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第百二十九話「都市開発」

「町が完成しても仕事が無ければ市民は暮らしていけないよね。俺達の本拠地でどんな仕事を提供できるだろうか?」


 俺がそう質問すると、エイブラハムは素敵な返事をしてくれた。


「移住者は職人を優先にしたらどうだろうか? 職人が一人居れば店員を雇う事も出来る。それに、町に優秀な職人が居れば、将来は冒険者で溢れる町になるだろう。酒場や宿などを建てて市民を働かせるのも良いかもしれないな。町に来た冒険者には市民達が働く店で金を使ってもらおう」

「冒険者を呼び込んでお金を落として貰う。そのお金で市民に生活して貰うスタイルを俺達が作り上げればいい訳だ」

「冒険者を呼び込む……ゲスルトナー。冒険者時代に訪れた町でどんな施設を利用した?」


 俺はゲスルトナーから知恵を借りる事にした。


「まずは冒険者ギルドだな、新しい町に訪れて最初に利用する施設だ。冒険者ギルドでクエストを受けてから宿を決める。この流れはどの町でも同じだった。それから、その町でしか買えないような素材や武器、防具などがあれば積極的に店を覗いたな」


 実は冒険者ギルドに関しては俺は秘策がある。


「冒険者ギルドに関しては考えがあるんだけど。俺達騎士団の団員に直接クエストを要請出来るシステムにしようと思う。勿論、命に危険があるようなクエストは受けないけど……それなら俺達目当てに町を訪れる人が増えるのではないだろうか? 無論、俺達以外の冒険者もクエストを受けられるようなシステムを考えている」

「それは画期的な考えだな。勇者に直接依頼を出来る冒険者ギルドか。良い考えだ!」


 エイブラハムは俺の考えに賛同してくれた。


「それから町には宿が必要だな、あとは食料が買える店。アルテミシアからの移住希望者の中で食料品店を経営する者が居たら真っ先に受け入れよう!」

「町に住む市民の仕事先に関してだが、領地を買い取らせて、好きに農業や林業営んで貰うのも良いかもしれない。まぁ、市民が金を稼ぐ手段まで全てサシャが考える必要はないぞ」


 ゲスルトナーは領地が書かれた地図を見ながら言った。


「そうだね。だけど魔王軍の奇襲で仕事を失った人に関しては、早急に仕事を作ってあげる必要があると思う」

「確かにな。王国の復興を手伝っている最中に仕事を失った者を数多く見たからな。王国内で仕事が無いならこの町で働いてもらおう。町づくりのためには人手も大量に必要だからな」


 考えなければならない事が多いな……。アルテミシアで仕事を失った人達とレイリス町で買い取った奴隷を開放して町作りを手伝ってもらおう。人員は多ければ多い程良い。


 勿論、任せる仕事は単純な力仕事や農作業だ。シュルスクの種を大量に植えて果樹園を作るのも面白いかもしれないな。シュルスクが有ればポーション作りにもパイ作りにも、様々な可能性が広がる。


「シルフ、シャーロット。シュルスクのパイを作る方法を覚えてみないかい? 町でシュルスクのパイを売ったら面白いと思うんだ」

「本当? 絶対にやるわ!」

「うん! 楽しそう! 私は体が小さいから町作りは手伝えないと思ってたんだ!」


 シャーロットもシルフも嬉しそうに返事をした。今日、城に戻ったら料理長に頭を下げてパイの作り方を教えて貰おう。


「俺は早速、明日レイリス町に赴いて奴隷を買おうと思う。奴隷の健康状態を調べるためにも、ゲスルトナーには付いて来て欲しい」

「そうか、勿論俺も一緒に行こう。買い取った奴隷はドラゴンで運ぶという事だな?」

「あぁ、そうだよ。ドラゴンの背中に乗れる人数分の奴隷を買う」

「アニキ! 俺は明日何をしたら良いですか!?」


 すっかりフランシスの事を忘れていた。


「フランシスはエイブラハムの手伝いをして貰おう。それから、木は切った分だけ報酬を払うからね。いつでも好きな時に切って良いぞ」


 フランシスはオーガと共にエイブラハムの手伝いをして貰う事にした。


「サシャ。ドラゴンの背中に乗るなら良い物を作ってやろう。ちょっと待っておれ」


 エイブラハムは店から持ってきた巨大な箱の中からインゴットを取り出して家の外に出た。エイブラハムに付いて行くと、彼はドラゴンの背中に取り付ける座席を作り始めた。


「これなら安全にドラゴンに乗れるだろう」


 エイブラハムはブラックドラゴンとレッドドラゴンの背中に、金属製の丈夫な座席を取り付けた。十人以上は乗れそうな巨大な座席だ。やはり、エイブラハムの金属の加工方法は、俺が想像していた通りの金属の加工方法だった。エイブラハムは俺とほぼ同じ要領で金属を溶かし、一瞬で形を変形させる作り方をしていた。


 ドラゴン達は背中に取り付けられた座席を嬉しそうに眺めている。そんな様子を見ていたワイバーンは少しだけ寂しそうに地面の土を穿った。


「エイブラハム、ワイバーンにも作ってあげてくれないかな?」

「ああ、良いぞ」


 俺はワイバーンのためには自分の手持ちの素材から鞍を作って貰う事にした。


 オリハルコンのインゴットと金のインゴットを使って豪華な鞍を作って貰おう。勿論、ドラゴン達の座席のように大量に人が乗れる座席ではなく、数名だけが乗れる小さい鞍だ。俺が素材を渡すと、エイブラハムは一瞬で立派な鞍を作り上げた。


 オリハルコン製の鞍には、金の装飾で騎士団の紋章が描かれている。ワイバーンはエイブラハムが作り上げた鞍を見ると、早く背中に取り付けろと言わんばかりに鼻息を荒くした。エイブラハムが鞍を取り付けると、ワイバーンは翼を広げて喜んだ。


「ありがとう! エイブラハム!」

「なぁに、気にするな。これくらい朝飯前さ」

「良かったな! ワイバーン!」


 ワイバーンは俺の顔を見て嬉しそうに頷いた。ワイバーンにだけ鞍を作ってあげたらユニコーンが嫉妬しないだろうか……。奴はクーデルカ並みに嫉妬が激しいからな。俺はエイブラハムにもう一度素材を渡してユニコーンのための鞍を作って貰った。


「作って欲しい物が有ればいつでも言うんだぞ! サシャはエドガーの命の恩人だからな!」

「ああ。そうするよ。いつもありがとう!」


 俺達はそれからすぐに会議を終えて城に戻った。

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