また明日
「あ、僕でるからいいよ」
「ありがとうございます」
嶺巴が扉を開けると怒ったような声が飛び込んできた
「開けるのおせぇよ!さっむ」
「ごめんごめん
炬燵でも出そうか、そろそろ時期だしね」
「あしたな
で、代替わりは?」
靫巴が訊ねると嶺巴は桜花に視線をやた
「…普通そうなやつだな」
それを聞いた嶺巴は少し苦笑いした
「逆に普通じゃないってどういうことさ」
「少なくとも紗弥加は普通じゃなかったな」
「昔の話はやめよう
僕たちみたいのはなおさらね
ほら、桜花ちゃん待ってるから早く行こう」
内陣に入ると何故か桜花は正座していた
「あ、えと、あのっ
はじめまして!よろしくお願いいたします!」
そう言うと勢いよく礼をした
「………嶺巴、さっきの言葉撤回しとけ」
「はいはい」
「今回のやつもなかなか退屈しなそうだな」
若干呆れた顔をしたが靫巴の表情は心なしか嬉しそうに見えた
「桜花ちゃんお風呂入りたいよね
今やり方教えるからおいで」
風呂に移動すると桜花は驚きの声を上げた
「なんかすごく新しい…」
「そうなんだよね、ちょっと前に壊れて変えたばかりなんだ」
汚れひとつない綺麗なお風呂に感動しつつ使い方を教えてもらい着替えの場所も教えてもらった
どうやらここには袴しか無いらしく沢山の袴がタンスの中にぎゅうぎゅうだった
不思議なことに一番下の段には自分の下着が入っておりそのことについて尋ねてもはぐらかされ教えてはくれなかった
「ふぅ〜
環境が変わってもお風呂は気持ちいいや」
広々とした浴槽に足を伸ばす
数時間前まで混乱して慌てていたが考えてみればご飯もあるし私を否定する人も恐らくいない
もしかしたら先代の神様が本当に私を助けてくれたのかもしれないと思い始めていた
体があったまり夜ということもありウトウトしているとドアを開ける音がした
まさかと思いそちらを見るとやはり開いていた
「いつまで入ってんだ!呑気にしてないで早くしろ!」
靫巴の存在に慌てて体を丸めて隠れる
「ふぁ!ぁぁ、すみません!あの!閉めてください!」
「あ、おぉ、すまん」
怒っていた割に大人しく謝って出て行った
急いで上がり新しい袴を着て戻ると嶺巴が申し訳なさそうに寄ってきた
「ごめんね桜花ちゃん!
靫巴ったら恥じらいというものを知らないから…」
「おい、恥じらいくらいは分かる
ただあんまり意識できないだけ」
「大丈夫ですよ、あの、気にしてないですから」
桜花がそう言うと2人は驚いたように見た
「ほら、桜花ちゃんだから許してくれたんだからね」
「わかったから
そうだ、明日お務めについて話があるから
それだけ頭に置いとけ」
「はい、分かりました」
「そろそろ時間も遅いし電気消しても大丈夫?」
嶺巴はスイッチの方に立ち上がった
「はい、私は大丈夫です」
「俺も、おやすみ」
「はーいおやすみ」
1日が終わった
沢山のことが起きた1日が終わった
気づかないうちに疲れていたのか私の意識はすぐに消えた