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たまごの殻

初めて逢ったのは桜の花びらが舞うキャンパスだった。



君の天使のような笑顔に目が釘付けになった。



僕は幼なじみの春馬と共に君に一目惚れをした。



厳しい暑さになった頃、君と僕は友達になっていた。



君と僕と春馬の三人で遊ぶことが多くなった。



君と過ごす時間はとても楽しく感じられ、夢のようなひと時だった。



でも気付いてしまった。



僕が邪魔者であることを。



そう感じたのは、一緒に遊ぶようになってすぐのことだった。



一緒にいる時、君の目はいつも春馬を追っていた。



そして、僕には絶対見せない顔を春馬に見せていた。



その光景を目の当たりにして、僕はとても切ない気持ちになった。



夏が終わる頃、二人から話があった。



やっぱり二人は少し前から付き合っていたのだ。



話があった日の帰り道、重なった二つの影から少し離れたところに僕の影があった。



僕はここにいていいのかと考えながら歩いていた。







今、僕は結婚式場にいる。



僕の結婚式?



いや、そんなわけがない。春馬と翔子の結婚式である。



二人は出会ってから四年で結婚したのだ。



僕は友人代表のスピーチを頼まれている。



ちゃんと練習したから大丈夫だ。



いよいよ出番がやってきた。そして僕は口を開いた。



「ただいまご紹介にあずかりました松田です。春馬君、翔子さん並びにご両家の皆様、本日は誠におめでとうございます。



春馬君とは幼なじみで、ずっと喧嘩ばっかりしていたのを思い出します。



でも、喧嘩するほど仲がいいという言葉もあるように僕にとっては特別な親友です。



翔子さんとは大学一年生の時に出会って、こんなにも可愛い人がいるのかとビックリしたのを覚えてます。



話は変わりますが、僕たち三人を例えるならたまごです。



翔子さんが黄身で、春馬君は白身、そして僕が殻です。



翔子さんの隣には春馬君がいる。そして僕は二人を周りで見守る。まさにたまごなのです。



これからは二人を包む殻になって、ひび割れながらも守っていきたいと思います。



つたないスピーチですが、お祝いの言葉とさせて頂きます」



スピーチは終わった。



僕の好きだった翔子は幼なじみの春馬の妻となった。



『白身があいだにあるので黄身と殻は触れることが出来ない。まさに僕たちである』

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