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飼い犬に手を噛まれる

歯形が腕や手に残る。


礼儀正しいさが滲み出た心優しき愛犬だが、狂暴さが見え隠れする。


噛まれた理由が分からない。


専門家でさえも直せない噛み付き癖。


解決策として友達がある機械をくれた。


「これワンちゃんの鳴き声を人間の言語に翻訳できる機械だから」


「オモチャみたいなものなんでしょ?」


「違うよ。かなり正確だから使ってみてよ」


「うん」


小型の四角い箱のスイッチを入れる。


“ワンワン!ワン!ワン!”


愛犬が鳴くと、画面に文字が表示される。


【あなたと一緒にいられて僕は幸せだよ】


「何これ。全然ナメられてないじゃん」


「うん。下に見てないし、むしろ私のこと好きだよね」


「じゃあ、マオッチはなんで噛まれてんの?」


「嫉妬される覚えもないし、分かんないよ」


“ワーン、ワンワン”


「マオッチ?今度は何て出てる?」


【あなたに出逢えたことは運命かもね。デートに連れてって欲しいな】


「お散歩のことをデートって呼んでるし、マオッチのこと相当好きだわ」


私への愛が強すぎる。


メスを愛するように私を愛している。


「私もレオンのこと好きだけど。何か怖くなってきた」


「飼い主を好きなのは普通でしょ。たぶん、かまってほしいから噛んでたんだよ」


「そうかな」


そういえば、噛む力は強いが噛んでいるときの顔は穏やかさに満ちていた。


そして、なぜか友達の前では決して噛まなかった。


“ワンワンワンワンワンワーン”


「今度は何て?」


【あなたと同じ時代に生まれてこられるなんて奇跡だ。顔を舐め回してもいいかい?】


愛犬の言葉が甘くてエロくて、嬉しいような嫌なような複雑な感情に包まれた。


「マオッチ良かったね、こんなに愛されてて」


「うん」


「その翻訳機あげるよ。またね」


「うん。またね」




友達の帰宅後にデートという名の散歩を済ませ小一時間が経過した時、愛犬は私の左手を強く噛み付けた。


痛みは、じんじんと、そして、じくじくと伝わってくる。


制止を無視し噛み続けた後、愛犬は鳴き声を漏らす。


“ワーン、ワーン、ワーンワンワン”


【好き過ぎる、好き過ぎる、好き過ぎる。ごめん、性癖曝け出し過ぎた】


私は愛犬の性癖に狂気と愛らしさを覚えた。

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