可憐な人
会社の受付の子が途轍もなく可愛い。
無邪気な感じで笑顔がとても素敵な子。
この会社に入社して初めて見たときから好きだった。
一目惚れというやつだろう。
まだ出逢って一ヶ月も経っていない。
だから目が合ったことも、喋ったこともない。
でも、話し掛けないと恋愛は始まらない。
勇気を出して話しかけるしか無さそうだ。
「お疲れ様。受付の方ですよね?」
「はい。毎日、受付で受け付けさせてもらってますが」
「僕は色々やりたいことが多すぎて職を転々として最近この会社にたどり着いた宇津木といいます」
「私は今井です。宇津木さんはいい意味で救いようがないですね」
受付にいるときの彼女は普通に喋っている気がしたが、今は微妙に変な言葉遣いをしていてイメージは豹変した。
「宇津木さんって、おカッコいい顔をしてますし、優しそうで凄くお素晴らしい人ですね。まあ、一ミリも好きじゃないですけど」
「今井さんは本当にお美しいです」
「いえいえ、私は美人といったら嘘にならないくらいですから」
「これから時間あります?もし大丈夫だったらこれから僕とお食事どうですか?」
「宇津木さん、ひたすら面白いですね。それで、どこに連れていってくれるんですか?」
「イタリアンのお店はどうですか?僕、ピザとかパスタが大好きなんですよ」
「白い粉が好きなんですね。白い粉が好きそうな顔してますもんね」
「今井さんってすごく面白い方ですね」
「ありがとうございます。私がいるだけで場がやわらがるってよく言われます」
変な言葉遣いは時間が経つにつれて勢いを増していって、彼女の変な言葉と僕の彼女に対する興味は留まることを知らなかった。
「奢ってくれるのなら行きます。お金を相当持っていて高級マンションの五階と七階の間に住んでそうにみえますもん」
「奢りますよ。じゃあ行きましょうか?」
「はい」
喋り始めて最初の頃はギャップに少し引いてしまっていたが、今はそのギャップが心に馴染んでいるように感じた。
「この会社、大手なのによく入れましたね宇津木さん。この会社に入社した時点で、安定人間に片足突っ込んだようなものですからね」
「じゃあ今井さんも安定人間に片足突っ込んでいるんですか?」
「いいえ、私は安定人間に両足突っ込んでますから」
僕と彼女はイタリアンのお店へ歩いて向かって行った。
「今井さんはイタめしでは何が好きなんですか?」
「イタめしって炒めたご飯料理ですよね。やっぱりチャーハンですかね。あのご飯の粒と粒がくっつきあってべちゃべちゃになった食感がたまらないですよね」
「そうですか」
イタリア料理店で僕と彼女はそれぞれ好みの品を注文し食した。
「料理は美味しいし、今井さんは可愛いし、一石二鳥ですよ」
「今、全盛期2兆って言いました?宇津木さんの年収ですか?」
「いえ、全盛期2兆とは言ってません。今言ったのは一石二鳥です。僕は年収が2兆を越えたことはありません」
「それ、本気で言ってますか?気を使わなくて大丈夫ですから」
彼女のような人は初めてで、今までにないような感情が膨れ上がっていた。
「私、お金がないのでアクセサリーを安く売り飛ばしているんですけど一ミリもお金が増えないんです」
「二束三文にもならないんですね」
「嘘臭いもんって言いましたか?真の真実ですよ」
「二束三文ですけど、まあいいです。食べましょう」
「宇津木さんはいい意味で呪われそうなお方ですね」
今井さんへの興味は天まで達し、いい意味で可憐で、いい意味で変な今井さんのことは、いい意味で大好きだ。




