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第百三十七話「奴隷購入」

「ゲルストナー、引き続き奴隷の健康状態の確認を頼むよ」


 俺は二人を買い取った奴隷商が扱っている奴隷達の中から、更に奴隷を買う事にした。    勿論、健康で犯罪歴の無い者を選ぶ。奴隷の選定では悪質な魔力を体から放つ者も排除する。


「サシャ。この奴隷はどうだ?」


 次にゲルストナーが選んだのは少年の奴隷だった。まだ幼く、みすぼらしい服を着ている。年齢は十歳くらいだろうか、フランシスよりも少しだけ幼い感じがする。


「旦那様! この奴隷は両親に捨てられた奴隷なんですよ。両親に捨てられてからは、盗賊に捕まって奴隷になりました。私が盗賊から買い取ったんですけどね」


 奴隷商は気味の悪い顔で笑った。不当に奴隷にされたという訳か。アイリーンと同じだな……。俺はこの少年を買う事にした。その前に、俺は少年と一度話してみる事にした。


「少年。自由になったら何をしたい?」


 少年は自分の置かれている状況が分かっていないのか、笑みを浮かべて返事をした。


「自由になったら冒険者になって暮らすんだ! お父さんとお母さんなんて大嫌いだ」

「お父さんとお母さんには会いたくないのか?」

「当たり前じゃないか! 俺の事を捨てたんだ。俺は自由になったら冒険者になる!」


 冒険者を目指す少年と言うところか。少年が自由になってから冒険に出るまで、面倒を見てあげるのも良いかもしれないな。少年の首には六千ゴールドと書かれた値札が提げられていた。


「冒険者になりたいのか。実は俺達も冒険者なんだよ。俺は冒険者が快適に生活できる町を作ろうとしている。冒険者として俺の町で滞在してくれないか?」


 俺が少年にそう言うと、手と足に巻かれた鎖を見つめた。


「俺……奴隷だからさ。冒険者にはなれないんだよ……」

「どんな状況でも諦めちゃいけないよ。きっと冒険者になれるさ」


 よし、この少年を買おう。彼の冒険者になりたいという夢を叶えてあげよう。彼が冒険に出るための資金を俺の町で滞在している間に稼いで貰えばいい。仕事ならいくらでも作ってあげる事が出来る。俺が仕事を与えて、少年が俺の仕事をこなして金を稼げば、お互いが得をする関係を作れる。更に少年が装備を買う時にエイブラハムの店を利用したら、最終的にはお金は町で使われる。


「奴隷商! この少年を買います。いくらまで値段を下げてくれますか?」

「旦那様! ありがとうございます! それでは五千ゴールドではいかがでしょうか?」


 この奴隷商はまた値段を吹っかけているのだろうか?


「三千ゴールドで買いますよ。いいですね?」

「三千ゴールド? またまた、旦那様。いくら何でもその値段で売る事は出来ません、他にも奴隷を買って頂けるなら、その奴隷の値段を三千ゴールドにしましょう」

「よし、それで決まりです」


 俺は更にゲルストナーに奴隷を選んで貰った。ゲルストナーが選んだ奴隷の中には犬耳の獣人も居た。しばらく奴隷を選定していると、最終的には七人の奴隷が残った。


「七人で幾らになりますか?」

「六万五千ゴールドです」

「よし、それでは六万ゴールドでお願いします」

「旦那様は交渉がお得意ですね。わかりました! 六万ゴールドでお譲りします。それでは奴隷契約書にサインをお願いします」


 俺は代金を支払った後、奴隷契約書にサインをした。奴隷契約書にサインをしている間、奴隷達はこれからの自分達の人生を想像して嘆く者も居た。奴隷として買われたと思っているからだろうか? 奴隷契約書を受け取ると、奴隷達を集めて奴隷を買った理由を話す事にした。


「俺はアルテミスの勇者、サシャ・ボリンガーだ」


 今回は最初からギルドカードを見せて身分を証明した。奴隷の中には俺の事を知っている者が何人か居て、驚いたような表情を見せた。


「俺はアルテミス王国のすぐそばに領地を持っているのだけど、領地で町を作ろうとしているんだ。今回、俺が奴隷を買ったのは町作りを手伝って欲しいからなんだ」


 俺が説明をしても誰一人顔を上げない。


「俺は奴隷制度には反対している。あなた達には自由民として俺の町で暮らして貰おうと思っている。俺の町で暮らして仕事をしてくれるのなら、家と仕事、それから当分の間の食料を提供しよう」


 俺が提案すると、少年は嬉しそうに話始めた。


「俺、自由民になれるなら何だってするよ! お兄ちゃんが俺を解放してくれるなら、俺、町作りだって手伝うよ!」


 少年は目を輝かせて俺を見た。そうだ、このやる気が欲しかった。少年の言葉に続いて他の奴隷達も嬉しそうに俺の町作りを手伝う事を宣言した。それからすぐに俺は奴隷契約書を全て燃やした。


「たった今、あなた達は自由民になった。先程も言った事だけど、俺の町に来れば家と食料と仕事を提供する事が出来る。俺と新しい人生を歩みたい者はこの場に残ってくれ。勿論、条件に不満があるならすぐに立ち去ってくれ」


 俺がそう言うと、誰一人逃げ出そうともしなかった。俺の元から離れても生きていけないからだろうか。新しい町で家を貰える事以上に、条件の良い人生の再スタートは他には無いだろう。


 俺の狙いはそこにある。家を与えてしまえばその土地で生活をしようと思うだろう。家と言っても当分の間はアースウォールの家だが。それでも奴隷時代に過ごしていたゴミ溜めの様な場所よりは遥かにマシだろう。


 俺達は更にゲルストナーに奴隷を選んで貰って五人の奴隷を追加で購入し、他の奴隷達と同じように奴隷契約を破棄した。今日は奴隷を選ぶのに時間が掛かってしまったため、久しぶりにレイリス町に宿を取る事にした……。

奴隷の値段は全て異なります(第一章にて説明済み)

小説内の文章の無断転載を固く禁じます。

また、まとめサイトへの引用を厳禁いたします。

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