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双望の継承者 〔 ゼンの冒険 第一部 〕  作者: 三叉霧流
第三章 復興の火と故郷の歌
70/218

お花畑に連れていって

アン視点です

物語の世界観を壊さないように修正しました

アーコラスの王子様


『ある国に王様と王女様、継母がいました。

継母は王女様の可愛さを憎み、王様に王女様が病気だと言って、王女様は意地悪な継母から森の小さな家に閉じ込められました。

王女様は独りぼっちで過ごして、何年も経ち美しい女の子になりました。でもその家を訪ねるのは意地悪な継母だけです。


そんなあるときに森で木の実を採っていると狩りに来た男の子を見つけます。王女様はその男の子を見ていて、彼も王女様に気がつきました。

二人は、微笑み合ったりしてすぐにお互いが恋に落ちます。その男の子は王女様の隣にある国の王子様でした。森深くに住んでいる王女様は簡単に会うことができません。

そこに森から魔女がやってきて二人の話を聞き、王子様に魔法の本を渡します。その本はその王子様を白くて美しいアーコラスに変えてしまう本でした。

王子様は城に帰り、時間を見つけてアーコラスになって王女様の家に飛んでいき、二人は毎日二人は幸せな時を過ごしました。


しかし、王女様がいない間に継母がやってきて、一羽のアーコラスが家の外を飛んでいるのを見つけます。継母は意地悪をするために窓辺に針を入れたクッションを置き、出て行きました。王女様が戻り、そんなことの知らない王子様は急いで、王女様の家の窓辺に立ちます。するとクッションの針がアーコラスの胸を刺しました。苦しくなって、アーコラスは城に戻って、元の姿に戻ります。

城に戻り、ベッドの上で苦しむ王子様を治そうと王様は国中のお医者様に命令しますが、王子様の怪我を治せる者は誰もいませんでした。


王女様は来る日も来る日も王子様を待ちます。心配で苦しくて、ある日、王女様は深い森を抜けて王子様の国に行こうとします。

何日も何日も深い森を走りながら王女様は狼の遠吠えや夜の深い闇を越えて、怪我をしながら走り続けます。

王女様が疲れて休んでいると、森から魔女達が集まって話し合っているのが聞こえてきました。

木陰に隠れながら魔女達の話を聞き、王女様は王子様の怪我を治す方法を知ります。


王女様は魔女達がいなくなるのを待って、また何日もかかって隣の国に行き、古道具屋さんで古ぼけたお医者さんの道具とローブを買います。

お医者さんになりすました王女様は隣の国の王様のもとに行き、王子様を治せると王様に言いました。

王様は怪しいなと思いながらも王女様に王子様を治すように言います。

王女様は魔女から聞いた王子様を治す方法をして、王子様を治しました。


王様は喜び、王女様に宝を渡そうと言います。

ですが、王女様は言います。

「宝物もお金も私にはいりません。私はただこの人と一緒にいたいだけなのです」

その話し声に気がついた王子様は王女様を見て言います。

「私の命を救ってくれた人と結婚したいです」

王様は言います。

「お前の結婚相手は王の娘でなければならない」

王子様は優しく王女様のローブを外しました。

その美しい王女様を見て、王様は二人の結婚を許します。


王女様と王子様の結婚式は王子様の国で行われました。

そこにたくさんの王様が招かれて、やってくる中、王女様の王様がきて、王女様を見て言います。

「私の娘ではないか!」

王女様の王様は王女様から話を聞いて、継母に怒り、彼女を国から追放しました。


そうして二人は二つの国をまとめていつまでも幸せに暮らしました』


私はゼン様に絵本の話を聞いて貰った。

ゼン様は嬉しそうに私の話を聞いて、「間違えはないよ」と言ってくれる。


私はその言葉に嬉しくなるけど、もう教えて貰えないんじゃないかと不安になる。

だけどゼン様は「いい話だね」と言って、自分が持っている他の本を貸してくれると言ってくれた。


でも、私はこのアーコラスの王子様のお話が嫌い。


王女様は王女様。

私のように村の女の子ではない。だから、王子様とちゃんと結婚できる。


ゼン様はこのアーコラスの王子様みたいに思う。

独りぼっちの私に気遣ってくれて、アーコラスのようにヒョイと私の心に入ってきてくれる。

それを私はとても嬉しく思って、いつもゼン様のことを考える。

だけど私は王女様のような偉い人じゃないし、美しくもない。家から出て、深くて怖い森を歩くことはできない。


ゼン様は前にオークザラムに結婚のお話をしに行った。

アイリ様もエンリエッタ様もそれを教えてくれた。

エンリエッタ様は側室という女の人のことを教えてくれた。偉い男の人はたくさんの女の人と結婚できる。


私は村の女の子。ゼン様と結婚するならそんな女の人の一人になる。

そう考えるとなんだか私は頭の中がぐちゃぐちゃになってしまう。

だって、好きだったらゼン様が他の女の人と一緒にいるところなんて見たくない。


ゼン様は言ってくれた。

『人にはそれぞれの物語があって、大事なものがある。きっとアンにも大事なものが見つかる。その大事なもののために、自分の道を決めればいい。他の人のことは気にするな』

でも、もし私にとってゼン様が大事な人になるなら、他の人のことを気にしないことなんてできない。

私だけを見てほしい。

私のためだけに微笑んでほしい。


私の道ってなんだろう?

ゼン様のお嫁さんになることなの?

私はどうしたらいいの?

わからない。


わかるのはゼン様と一緒にいて楽しいことだけ。

だけどもう私は楽しいってことだけで満足できない。


なんて嫌な子なんだろう、私って。

こんなにも優しいゼン様が気遣ってくれているのに、私は我慢できない。

こんな嫌な子は神様だって、見ていてくれない。


だったら・・・お嫁さんになんてならなくていい。

私はお父さんの言うことだけを聞いて、ゼン様のお世話をしていたい。

だってそうした方が私は楽しく感じる。

お嫁さんになることを考えずにいるだけで心が軽くなる。


でも・・・そう考えて悲しくなるのはなんでだろう?

楽しいはずなのに泣きたくなる。

心が苦しくて、苦しくてゼン様の前でそんな顔をすると心配させてしまう。

それが嫌で、本で顔を隠して、涙を我慢する。


神様、教えてください。

私はどうしたらいいのでしょう?

ゼン様の前でちゃんと笑えるようになるのにはどうすればいいんですか?


神様に祈っているとゼン様と一緒にいったロースィップ畑の香りがする。

私が一番好きな、ゼン様と会うときだけにするロースイップの香水。


またあのお花畑にゼン様と行けば、あの時のように笑えるのかな?

だけどゼン様は忙しい。

そんなわがままを言ってしまえば私はもっと自分が嫌いになる。


だから、どうかお願いします、神様。

私を・・・助けてください。

もう一度、ゼン様と一緒にあのお花畑に連れて行ってください。


お願いします、神様。


『カナリア王子』

カルヴィーノ著「イタリア民話集(上)」岩波文庫 P.43 参考

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