タメの人としかタメ口で話すことが出来ないマン
「ヒーローさん、助けてください!この街を救ってください!お願いします!」
「僕には敵をやっつける自信もありませんし、力もありません。僕なんかにこの街が救えるわけありませんよ」
「ヒーローさんしかいないんです!お願いします!」
彼はカラダの大きい巨人であるにも関わらず、腰が低く態度が小さい。
カラダは細く、力があるようには見えず、怪獣に勝てる要素はひとつも見当たらない。
「お前か?噂のヒーローっていうのは!かなり強いらしいな!」
「いいえ、それほどでもございません。たぶんですけど、あなたの方が何倍も強いと思いますよ」
「おい、もっと挑発的な態度をとれよ。俺様は悪の怪獣なんだからな」
「相手様が一番で、自分は一番下と考えておりますので」
彼は敵でも同じ年齢ではない限り敬語で話す。
そして、僕なんかヒーローに向いていないんです、というような弱気発言を連発する。
「まずはその敬語をやめろ!」
「申し訳ありません。同じ歳でないと共通点みたいなものがなかったり、つい意識してしまったりして上手く打ち解けられないんです。なのでタメ口は同じ歳の方の前でしか、どうしても使うことが出来ないんです」
彼はカラダが弱々しい。
彼は力も強くない。
彼は技術も何もない。
しかし、彼には途轍もない武器がある。
みんなは彼をこう呼ぶ。
『タメの人としかタメ口で話すことが出来ないマン』と。
「タメの人としかタメ口で話すことが出来ないマン!頑張れよ!信じてるからな!」
「ありがとう。溜口防衛隊員に言われると頑張れるよ」
「俺たち同級生でずっと一緒に戦ってきた仲間だもんな」
「そうだな。なんとか頑張ってみるよ。あの、敵さん?勝てるか分かりませんがよろしくお願い致します」
「えっ、あっ、うん」
タメ口で話すことを望む敵は彼の敬語にかなりの動揺をみせた。
“ドンッ”
「オフッ」
敵はヒーローの攻撃により、あっという間に地面へと倒れ込んでいった。




