だ。ユニコーンと馬車を連結させる金具のすぐ後ろ側には二人がけの御者台があり、馬車の荷台には荷物や人を乗せる空間がある。広さ的には大人六人以上は乗れるだろう。俺とルナは御者台に乗り込むと、キングとゲルストナーが荷台に乗った。俺達は町の人達に見送られながらフィッツ町を出た……。

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