第百七話「守護者の召喚」
『守護者の召喚と生成』
俺が本を開くと、シャーロットは気を利かせて羊皮紙と羽根ペンを持って来てくれた。この羽根ペンはマジックアイテムで、インクが無くても無制限に字を書く事が出来る。
「ありがとうシャーロット」
俺はシャーロットにお礼を言うとシャーロットも隣の席に座って本を覗き込んだ。シャーロットがソファに座ると、一緒に遊んでいたシルフは俺の肩の上に飛び乗った。
「サシャ、この本は何?」
「これはガーディアンの召喚に関する本だよ。海賊船でシャルロッテさんが何度か見せてくれたガーディアンは覚えているかな? 俺もガーディアンを召喚出来るようになりたいと思ってさ」
「うん、シャルロッテのガーディアンは強かったよね。海から襲ってくる魔物も一撃で倒しちゃうんだもん」
シャルロッテさんが作り出したガーディアンは大きな人の形をしていた。魔力を放出させて具現化する類の魔法なのだろうか。兎に角、本を読んでみよう。
『ガーディアンの召喚』
1.「ガーディアンは『無から』召喚する召喚魔法である。通常の召喚は魔物の素材を必要とするが、ガーディアンの召喚は素材を必要としない」
素材を必要とせず、自分の魔力だけで作り出すという事だろうか。勿論、魔力が具現化された物だから生命体ではない。
2.「生まれてくるガーディアンの形体は、召喚士が想像した形を忠実に再現して生まれる。頭の中で想像するガーディアンのイメージが具体的であればある程、召喚されるガーディアンは強力に生まれる」
自分の想像通りの形で召喚出来るという訳だろうか。どんなガーディアンを召喚するか、じっくり考えてみる必要があるな。
3.「ガーディアンと通常の召喚獣の大きく異なる点は、召喚後のガーディアンは任意のタイミングで『帰還』させる事が出来る」
帰還と言うのは、作り出したガーディアンを体の中に再び戻すという事だろう。魔力で作り出したガーディアンを帰還させると、使った分の魔力が元に戻るのだろうか? どうやら帰還先は自分の体以外にも、強い魔力を封じ込められる宝石や強力なマジックアイテムを指定する事も出来るらしい。
4.「ガーディアンの強さと知力は、召喚時の魔力と『イメージ』の強さによって決まる。高位の召喚士が作り上げたガーディアンは高度な知能を持って生まれる可能性が高い(推定レベル40以上)知能の高さは召喚士の魔力の強さに比例する」
5.「ガーディアンは召喚士が使える技術や魔法を引き継いで生まれる。どこまで高度なスキルや魔法を使いこなせるかは、召喚時のイメージと魔力の強さによって決まる。例えば召喚士がファイアボールをガーディアンに使わせたいなら、頭の中にファイアボールを自由自在に操るガーディアンの姿をはっきりと意識した状態で召喚すれば、生まれてくるガーディアンはファイアボールを使える状態で生まれる」
6.「著者が勧めるガーディアンの形体。犬、猫、兎。体の大きさが小さい程、召喚時に必要な魔力が少なくなる。反対に体の大きさが大きければ、召喚時に大量の魔力を必要とする」
犬や猫をガーディアンとして召喚する意味があるのか?冒険に役に立ちそうなガーディアンの方が良いに決まっている。犬や猫は使い方によっては冒険の役に立つかもしれない。例えば獲物を探す時や、物音を立てずに敵の位置を探る時など。だが、俺には既にアイリーンという「自称飼い猫」が居るから、小動物は必要ないだろう。
ガーディアンの形体か。どんな形が良いだろうか。やはり無難に人型が良いだろうか。人型のガーディアンを召喚して剣の稽古に付き合ってもらうのも良いかもしれない。よし、最初のガーディアンは人型のガーディアンにしよう。俺の剣の稽古に付き合ってもらったり、エミリアの授業の補佐として動いてもらおう。
俺は人型のガーディアンについて考える事にした。人型と言っても、ドワーフの様な巨体の人型や、シルフの様に小さくて羽が生えた人型も存在するからな……。見た目は俺と同じ人間の種族で良いだろうか。俺は作り出すガーディアンについての考えをまとめた。
『ガーディアンについて』
1.見た目は人間。身長は俺と同じ百七十五センチ。
2.名前は「光の剣士」とする。
3.剣の稽古や仲間の護衛、エミリアの魔法授業の補佐をしてもらう
4.覚えさせる魔法はソニックブロー、シールドバッシュ、マジックソード、マジックシールド。
魔法はヘルフリートから受け継いだソニックブローとシールドバッシュを選んだ。それから、ヘルフリートから受け継いだショックウェーブも覚えさせる事は出来るが、この技は聖戦士だけが国王から使用を許されている技だ。一応陛下から使用の許可を貰ってから使わなければならないらしい。
ガーディアンの戦い方に関しては魔法攻撃は使わずに剣だけで戦う純粋な剣士にしよう。これで完璧だ。しかし、一つだけ問題がある。俺は光の剣士が使うためのマジックソードの作り方を知らない。俺自身が使えなければ、ガーディアンに魔法を教える事は出来ない。まずは覚えさせたい魔法を俺自身が覚えなければならないな……。
「サシャ、剣士のガーディアンを作る事にしたんだね! 楽しみだな」
シルフは俺が書き上げた羊皮紙を見て嬉しそうにしている。まずはマジックソードの練習か。マジックソードはマジックシールドと同じタイプの魔法で、自分の魔力で剣を作り出す。今までこの魔法を練習しなかったのは、既に立派な剣を持っていたからだ。魔法の剣を作る練習をするには、 流石に談話室では狭すぎるだろう。俺達は城の中で剣の稽古が出来る場所が無いか探す事にした。