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きみの翼になる

忠男さんと付き合ってから一年が経った。


隠し事はしないと約束したが私は忠男さんにどうしても言えないことがある。


「涼子ちゃん髪の毛切った?」


「昨日美容院に行ってきたの」


「今までで一番短いよね」


「ショートの方が色々と楽だからね」


「似合っているよ」


「ありがとう」


失恋はしてないが私は肩まであった髪をバッサリ切ったのだ。


話をしながら少し歩いて夜景の見えるレストランに着いた。


「こんなところ初めてだわ」


「素敵なところだろ?」


「うん」


このレストランは前に他の人と来たことがあるが初めてのふりをした。


料理を注文して待っている間に私は忠男さんに話を切り出した。


「忠男さんに言いたいことがあるの」


「何?」


「カフェをオープンしたいからお金を出して欲しいの」


「いいよ」


「本当に?」


「社長の僕にまかせてよ」


その後美味しい料理を頂いて満腹になり最後のデザートを食べ始めた。


するとずっと黙っていた忠男さんがゆっくりと喋り始めた。


「僕も涼子ちゃんに言いたいことがあるんだ」


「何?」


「僕たちは付き合って一年が経った」


「うん」


「そして涼子ちゃんとずっと一緒にいたいと思っている」


「うん」


「どんな時も涼子ちゃんの翼になるから結婚してほしい」


忠男さんからプロポーズをされて私は驚いた。


もちろん忠男さんのことが大好きなので答えは決まっている。


「よろしくお願いします」


「こちらこそよろしくね」






今日は彼女とデートで夜景の見えるレストランに来ている。


彼女とこのレストランに来るのは5回目だ。


「髪の毛切ったでしょ」


「はい。美玲さんは短髪が好きと言っていたので」


「似合っていてカッコいいよ」


「ありがとうございます」


髪型を褒めてくれたのでとても嬉しかった。


そして今日は大好きな彼女に言わなくてはいけないことがある。


「美玲さんに聞いてほしいことがあるんです」


「何?」


「実は私、結婚するんです」


「忠男さんと結婚するのね」


「はい」


「涼子、おめでとう」


「ありがとうございます」


祝福されて嬉しかったが複雑な気持ちになった。


忠男さんのことは好きだが美玲さんのことの方が好きなのだ。


「涼子の幸せは私の幸せだからね」


「嬉しいです」






私の夢だった男装カフェがとうとう今日オープンする。


男装カフェをやりたい理由を忠男さんには流行っているからと言ったが違う。


本当は可愛い女性と触れ合いたいのと男装をする理由が欲しかったからだ。


今日から私は君野涼子から『きみの翼』になる。


私の秘密は忠男さんに今のところは言えそうにない。

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