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最強で最弱のヒーロー

「パパ!助けて!」


「娘を返せ!」


「ハッハッハ。こんな可愛い子は他にいないんだわ。」


「行くな!」


「娘は可愛がってあげるんだわ。誰を呼んでも無駄なんだわ。」


社長令嬢はモンスターにさらわれてしまったのだった。






「はい。こちらヒーロー事務所です。」


「あの、モンスターにさらわれた娘を助けてほしいんですけど。」


「あっ、わっかりました。お受け致します。」


「ありがとうございます。」


「で、モンスターの住所とか名前とかフォルムとか何でもいいので分かることあります?」


「語尾に『だわ』が付いていたと思います。」


「あっ、わっかりました。そのようなモンスターは一匹しかいませんので、すぐ向かいますね。」


「あの、料金の方は?」


「タラバガニ1杯となっております。」


「そうですか。よろしくお願いします。」


ヒーローは急いで娘が待つモンスターの潜伏先へオープンカーを走らせた。






「女の子を離せ。」


「お前か。あの世界最強のヒーローとか呼ばれてるヤツか。でも関係ないんだわ。」


「覚悟しろ。今から一瞬でお前を倒してやる。」


「まあまあまあ。少し落ち着くんだわ。戦う前にこれでも食べて体力をつけるんだわ。」


「こっ、これは。蟹釜飯か。カニの駅弁は大好きだが、こんなものがあったのか。」


「ヒモを引っ張ると温かくなるタイプのヤツなんだわ。」


「いや、駄目だ。食べてしまうと戦うことが出来なくなる。」


普段は最強だが、大好きなカニを食べてしまうと最弱になってしまうヒーローなのだ。






「さっき、ヒモを引っ張っておいたんだわ。だから今が食べ頃なんだわ。」


「ヒーローさん。絶対に食べちゃダメです。私を早く助けてください。」


「罠とは分かっていても、目の前にある大好きなカニを無視することは出来ない。」


「早く食べるんだわ。」


「我慢できない。いただきます。」


「ヒーローさん。それでもヒーローですか?」


「この釜飯、すごく美味しい。」


「じゃあ、早速やっつけてあげるんだわ。おりゃー!」


「ヒーローさん。頑張ってください。」


「はい、頑張ります。とぉっ!」


「うぉっ、、、、、強すぎるんだわ。」






“パシャッ、パシャッ、パシャッ”


「本当に申し訳ありませんでした。」


“パシャッ、パシャッ、パシャッ”


「弊社が製造・販売しておりました蟹釜飯に関しまして、表示のあるタラバガニを本当に使用しているのかというご指摘を頂きました。確かに、弊社ではタラバガニを使用しておりませんでした。深くお詫び申し上げます。」


“パシャッ、パシャッ、パシャッ”


「そのカニがタラバガニでは無いのなら、何だったんですか?」


「カニカマです。カニ風味のかまぼこです。カニを忠実に再現したかまぼこでして、さほど見た目も味も変わりません。」


“パシャッ、パシャッ、パシャッ”


「カニのエキスは入っているんですよね?」


「カニのエキスは一切入っておりません。カニに関するものは一滴も含まれておりません。」


“パシャッ、パシャッ、パシャッ”


「蟹の釜飯という意味のカニカマメシではなく、カニカマの入った飯という意味のカニカマメシだったということですか?もしかして、ダジャレで消費者を馬鹿にして楽しんでたってことですか?」


「一切、そのような意図はありませんでした。」


“パシャッ、パシャッ、パシャッ”






「パパ!ただいま!」


「おかえりなさい。」


「私、運が良かったのかもね。」


「食品偽装はいいものではないが、弟の会社のお陰だな。もちろん、あのヒーローのお陰でもあるがな。」


「うん。」


ヒーローに勝てるものはカニ以外存在しないのである。

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