第十一話「ルナ」
ルナと共に宿に戻り、暫く経った時、キングとスケルトン達も戻ってきた。どうやら初めての狩りを無事に終えた様だ。スケルトン達は大量の戦利品を抱えている。キングはルナの頭を撫でるとルナは嬉しそうに目を瞑った。キング達が集めた戦利品はかなりの数だった。メイスだけでも軽く四十本以上ある。戦利品の中から何か役に立ちそうな物はないか探してみる事にした。
「錆びついた指環」×7 「錆びついた腕輪」×2 「砥石」×2
「魔獣の魂」×2 「干からびたゴブリンの手」×1
目ぼしいアイテムは以上の五種類だろう。あはスケルトンの頭等の見慣れたアイテムだ。錆びついた腕輪と指環を磨いて仲間に装備して貰おうか。マジックアイテムは多ければ多い程良いからな。キング達にお礼を言ってから、露店街で購入した食料を分けた。
キングはルナのために乾燥肉を小さく切ると、ルナは嬉しそう乾燥肉を食べ始めた。スケルトン達は堅焼きパンに齧り付いている。俺はキングとルナに言葉を教えるために、鞄から本を取り出した。
・『図解で学ぶ・アルテミス大陸語(0才~5才用)』
本には魔物や冒険者の絵が書かれており、簡単な言葉を学べる様になっている。幼児向けの本だが、絵を見ながら単語を何度も発音すれば直ぐに言葉を習得出来るだろう。キングもルナもかなり知能が高いみたいだからな。
簡単な単語を繰り返し発音して聞かせると、ルナもキングも直ぐに言葉を覚えた。アルファベットを覚えれば自分達で単語を覚える事が出来るだろう。二人は楽しそうに本を読みながら、片言も大陸語で話し合っている。
俺はそんなキング達の隣で指環と腕輪を磨き始めた。二時間ほど掛けて全ての指環と腕輪を磨いた。装飾品を身に付けた状態で、ギルドカードに表示されたアイテムの名称を確認する。
「魔力のシルバーリング」×2 「疾風のシルバーリング」
「頑丈なアイアンリング」×3 「守護のアイアンリング」
「きらびやかな腕輪」×2
以前手に入れた銀の腕輪はルナが大きくなったら装備させる事にしよう。疾風のシルバーリングは風属性の威力を増幅するような指環だろう、これもルナが成長したら装備させよう。今の体では人間用の指環は装備出来ないからな。
魔力のシルバーリングはキングに装備させる事にした。どうやら魔力を増幅させる効果があるらしい。キングの魔力は強ければ強いほど良いからな。守護のアイアンリングは俺が装備し、頑丈なアイアンリングはスケルトン達に渡した。装飾品を仲間に分配してから再度ギルドカードを確認する。
『幻魔獣 LV8 キング』
種族:幻魔獣・スケルトンキング
召喚者:幻魔獣の召喚士 サシャ・ボリンガー
装備:メイス 水耐性のアイアンメイル シルバーグリーヴ シルバーガントレット
装飾品:守護のシルバーリング 魔力のシルバーリング×2
魔法:ヘルファイア サンダーボルト スラッシュ
『魔獣 LV4 スケルトン』
種族:魔獣・スケルトン
召喚者:幻魔獣の召喚士 サシャ・ボリンガー
装備:青銅鉱の剣 青銅鉱の盾
装飾品:頑丈なアイアンリング
魔法:スラッシュ
『廃坑内のモンスターの討伐』討伐数48匹
討伐数もかなり多く、スラッシュという魔法を習得したらしい。キングの説明によると、魔力を込めた状態で放つ水平斬りなのだとか。ギルドカードには新しく加入した団員の情報が更新されている。
『ボリンガー騎士団』
団長:『幻魔獣の召喚士 LV85 サシャ・ボリンガー』
団員:『幻魔獣 LV8 キング』
団員:『幻魔獣 LV0 ルナ』
団員:『幻獣 LV0 ユニコーン』
団員:『魔獣 LV4 スケルトン』×3
団員:『育成士 LV39 ゲルストナー・ブラック』
新しくユニコーンとゲルストナーの名前が追加されている。そろそろ夕飯の時間だ。俺はルナとキングを連れて食堂に降りた。スケルトン達は堅焼きパンを食べすぎたのだろう、先にベッドに潜って眠ってしまった。今日のメニューはスノウウルフの唐揚げだ。ずっとこの料理を待っていた……。
「サシャ……美味しい!」
「そうだね。これは俺が好きな料理なんだよ。この甘ダレが濃厚で美味しいよね」
「オイシイ……」
ルナもキングも順調に言葉を覚えている様だ。ルナは俺の膝の上に座りながら食事をしている。料理を渡すと、小さな手で掴んで美味しそうに食べる。今は小さくて可愛らしいが、直ぐに成長を遂げて大きな魔物へと変化してしまうのだろう。
夕食を堪能すると、部屋に戻って湯船に浸かり、ルナの小さな体を石鹸で洗った。彼女は気持ち良さそうに目を瞑ると、すぐに眠りに就いてしまった。キングは部屋で武器の手入れをしている。メイスが気に入っているのか、布に磨き粉を付けて丁寧に磨いている。俺はそんなキングを眺めながら、アルテミス王国に関する本を読んでいると、いつの間にか眠りに就いていた。
〈翌朝〉
誰かが俺を揺すっている。誰だろう……こんなに朝早くから。目を開けてみると、目の前には見知らぬ女性が立っていた。
「起きてよ……サシャ」
「え? 誰……?」
「ルナだよ……」
一糸まとわぬ姿の女性の体に釘付けになった。豊かに盛り上がる胸に白く美しい肌。身長は百六十センチ程だろうか。背中からは白い翼が生えている。まさか、本当にルナなのか? 翼が生えているのだから、人間では無い事は確かだ。人生で見た事も無いほどの美少女として成長を遂げたのだな。
ルナは俺を抱きしめると、彼女の豊かな胸が俺の顔に触れた。恥ずかしすぎる……体は大人だが、ルナはまだ生まれたばかりの子供だ。羞恥心がないのだろう。ルナは俺の顔に豊かな胸を押し付け、強く抱きしめると、俺の唇に唇を重ねた。
「ルナだよ……サシャ……大好き……」
「ルナ……」
俺は暫くルナを抱きしめながら彼女と口づけをしていた。人生で初めて女性を抱きしめ、口づけをした。俺はこの子に恋をしているのだろうか。ルナは愛情を表現するために口づけをしているのだろう。彼女には俺に対する恋愛感情はないと思う。まだ恋愛という言葉も知らないだろうからな。
それから俺はルナに服を渡すと、ルナは不思議そうに服を見つめた。まだ服を着る事の意味すら分からないのだろう。俺はルナの体を見ないように服を着させると、ルナは嬉しそうに微笑んだ。本当に美しく成長したんだな……。
「ルナ……?」
「キング。おはよう」
キングは成長したルナを見て腰を抜かした。愕然とした表情を浮かべ、スケルトン達を起こすと、スケルトン達は成長したルナを抱きしめた。姿は違うが、仲間だと認識しているのだろう。
それから俺達は朝食を食べるために一階に降りた。朝食を簡単に済ませると、キング達には引き続き廃坑内の魔物の討伐をお願いした。俺はルナとユニコーンを連れて町の周りの散歩でもしよう。ルナの見た目は十五歳程だろうか、既に成人の女性の様に見えるが、精神はまだ幼いからな。これから一般常識を教えたり、言葉を教えなければならない。更に忙しい毎日に忙しくなりそうだ……。