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第百二十八話「オーガとエイブラハムの家づくり」

 俺達が本拠地に着くと、ゲルストナーとエイブラハムは興奮した面持ちで辺りの探索を始めた。しばらく領地を調べてから戻ってくると、早速土の家の中で町の開発のための会議をする事になった。


 俺は町作りに関しては以前読んだ「町の作り方・町の人口の増やし方」の本の内容しか知識がないため、エイブラハムとゲルストナーと俺が三人で知恵を出し合って町を作る事にした。俺は土の家の中に、円状のテーブルを作って仲間を席に着かせた。


「それじゃ、これから本拠地作りのための計画を始める。こちらは今回の本拠地作りと、本拠地で出店をしてもらう伝説の鍛冶職人、エイブラハム・アルムガルドだよ」


 俺は仲間にエイブラハムを紹介した。ほとんどの仲間は面識はあるが、フランシスやオーガはエイブラハムの事をほとんど知らないからだ。


「サシャ、昨日色々考えたんだが、まずは本拠地を象徴する建物、まぁ簡単に言えば領主であるお前さんが住む建物を建てようと思う。素材はお前さん達が今日切った木を使わせて貰うよ。他に必要な素材はアルテミシアから買い付けるとしよう」


 一番最初に提案をしたのはエイブラハムだった。


「任せるよ、エイブラハム」

「ありがとう。領地の象徴にもなるお前さんの新しい家だが、何か必要な施設や部屋は無いか? なんでも言ってくれよ」

「それなら……」


 俺は新しく建てる家に、工房、厨房、書斎、寝室、浴室、客室。その他将来必要になりそうな設備や部屋をエイブラハムに考えてもらって建てる事にした。俺の家のすぐ隣には、ゲルストナーの家とクリスタルの家を建てる事にした。


「それから、簡易的で構わないんだが、領地を取り囲むよう塀を作って欲しい。お前さんの弟子のクリスタルが城壁を直す時に使っていた魔法、あれはお前さんも使えるんだろう?」

「アースウォールの事かな? それならお安い御用だよ。すぐに作っておこう」


 領地を取り囲む形でアースウォールを建てる事にした。


「領地の警備についてだけどブラックドラゴンとレッドドラゴンに任せようと思う」


 俺がそう提案すると、エイブラハムは大きく頷いた。


「強力な幻獣が二体も居れば誰も領地に攻め入ろうとはしないだろう。それに魔王を討伐したお前さんが管理する土地を侵略しようとするような輩は居ないだろうな」


 領地の警備はレッドドラゴンとブラックドラゴンに決まった。


「実は俺、シュルスクの実を植えてみたんだけど、もう既に芽が出始めているんだ。シュルスクの木を中心に円状に家や店を建てたら、町の雰囲気も明るくなるんじゃないかな?」

「あ! それは良い考えね!」


 シャーロットは隣の席で俺の手を握って嬉しそうにしている。


「シュルスクか。以前、魔物の飼育のためにシュルスクからポーションを作った事がある。魔力を回復させるポーションなんだが、弱った魔物には抜群に効くんだよ。町にシュルスクがあれば色々と使い道はありそうだな」


 育成士であるゲスルトナーはシュルスクの事を知っていた。新しい町はシュルスクの木を取り囲むような形で円形に建物を配置する事にした。


「それから、俺の考えというよりは方針なんだけど、アルテミシアで家や仕事を失った人には無償で家を提供したい。その他の移住希望者には賃貸という形ではなく、家の代金は一括で支払って貰おうと思う」

「サシャはどこまでも優しいんだな。流石、エドガーが信用して魔王討伐を頼んだ男だ」

「俺は以前から、魔物と人間が共存できる町を作りたかったんだけど、以前、レイリス町と言う町で奴隷市場に行った事があって、そこでは人間が物のように取引されていたんだ。俺はどうも奴隷制度を肯定する気にはなれない。今回の魔王討伐の報酬として、陛下から使いきれない程の報酬を貰った。その報酬で奴隷を買って町に住まわせても良いだろうか」

「うむ。金の使い道はサシャが自由に決めると良い。奴隷を買い取って町に住ませるのか……」

「勿論、買い取るのは不当に奴隷にされた者だけで、過去に犯罪歴がある奴隷や、奴隷になるべくしてなった人間は買い取るつもりはないよ。そして、奴隷を買った後はすぐに奴隷契約を破棄し、市民として暮らして貰う。どうだろうか」

「ほう……お前さんがそこまで考えているとはな。だがサシャよ。買い取る奴隷は慎重に選ばなければならないぞ……」


 俺にそうアドバイスをしたのはエイブラハムだった。確かに、全ての奴隷がなんらかの原因があって奴隷にされた訳だから、どの奴隷を買い取るかは慎重に吟味しなければならない。


「人口面では大臣が移住の受付を開始してくれたから、本拠地が完成次第、家を買い取ってもらって移住を始めてもらう」

「順調に計画が進んでいるという訳だな。あとは移住者や奴隷が住む家が有ればいいのか。早速明日から家作りを始めるとしよう。サシャ。悪いんだがそこの力の強そうなオーガを俺の助手として貸してくれないだろうか?」


 エイブラハムはオーガを自分の助手に任命した。


「オーガ、エイブラハムの助手を頼めるかな?」

「勿論です。マスター」


 オーガは丁寧にエイブラハムにお辞儀をした。

 計画は順調に進んでいる、あとは町の商業面での話し合いをすれば今日の所は終わりだな……。

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