ワープ
誰かに追われている。
でもあの能力を使えばこの危機は簡単に回避出来る。
僕にはいつでもどこでもワープをすることの出来る能力が備わっているのだ。
大きい声でハッキリとした発音で『ワープ!』と叫べばすぐに簡単にワープすることが出来る。
しかしいつも失敗してしまう。
声が小さかったり発音がハッキリしてなかったりするとワープをすることが出来ないのだ。
声の大きさは完璧でも言葉を噛んでしまったりしたらワープは出来ない。
大きい声で言ったのにワープが出来ないと凄く恥ずかしい。
そして最近新たな条件が加わってしまった。
声の大きさと発音の明確さの中に新たに加わったのがポーズ。
指定されたポーズをしないとワープが出来なくなってしまった。
右手を腰に当て、左手で天を指す。
ワープ出来なかったときのカッコ悪さが一段と増した。
このカッコ悪さの集合体のようなワープ動作を全力ですることにはかなりの躊躇いがある。
『ワープ!』というそのままの言葉ではなく、もっとカッコいい言葉なら全力で言えて簡単にワープ出来るのだが。
今の敵50人ほどに追われている状況であのワープ動作はどうしても出来ない。
僕は大勢の敵に一人で向かっていった。
そして僕の魂は天国へとワープした。




